環境省は10月29日、令和7年度「持続可能で循環型であるファッションに関する検討会」の第1回会合を開催した。この検討会は、我が国における循環型ファッションの推進と衣類の廃棄量削減に向けた方向性を幅広く議論し、「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(仮称)」の取りまとめを目指すものだ。

会合では、まず検討会の開催要綱が確認され、衣類の資源循環システム構築に向けた現状に関する議論が行われた。特に、家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比で25%削減するという目標達成に向けた課題が共有された。

業界関係者からのヒアリングでは、ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)、ナカノ株式会社、ファイバーシーディーエム株式会社がそれぞれの取り組みと課題を提示した。

JSFAは、個社では解決が難しい課題に対し共同で解決策を導き出すための企業連携プラットフォームとして、2050年カーボンニュートラルとファッションロスゼロを目標に掲げ活動している。同アライアンスは、繊維to繊維リサイクルにおけるバージン材と再生材の価格差、反毛の品質表示ルールの課題、回収衣類の確保の不安定性、リサイクル処理施設のキャパシティ拡大と持続化といった課題を指摘し、政策提言を行っている。

ナカノ株式会社とファイバーシーディーエム株式会社は、衣類回収・選別の現場からの視点で、国内選別事業の収益悪化や海外輸出依存の現状、そして選別が循環型ファッション実現に果たす役割について説明した。ファイバーシーディーエム株式会社は、oHOHoプロジェクトへの参画を通じて、回収衣類の選別とCO2排出削減効果を実証しており、回収量4,932kgのうち1,732kgを選別し、83.5%をリユース、13.4%をリサイクル、3.1%をサーマルリサイクルに振り分け、26,560kgCO2eの排出削減に貢献したと報告している。

環境省の調査によると、国内に供給される衣類の製造過程で排出されるCO2は年間95百万トンに達し、これは世界のファッション産業からの排出量の4.5%に相当する。また、衣類1着の生産に必要な水は2,368リットルと推計されており、ファッション産業が環境に与える負荷は大きい。衣類のマテリアルフローでは、2024年時点で国内新規供給量82万トンのうち、約7割にあたる56万トンが焼却等で処理されていると推計されている。

国際的な動向としては、G7気候・エネルギー・環境大臣会合で「共通かつ自主的な循環型繊維・ファッションに関するアジェンダ」の策定が求められ、2024年12月5日にローマで開催されたG7ARE会合で策定された。EUでは、エコデザイン規則が2024年7月に施行され、環境配慮設計や消費者への情報提供、未販売製品の廃棄禁止が定められている。また、繊維製品の拡大生産者責任に関する統一ルールも制定が進んでおり、2025年2月には欧州理事会と欧州議会が暫定合意に達した。フランスでは、ウルトラ・ファストファッションによる悪影響の抑制を目的とした法案が審議中であり、宣伝禁止や配送行為への課税などが盛り込まれている。

これらの現状と課題を踏まえ、検討会では循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(仮称)の取りまとめに向けた方針が議論された。アクションプランは、使用済み衣類回収システムの構築、生活者間のリユース拡大、稼働率向上・寿命延長に向けた取り組みの拡大、回収された使用済み衣類の受け皿整備、衣類の製造・販売における循環型設計の推進という5つの方向性で構成される見込みだ。

【プレスリリース】令和7年度「持続可能で循環型であるファッションに関する検討会」(第1回)の開催について
【参考資料】令和7年度「持続可能で循環型であるファッションに関する検討会」(第1回)配布資料 資料3 衣類の資源循環システム構築に向けた現状[PDF]
【参考資料】令和7年度「持続可能で循環型であるファッションに関する検討会」(第1回)配布資料 資料5 循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(仮称)について[PDF]
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