デロイト トーマツ グループは8月22日、日本の上場企業3,553社を対象としたサステナビリティ情報開示の分析結果を発表した。企業の有価証券報告書を基にテキスト解析を用いた調査が行われ、サステナビリティに関する考え方や取組の記述が前年比で増加したことが明らかになった。特に人的資本や気候変動に関する記述が増えており、多様性指標やGHG排出量削減の開示も進展していることがわかった。

日本では有価証券報告書等に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、2023年3月期決算企業に適用された。「従業員の状況」の記載では、男女間賃金差異や女性管理職比率、男性育児休業取得率などの多様性指標の開示が開始している。

本調査では、「気候変動」や「人的資本」、「生物多様性」、「循環型社会」など領域ごとにキーワードをリストアップ。キーワード検索や生成AIによる機械的な情報抽出を行い、集計分析した。

調査によると、企業の約4割がScope1・2のGHG排出量削減目標を開示しているが、Scope3の削減目標についてはわずか1割程度に留まっている。また、削減実績の開示はScope1・2で約2割、Scope3で5%未満と低く、実績の開示が不足していることがうかがえる。実績の開示がない場合、削減目標の達成に向けた成果や進捗が把握できず、削減計画の実現可能性や必要な取り組みが不明確になると同社は指摘する。

さらに、多様性指標に関して開示された実績値については、男女間賃金差異が70~75%、女性管理職比率が0~5%、男性育児休業取得率が0%または100%付近に、それぞれピークが存在する分布がみられた。企業による取り組みの差が顕著であると示された。

分析上の限界として、テキスト解析における誤解析やデータの欠落、生成AIの誤判定などの可能性があるとしながらも、同社は調査結果を受け、より多くの企業がサステナビリティを推進し、GHG排出量の実績やScope3などの情報開示がさらに充実することが望ましいとしている。

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