欧州宇宙機関(ESA)は、月や火星への長期有人ミッションを見据え、宇宙で資源を循環させながら生活する技術の開発を進めている。人が出す廃棄物を再利用し、酸素や水、食料を生み出す「循環型ライフサポートシステム」の実現を目指す取り組みで、今回その一環として5つのプロジェクトに資金提供を行った。
こうした技術は、同機関が長年進めてきたMELiSSAという研究を基盤としている。廃棄物を資源として再利用する仕組みだが、現状ではバイオマスの約70%しか有効活用できておらず、分解が難しい成分の処理や、閉鎖環境での空気の質の維持などが課題となっている。
今回採択された5つのプロジェクトは、それぞれ異なるアプローチでこの課題の解決を目指している。
廃棄物からバイオプラスチックを生成
ベルギーのVITOは、微生物を活用し、廃棄物由来の成分や二酸化炭素から生分解性プラスチック(PHAなど)を作る技術を開発している。こうした素材は、将来的に宇宙で発生する廃棄物を原料として、生活用品や部品の材料として活用される可能性がある。
バイオマスを効率よく分解・再利用
同じくVITOは、植物由来のバイオマスを糖とリグニンに効率よく分離する技術の開発も進めている。糖は微生物の栄養源として再利用される一方、リグニンは耐火性や紫外線吸収といった特性を生かした材料としての活用が期待されており、これまで利用が難しかった資源の有効活用につながる可能性がある。
スピルリナから食べられる包装材
ルクセンブルクのBlue Horizonは、藻類スピルリナを原料とした薄いフィルムの開発を進めている。このフィルムは食品包装材としての利用に加え、食用素材としての応用も検討されており、将来的には宇宙飛行士の食事の多様化につながる可能性がある。さらに、スピルリナ由来の3Dプリント材料の廃棄物を再利用する取り組みも進められている。
藻類による空気浄化技術
米国のRedwire Spaceは、藻類ベースのシステムを用い、二酸化炭素や揮発性有機化合物を除去するだけでなく、空気中のウイルスも取り除けるかを検証している。従来の機械的な空気清浄システムに代わる手法として、低コストで副産物が少ない可能性がある点が注目されている。
スピルリナで農作物の成長を促進
仏ナント大学は、スピルリナ由来のバイオマスを活用し、トマトやレタスなどの作物に対する成長促進や病害抑制の効果を検証する研究を進めている。こうした取り組みは、宇宙における資源の循環利用を高めるとともに、将来的には食料生産の安定化につながる可能性がある。
これらのプロジェクトは、いずれも廃棄物をできる限り無駄なく使い切ることを目指したもので、宇宙での持続可能な生活基盤の構築に向けた重要な一歩となる。研究は約18か月にわたって進められ、将来的には地球上の資源循環や環境問題の解決にも応用されることが期待されている。
【プレスリリース】From waste to resource: ESA funds circular economy innovations for space
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