一般社団法人エコシステム社会機構(ESA) は2月20日、「社会イノベーションの新メカニズム2026 ~混沌の時代のデザインは、エコシステム社会~」と題した公開シンポジウムを開催した。サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ、コミュニティ・ウェルビーイングという3つのテーマを軸に、ESA加盟企業、自治体、連携している学術機関などとの共創による具体的な取り組みのプロセスと成果の一部が紹介された。
エコシステムの土台となるのは「希望を耕し、共生できる人間観」
取り組み紹介に先立って行われた基調講演では、 東京大学 東洋文化研究所 所長・中島 隆博氏が「Human Co-becoming ~共生と循環のエコシステム社会~」 と題して講演を行った。
この中で中島氏は、共生という概念について、共存との違いに触れながら「他者と単に一緒にいるだけではなく、他者と一緒にいながら関係性を認識し、互いに変容していくこと」だと言及した。その上で、他者性を生態系にも拡張していきながら「人間中心主義との対極にある、希望を耕し共生できる人間観を育まなければならない。そのためには、問題を生み出して利益をあげてきた経済システムから、問題を解決することで利益をあげるエコシステムへ転換しなければならない」などと訴えた。

資源回収を通じて、まちに集まったものとは?
取り組み紹介のうち、サーキュラーエコノミーに関わる事例では、花王と三井住友信託銀行、NECソリューションイノベータ、アミタホールディングスが宮城県石巻市で行った、つめかえ容器の協力回収モデル「石巻リサイクリエーション」が紹介された。
同モデルは2015年から10年間にわたって行われ、同市内各所にシャンプーなどの使用済み日用品つめかえ容器の回収拠点を展開。回収した容器を再生樹脂として加工してブロック等にリサイクルするとともに、再びつめかえ容器として生産する水平リサイクルにも成功した。そのプロセスの中で、市民を主体とした団体とともに、市内の学校への出前授業や地域交流イベントなどを行いながら取り組みを浸透させていった。
花王の高村玲那氏は「私たちは、日本の小売業者や消費者の皆さんと30年にわたってつめかえ容器を作ってきました。その文化を守るためのリサイクルシステムを、地域の皆さんと作っていきたい。そう考えて、石巻市での取り組みをインパクトロジックモデルに当てはめて分析し、インパクトビジョンとしてまとめました。(中略)これまでにつめかえ容器 9.6トンを回収するとともに、さまざまな形で地域の変化があった」と振り返った。
インパクト分析に携わった三井住友信託銀行の小中洋輔氏は、回収ボックスやリサイクルブロック、つめかえパックといった企業と地域をつなぐ「バウンダリー・オブジェクト」を地域内にうまく配置していくことで「市民の皆さんがともに歩むまちづくりという社会的価値が生まれ、それが回収量や品質の向上、顧客ロイヤリティの向上といった経済価値につながっている」と成果を強調した。

一方で、ESA内のワーキンググループ内での研究を紹介したアミタホールディングスの高瀬晴太氏によると、資源回収の取り組みは自治体や企業、生活者という異なるステークホルダーの連携や、資源価値を損ねない形での採算性の確保、生活者の行動変容や協力の継続を促す仕掛けづくりという点で複合的な課題に直面しているという。今後は、石巻リサイクリエーションで行ったインパクト評価や、採算性と生活者連携についての更なるデータに基づいたシュミレーターの精度向上を通じて、協力回収の最適な仕組みを体系化して展開したいとしている。
各地で展開できる持続可能な循環と共生モデルづくりに向けて
ESAは「循環」と「共生」をコンセプトに、人口減少・少子高齢化や新しい政策課題に直面する地方自治体と、新たなビジネスモデルの創出を目指す企業や研究者などの参画により、真の公民連携と社会的価値の創出を目指す団体として2024年4月に設立。エコシステム社会づくりを目指す地方自治体と企業などにとって今後重視すべき課題として3つのテーマ(サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ、コミュニティ・ウェルビーイング)を設定し、産官学民による共創を通じて各地で実証プロジェクトの実装を目指している。
地域を舞台とした循環と共生の実現には、それらを担う人材の活躍が不可欠だ。こうした課題意識のもと、ESAはこの日のシンポジウムの最後に、働き方の多様化でキャリア自律が求められるミドルシニアの会社員らが地域で活躍するためのスキーム構築に乗り出すことも明らかにした。
ESAが行っている特定の地域での限定的な取り組みを、日本全国、さらには海外も含めた多様な地域の特性に応じた循環と共生のモデルとして拡大させることができるか注目したい。
【参考記事】
エコシステム社会に必要な循環とコミュニティのあり方とは?~ESA設立記念シンポジウム開催(2024年8月27日)





