欧州委員会は3月4日、欧州の製造業の競争力強化と雇用創出を目的に、EVや太陽光発電、ヒートポンプなどの低炭素関連製品のEU域内製造の需要拡大を図るEU規則「産業加速法(IAA)」案を発表した。脱炭素化を進めながら、‌中国企業の製品を念頭に特定の第三国への過度な供給網依存を解消し、欧州の経済安全保障を強化するねらいがある。

法案では、公共調達や公的支援制度において「Made in EU」や低炭素製品を優遇する仕組みを導入する。対象分野には鉄鋼、セメント、アルミニウム、自動車、太陽光発電、蓄電池、風力発電、水素製造装置などのネットゼロ技術が含まれる。今後は化学産業など他のエネルギー集約型産業にも対象が広がる可能性がある。

認定基準も導入する。具体的には、アルミニウムは25%以上、セメントは5%以上についてEU原産かつ低炭素であることを求めるほか、鉄鋼についても25%以上に低炭素基準の遵守を義務付ける。また、EVについては、バッテリーを除いた部品の70%以上(価格ベース)をEU域内で調達しなければならないとする。

こうした施策を通じて、IAAは製造業のGDP比率を現在の14.3%から2035年までに20%へ拡大する目標を掲げる。

一方で、「Made in EU」の優遇措置については加盟国間で議論もある。域内産業の競争力強化につながるとの期待がある一方、公共調達での地域優遇が保護主義的な措置と受け取られる可能性や、EUの開放的な貿易政策との整合性を懸念する声もあるためだ。欧州委は、自由貿易協定(FTA)を締結している国などについてはEU産と同等に扱う仕組みを設け、開放性とのバランスを図るとしている。

また、産業プロジェクトの許認可手続きの迅速化も盛り込まれた。加盟国に対し、製造プロジェクトの許認可を一括して処理するデジタル窓口の設置を求め、手続きの簡素化とスピード向上を図る。

さらに、EU域内の産業基盤強化の観点から、戦略分野への外国直接投資(FDI)にも新たな条件を設ける。一定規模以上の投資については、雇用創出や技術移転などEU経済への具体的な価値創出を求め、サプライチェーンの強靭化につなげる考えだ。

このほか、産業共生を促す産業加速地域の創設も提案された。クリーン製造プロジェクトの集積を促進し、エネルギーインフラ投資や産業クラスター形成を支援する。

欧州委員会は今回の法案について、域内産業の脱炭素化を進めながら、サプライチェーンの強靭化と経済安全保障の強化を図る戦略の一環と位置付けている。低炭素・Made in EUはリサイクル産業への追い風ともなる。今年後半に発表が予定される循環経済法と相乗効果を発揮させ、域内循環のエンジンとなるだろう。法案は今後、欧州議会とEU理事会で審議される予定だ。

【プレスリリース】Commission proposes Industrial Accelerator Act to strengthen industry and create jobs in Europe
【参照サイト】Questions and answers on the Industrial Accelerator Act
【参照サイト】REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL
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