グッチはこのほど、エレン・マッカーサー財団の戦略的パートナーとなり、サーキュラーエコノミーへの取り組みを加速させると発表した。
「常に進化し行動することで社会と環境の変革を支援する」を理念に掲げるグッチは、サーキュラーエコノミーの3原則「廃棄物と汚染をなくし、製品や原料を循環させ、自然を再生する」の目標を掲げ、実現に向けてさまざまな取り組みを推進してきた。同提携は、グッチのこれまでの取り組みを発展させ、自然および地域社会に好影響を持続的に与えるソリューションを見出し、よりよい未来へつなげるというグッチの目標の実現に向けて不可欠であるとしている。
エレン・マッカーサー財団は、同提携によりグッチにおけるサーキュラーエコノミーの3原則のさらなる進化と定着を支援するとし、初期段階として以下の協業を実施する。
- デザインにおけるサーキュラーエコノミーの推進:グッチは今後、製品のライフサイクル全体でサーキュラーエコノミーの原則に配慮したコレクションを増やす。エレン・マッカーサー財団はグッチの取り組みを分析し、デザインの発想やクリエイティブにおけるサーキュラーエコノミーの原則の組み込み方法考察において支援する。加えて、サーキュラーエコノミーの原則と実践に関する知識や運営技術を深めることを目的とした教材や教育講座を提供する
- 環境再生型農業の推進:2020年よりグッチは主要な原料全般に関わる環境再生プロジェクトへの投資を拡大し、サーキュラーエコノミー移行を加速している。エレン・マッカーサー財団は、ファッション業界における環境再生型の原料調達を牽引するグッチの取り組みを支援する
グッチは、これまでに展開してきた取り組みの進捗状況や成果を「2021年Gucci Equilibriumインパクトレポート」で示した。同レポートで報告された主な取り組みは以下のとおり。
- ジェンダー平等やアクセシビリティなど、多様性と包括性に関する有意義な進展
- CHIME FOR CHANGE(ジェンダー平等を目指すグッチの世界的キャンペーン)およびGUCCI CHANGEMAKERS(※)の世界ボランティア活動プログラムを通して、地域コミュニティに好影響を与える社会変革
- 環境再生型農業へのさらなる投資により、自然の保護・回復を促し、総合的な環境負荷を最小化
- デザインおよび製造にサーキュラーエコノミーの原則を適用するための革新的な取り組み
現在、ファッション業界の環境負荷削減に向けてさまざまな取り組みが進められている。エレン・マッカーサー財団は先日、イタリアのファッションの国立商工会議所「カメラ・ナツィオナーレ・デラ・モーダ・イタリアーナ(CNMI)」と提携し、ファッションの循環型設計をサステナブルファッション賞に導入し、イタリアのファッション業界の課題の最上位に位置づけると発表した。
今回のグッチとの提携に当たり、エレン・マッカーサー財団のアンドリュー・モレット理事長は、「ファッションを循環型かつ再生型経済へと移行することで、環境汚染・気候変動・生物多様性喪失を含む地球規模の課題の根本原因に取り組むことができます」と述べた。こうした協働によって、ファッション業界のサーキュラーエコノミー移行さらには再生型への移行が加速していくことが期待される。
2021年Gucci Equilibriumインパクトレポートの概要
プラネット(地球)のための主な取り組み
- 持続可能で再生可能な生物由来の原料で作られた非動物由来の素材を開発し、現在70以上のグッチ製品で採用
- グッチ製品に使用する原料のトレーサビリティは全体で95%、植物性由来・動物性由来の原料は99%のトレーサビリティを達成
- 製造工程で発生する端材のレザー290トン・生地250トン・メタルアクセサリー67トンを回収。イタリアのNGO諸団体に生地9000メートルを寄贈
- レザー製造によるフットプリントを削減。レザースクラップ253トン・水950万リットル・廃棄物1万5730kgを削減することで、CO2排出量を1085トン削減
- 2015年以降、成長率に対して総フットプリントを49%・温室ガス排出量を46%削減
- 事業展開する49カ国のうち、44カ国でグリーンエネルギー使用率100%を達成。2022年末までに世界中で再生可能エネルギーの使用率を100%にするという目標に対し、93%まで達成
- 2018年以降、温室効果ガスプロトコルのスコープ1・2・3の全区分において、カーボンニュートラルを実現
- ジンバブエの森林78万5000ヘクタールの保護と再生・生物多様性保全を支援
- ケニアにおいて6000ヘクタール以上で植林プログラムを支援し、農地改良活動を支援
- 環境再生型農業からの原料調達に向け、環境再生型農業プロジェクト発足の仕組みを導入
- 環境再生型農業へ移行する農場を支援するため、3075ヘクタールにおける環境再生型農業プロジェクトへ資金を提供。5年間でCO2排出量約2万5000トン削減
- 自社サプライチェーン上の農場と提携し、環境再生型農法の導入を支援
ピープル(人々)のための主な取り組み
- オフィス・店舗従業員の多様性を高め、管理職に占める女性の割合は58%に、上級管理職では42%に増加
- 6000人以上の社員にアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に関する研修を実施・6000人の社員にDE&Iに関するオンライン研修を実施し、インクルーシブな職場環境づくりを推進
- 障がい者雇用を拡大し、障がいなどによって過小評価されている人材の育成を専門とする団体と提携を締結
- 45カ国以上でジェンダー間賃金格差の分析を開始
- ミラノで開催されたウィメンズフォーラムG20で「Women’s Forum CEO Champions Commitments」に署名
- インクルーシブな企業文化を促進するための機会を創出し、改善対策を実行するためイタリア国内の社員を対象に第1回ジェンダーギャップレポートの作成を開始
- Gucci Changemakersの世界ボランティア活動プログラムにより、1700名の社員が9800時間以上のボランティア活動に従事、世界88都市で活動する140以上のNGOを支援
- CHIME FOR CHANGEを通して世界の25以上の団体を支援、計6万2526人の女性と少女が直接的恩恵を享受
- グッチコミュニティを代表して、新型コロナウィルス感染症のワクチンを平等に届けるユニセフの取り組みを支援。世界各地で弱い立場にあるコミュニティの一部にワクチンキット20万個を供給
- UN Womenの呼びかけによるGeneration Equality Forumに、Feminist Movements & Leadership Action Coalitionの民間部門リーダーとして参加し、世界中の女性と少女の平等・リーダーシップ・機会を加速させるための取り組みを推進
- 伊インテーザ・サンパオロ銀行と共同で立ち上げた特別融資制度「Sviluppo Filiere」を拡大し、イタリア初のグリーン・ファイナンス・プログラムを制定、サプライヤーの持続可能で包括的な事業活動への移行を支援
- グッチの製品製造における職人気質を次世代に伝えるための革新的な教育プログラムを展開。グッチ社員を対象にした技術研修プログラムに2021年は461名が受講、2018年の開講から延べ受講者数は650名に
※ GUCCI CHANGEMAKERS:従業員が地域社会に変化をもたらし、社会で前向きな変化の原動力となることを目的として、グッチが2019年に立ち上げた世界的プログラム
【プレスリリース】グッチはエレン・マッカーサー財団と戦略的パートナーシップを締結、2021年 GUCCI EQUILIBRIUM インパクトレポートを発表
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*冒頭の画像の出典:株式会社ケリングジャパン