オランダ最大手ING銀行は1月21日、サーキュラーエコノミーの現状と課題についてまとめた最新の報告書「Rethinking the road to the circular economy:サーキュラーエコノミーへの道のりを再考する」を発表した。同報告書の中で、INGは適切な規制が導入されなければサーキュラーエコノミーの実現はさらに遠のき、環境への負荷は止まらないと警鐘を鳴らしている。
同社は、サーキュラーエコノミーが浸透していない大きな理由として、気候変動や空気汚染などの環境負荷が商品の価格に適切に反映されていない点を指摘している。サーキュラーエコノミーでは、再利用やリサイクルなどにおいてより多くの労働力が必要となるが、現状はそれらの人件費がバージン素材を調達するコストよりも高くつくため、結果としてサーキュラーエコノミーのモデルが従来のリニアエコノミーと比較して経済優位性が低いという点を指摘している。
また、報告書では金融機関はリニアエコノミーのリスクを見落としている点にも着目している。リニアエコノミーには座礁資産や環境保護の法規制強化リスクなど、サーキュラーエコノミーにはないリスクがあるものの、それらのリスクを見落としている金融機関がサーキュラーエコノミーを避ける可能性があるという。
その上で、サーキュラーエコノミーへの転換を加速させるためには、まず税制や規制、補助金などの制度を整えることで環境負荷と価格の不均衡を是正することが重要だと提起。サーキュラーエコノミーへと転換するためのコストを下げるイノベーションを支援し、市場の関心を高める情報発信と働きかけを行い、サーキュラーエコノミー関連スタートアップ企業への投資を募り、リニアエコノミーのリスクを金融リスクモデルとして周知することが必要不可欠だと結論づけている。
【参照記事】Rethinking the road to the circular economy
【参照レポート】Rethinking the road to the circular economy