日揮ホールディングス株式会社・岩谷産業株式会社・豊田通商株式会社はこのほど、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/水素製造・利活用ポテンシャル調査」にて、「都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査」を提案し、採択された。
廃プラスチックへの社会的関心が高まるなか、同調査では廃プラスチックをガス化して水素を製造するサプライチェーン構築を検討する。同調査で採用するのは、プラスチックを分子レベルに分解するガス化ケミカルリサイクルだ。ガス化ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクルやモノマー化ケミカルリサイクルの適用が難しい異種素材や不純物が混合したプラスチックも処理できる特性を有するとしている。
ガス化ケミカルリサイクルにより、都市部で工場や家庭などから排出される廃プラスチックを活用することで、早期に水素を安定的かつ安価に供給できるようになると3社は考える。CO2排出量削減が急務となっている発電所・各種モビリティ・港湾設備などにおける水素利用の促進をはじめ、水素供給による幅広い分野の脱炭素化と資源循環促進への貢献を目指す意向だ。
同調査の概要は、以下のとおり。
実施期間・実施体制
- 実施期間:2021年度~2022年度
- 代表委託先:岩谷産業株式会社
- 委託先:豊田通商株式会社、日揮ホールディングス株式会社
各社の主な役割
- 岩谷産業株式会社:全体取りまとめ、需要家調査、輸送方法検討、サプライチェーンモデルの評価
- 豊田通商株式会社:廃プラスチックの回収調査、需要家調査、サプライチェーンモデルの評価
- 日揮ホールディングス株式会社:廃プラスチックの回収調査、プラスチックガス化による水素製造調査、サプライチェーンモデルの評価
調査内容
愛知県・福岡県を対象とし、廃プラスチックのガス化による水素製造と地域での利活用モデルの可能性を検討する
- 水素製造の可能性調査:廃プラスチックの回収可能性調査、プラスチックガス化による水素製造の可能性調査
- 水素利活用の可能性調査:需要家調査、輸送方法調査
- 水素利活用システム全体の調査:サプライチェーンモデルの評価
(画像の出典:日揮ホールディングス株式会社・岩谷産業株式会社・豊田通商株式会社)
まずは使い捨てプラスチックの総量を減らしていくことが先決で、また将来的には再エネ由来のグリーン水素の普及が期待されるが、このような技術の進展にも着目したい。
なお、水素の長所と課題について、資源エネルギー庁は下記のように公表している。
長所
- さまざまな資源から生成可能:化石燃料・メタノール・エタノール・下水汚泥・廃プラスチックなど、さまざまな資源から生成でき、エネルギー安全保障に貢献する
- CO2排出ゼロ:エネルギーとしての利用時にCO2を排出しない
課題
- 技術開発:海外資源などから水素を大量に調達・利用するための製造・貯蔵・輸送・水素発電の技術開発
- 燃料電池システムの性能向上とコスト削減:水素ステーションのインフラ網の拡充や規制の見直しなど
【プレスリリース】「都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査」がNEDO委託事業で採択