日本総合研究所は10月2日、ユーザーを起点としたEV電池のサーキュラーエコノミーを実現することを目的に、「EV電池スマートユース協議会」を設立したことを発表した。EVおよびEV電池の需要者である企業や学識者、省庁、地方自治体と連携する。

EV電池に関しては、リデュース・リユース・リサイクル(3R)のみではサーキュラーエコノミーの実現が難しく、EV電池を長く使い続けるための維持・管理や、残存能力に応じたリユース・リサイクルといった「スマートユース」が求められる。しかし、ユーザー視点での制度や規格、技術が整備されておらず、スマートユースの実践が進んでいないという課題があった。

本協議会の設立は、こうした課題を解決するための新たな試みである。具体的な活動内容として、まず規格化・標準化に注力する。国内外の関連機関と連携し、EV電池の使用に必要な計測手法や制御手法を標準化することで、ユーザーがEV電池を利用しやすい環境を整える。また、中古EVの利用を促進する施策も検討する。

次に、評価指標の策定が挙げられる。ユーザーが循環利用を行う際に必要な「循環貢献指標」を策定し、CO2削減への貢献度や製品や資源の価値を永続的に再生できる能力(サーキュラリティ)を測る尺度を提供する。また、指標に基づく計測や調査の運用方法と実施体制も検討する。

さらに、CO2削減効果の測定と活用方法の検討を進め、車両利用やリユース、リサイクルの各段階におけるCO2削減効果を算定する方法を開発し、そのデータをもとにクレジット化の手法を検討する。また、ユーザー企業とEV電池に関する技術のマッチングを行い、実証プロジェクトを促進することで、循環工程の各段階におけるデータ管理方法やプラットフォームの構築など、社会実装に向けた支援を行う。

今後、EV電池の需要は増加し、2050年には国内市場が約8兆円規模に成長すると予測されている。また、希少資源の海外流出抑制という資源安全保障の観点からも、EV電池の循環利用が進展することが望まれている。EV電池の循環利用が進むことで、持続可能な社会の構築に貢献することが期待される。

【プレスリリース】「EV電池スマートユース協議会」設立のご案内
【関連記事】EV電池の国内サーキュラーエコノミー、潜在市場は8兆円規模と日本総研予測
【関連記事】米レッドウッド・マテリアルズ、EV電池パックの査定・販売ツールを始動。自動車解体業者向け
【関連記事】損害保険ジャパンと日本総研、EV電池の品質保証サービス事業化に向けた実証を開始