損害保険ジャパン株式会社と株式会社日本総合研究所はこのほど、ゴイク電池株式会社と日置電機株式会社、および国内の大手中古自動車流通事業者・大手ディーラー・大手中古販売店と共同で、電気自動車(EV)電池の品質保証サービス事業化に向けた検証試験を開始した。

ゴイク電池株式会社は電池診断装置の開発・販売事業を展開しており、日置電機株式会社は電気計測器を開発している。BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)の活動の一環として実施される同試験は、EV電池の品質保証サービス提供に向けた基礎データの収集や車両評価手法の確立などを目的とし、メーカー横断の複数車種数百台を対象とする。

BACEコンソーシアムは、2020年10月に株式会社日本総合研究所が設立し、日本企業約10社が参画している。EVに搭載される電池のリユース・リサイクルの付加価値向上と循環構造確立に必要となるデータ活用技術や事業モデルの研究が目的だ。同コンソーシアムでは、中国でEV電池のリユース利用の事業開発をすでに進めており、今回の試験でEV電池の価値を顕在化・流通させることで、国内における中古EV利用・電池リユース・リサイクルをつなぐ循環型バリューチェーンの構築を目指す。

損害保険ジャパン株式会社と株式会社日本総合研究所は、日本でEVの普及が進まない主な理由は、充電ステーションが少ないなどの利用上の制約、航続距離が短いこと、エアコンなどの使用状況に影響を受けることなど、電池の性能に対する不安であるとみている。電池の品質に対する不安は中古EVで特に大きく、中古EVは適正価値が評価されておらず、新車普及の阻害要因にもなっているとし、短時間で幅広い電池に対応できる高速診断技術を用いる必要があるとしている。

こうした課題の解決に貢献するべく、同コンソーシアムは次のような目標を掲げている。電池を取り外さずに1分以内で計測し、高精度に電池を評価できるシステムサービスの提供と診断評価、診断結果に従って電池を保証して中古EVの適正価値を顕在化させることである。同コンソーシアムが構想する事業の目的は診断技術販売ではなく、多くの診断技術を持つ事業者と連携して幅広い種類の電池を横断的に診断評価することと、中古EV・リユース電池・電池資源の評価と価値顕在化と保証、および流通を促進する場を形成することだ。こうしたサービスを提供することで、健全な中古EV市場の構築と新車EV購入における安心感の創造、およびEV市場の発展に寄与できるとみている。

現在、日本では中古EVは需要が低迷していることなどから約8割が海外輸出されているが、中古車両を国内で利用することで、中古車市場の拡大と国内での資源の確保・循環に貢献するとしている。

検証試験における損害保険ジャパン株式会社と株式会社日本総合研究所の役割は、以下のとおり。

  • 損害保険ジャパン株式会社:保証サービス検討のためのデータ分析、事業枠組みの検討、パートナー開拓、社有車での計測協力
  • 株式会社日本総合研究所:EV電池の社会価値を最大化する事業構想・エコシステムの構築、車両評価手法の導入方法検討と推進、高速診断技術を用いた大量データ収集試験手法確立・試験推進、診断評価のサービス検討のためのデータ分析

同コンソーシアムは、2022年度中に幅広い中古車販売・ディーラー・リースなどの事業者と同試験を進め、品質保証サービスの手法を推測予測し、2023年度の同サービスの事業立上げを目指して関係者との協働を推進していく予定だ。

【プレスリリース】EV電池の品質保証サービス事業化に向けた実証を開始 ~中古EVの価値適正化により、EV市場拡大と電池循環市場形成に貢献
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