共英製鋼株式会社はこのほど、鹿島建設株式会社と協業し、建物等の解体に伴って発生する鉛含有塗料や石綿などの有害物質が付着した金属廃棄物を無害化し、再資源化する取り組みを広域的に展開すると発表した。この連携により、有害物質の適正処理と鉄資源の循環を両立させ、建設分野におけるサーキュラーエコノミーの実現を目指す。
本取り組みでは、共英製鋼が電気炉の数千度の高温を利用して、鹿島建設の解体工事で発生する有害物質付着金属廃棄物を処理する。電気炉で鉄スクラップを溶融する際に、有害物質を無害化するとともに、金属部分(鉄)を鉄鋼製品の原材料として再資源化する。この再資源化された鉄鋼製品は「エシカルスチール」と称され、鹿島建設が建設資材として使用することで、鉄資源の循環サイクルが確立される。
本取り組みの背景には、1960年代以降、橋梁や鉄塔、水門などの社会インフラや建材に広く使用されてきた鉛含有塗料や石綿が、健康被害や環境への悪影響が確認されたことから、現在では使用が制限・禁止されているという状況がある。これらの建材を使用した多くの建造物が建て替え時期を迎えており、有害物質が付着した金属類を技能者の安全衛生や工事現場の周辺環境に配慮した上で解体し、回収した資源を有効利用することが社会的に強く求められている。鹿島建設は、2024年度に策定した「鹿島環境ビジョン2050plus」において、2050年度までのサーキュラーエコノミー100%実現を掲げており、今回の協業はその目標達成に向けた具体的な一歩となる。
共英製鋼は、鉛と石綿の両方の処理を行う許認可を有する国内唯一の電炉メーカーだ。同社は、CO2排出量の少ない電気炉で有害物質を無害化溶融処理し、金属部分を鉄鋼製品に再生利用することで、有害物質の適正処理と鉄資源循環を両立させる。従来、石綿等が付着した金属は、解体作業時に現場で有害物質を剥離して処理するか、埋立処分する必要があった。しかし、本取り組みでは溶融処理で有害物質を無害化できるため、現場での剥離作業が不要となり、技能者の作業負担や健康リスクを大幅に低減し、労働環境と生産性を向上させる。さらに、埋立処分がなくなることで、環境保全にも貢献する。
今後、建造物の解体に伴う有害物質が付着した金属廃棄物の発生増加が予想される中、共英製鋼は、当該産業廃棄物処理に必要な許認可を保有する国内事業所を現在の山口事業所以外の他の事業所にも拡大する計画だ。両社は、有害物質が付着した金属廃棄物の回収および運搬体制の強化を図り、本取り組みを広域的に展開することで、サーキュラーエコノミーの実現と社会貢献を目指す。
【プレスリリース】有害物質が付着した金属廃棄物の無害化・再資源化により、サーキュラーエコノミーを実現
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