三菱ケミカルグループ株式会社はこのほど、東京海上日動火災保険株式会社と株式会社ABTと共同で、使用済み自動車からアクリル樹脂を回収するためのスキームについて実証実験を開始すると発表した。同実証において、アクリル樹脂ケミカルリサイクルの事業化を目指す。
世界有数のアクリル樹脂メーカーである三菱ケミカルグループ株式会社は、製造に加え、廃棄・回収されるアクリル樹脂をケミカルリサイクルして再利用する事業の本格化に向けて取り組みを進めている。東京海上日動火災保険株式会社は自動車保険業の運営において、自動車事故などによる保険金の支払いに伴い多くの使用済み自動車を取得している。株式会社ABTは、東京海上日動火災保険株式会社から委託を受け、全国各地の解体業者とともに使用済み自動車のリユース・リサイクルを含めた適正処理を実施している。
3社は東京海上日動火災保険株式会社と株式会社ABTが持つ使用済み自動車処理のネットワークを活用し、テールランプなどのアクリル樹脂を回収するスキーム構築を目指す。2023年3月から関東地区において、約1000台の使用済み自動車からアクリル樹脂を回収する実証実験を開始する。
実証実験を踏まえ、運用・素材の品質・コストなどを検証し、2024年度に全国ネットワークで取り組みを拡大することを目指す。自動車保険のネットワークを活用して使用済み自動車からアクリル樹脂を回収する同試みは、国内初となるとしている。
三菱ケミカルグループ株式会社は、マイクロ波を使ってアクリル樹脂をリサイクルする実証実験を実施しており、2024年度のリサイクル施設稼働開始およびアクリル樹脂ケミカルリサイクルの事業化を目指している。リサイクル技術を確立し、多方面の市場から回収するスキームを検討していくことで、アクリル樹脂リサイクルシステムの社会実装に向けた準備を進めている。
プラスチックにエネルギーを直接伝達できるマイクロ波技術は、従来の熱分解プロセスと比較して大きな省エネ効果を実現することが期待されている。加えて、REPORT OCEANの報告書によると、世界の自動車用プラスチック市場は2027年に2021年比で40%以上の成長が見込まれている。自動車用プラスチックは耐久性に優れ製造が容易で軽量化につながることから、自動車の部品に幅広く使用されている。調達・サプライチェーンソリューション提供の英Global eProcureは、自動車全体の体積の50%をプラスチックが占めると発表しており、使用済み自動車に含まれるプラスチックのリユース・リサイクルが求められている。
リサイクル技術の確立と、自動車保険のネットワークを活用して回収機会の拡大を目指す3社の取り組みが、自動車業界の環境負荷削減に貢献していくことが期待される。
【プレスリリース】東京海上日動およびABTと連携し、国内初のアクリル樹脂回収スキームを構築~ケミカルリサイクルの事業化に向けた実証実験を開始~
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*冒頭の画像の出典:三菱ケミカルグループ株式会社