マイクロソフトが、2030年までにウォーターポジティブを達成するという目標を発表した。これは、同社が世界中で消費する水よりも多くの水を供給するというものだ。同社はすでに2020年1月、2030年までにカーボンネガティブ(CO2の大気中への排出量よりも吸収量の方が多い状態)を実現し、1975年の創業以来排出してきた二酸化炭素による環境への影響を排除する計画を公表している。同年3月には、直接事業や製品・包装から生じる廃棄物を2030年までにゼロにする目標を表明しており、サステナビリティに関する取り組みを着々と進めている。

国連水関連機関調整委員会によると、現在世界では20億人以上の人が安全な飲料水にアクセスできない状況にあり、国連は2050年までに4人に1人が淡水が慢性的に不足する国に住むようになるかもしれないと予測している。また、マイクロソフトは、世界の大企業150社が世界の淡水使用量の3分の1に影響を与える可能性があると指摘している。そこで2020年3月、マイクロソフトを含む7社は2050年までに水ストレスを軽減させるイニシアチブWater Resilience Coalitionを発足した。

2030年までにウォーターポジティブになるという今回の目標に向けて、マイクロソフトは自社の水使用に責任を持つとともに、顧客の水使用も改善できるようにテクノロジープラットフォームを使って提携を行っていく。同社は水使用量の削減と、同社が事業を営む水ストレスが高い地域での水の補給という2つの方法で取り組んでいく方針だ。

水使用量の削減にあたっては、今後運用が予定されている大規模な敷地や建物に、雨水収集システムと廃棄物処理プラントなどを装備することで水をリサイクルしたり、水の代わりに外気を使用して冷却したりすることで対策を行う。

水供給の取り組みは、同社が事業を展開している約40カ所の水ストレスが非常に高い(再生する水量の40%以上を消費する)地域で集中的に行い、地域選定には世界資源研究所の評価を反映させる。同社は、世界の150万人以上の人が清潔な水を確保できることを目標に、7カ国に焦点を当てて非政府組織とともに活動を行う。まず、アメリカに本拠を置く非営利団体Water.orgと共同でブラジルとインド、インドネシアとメキシコで支援を行い、その後、中国とマレーシアと南アフリカで支援を拡大していく予定だ。さらに、マイクロソフトのIoTやAIなどのテクノロジーを使用して水データをデジタル化し、水の使用量を減らしたり、水質管理を行ったり、水ストレスが発生している場所の理解を深めたりするなど、顧客のプロジェクトの支援も行っている。

投資も水の供給戦略のひとつで、湿地回復やアスファルトなどの不浸透性の表面の除去といったプロジェクトに投資を行う。また、同社の気候イノベーション基金は、スイスに本拠を置く投資会社Emerald Technology VenturesのGlobal Impact Fundに1000万ドル(約10億5000万円)を投資している。この基金は水資源の保護や水質改善、水処理における炭素排出の回避や気候変動への適応などに焦点を当てており、Temasek社やEcolab社、そしてSKion社などに出資している。

「私たちの使命は、地球上のすべての人と組織がより多くのことを達成できるようにすることです。弊社のビジネスの目的と責任は、人と地球の問題に対する収益性の高い解決法を生み出すことにあると確信しています。そのため、世界中のお客様やパートナーや非政府組織などと協力して、気候変動問題に取り組んでいます。地球にとって良いことは、最終的にはマイクロソフトにとっても良いことです」と、マイクロソフトの社長ブラッド・スミス氏は述べている。

【参照サイト】Microsoft will replenish more water than it consumes by 2030
【プレスリリース】マイクロソフト、2030 年までにカーボンネガティブとなることを発表
【関連記事】マイクロソフト、2030年までに「廃棄物ゼロ」を実現へ
【参照サイト】Water Resilience Coalition