三菱総合研究所(MRI)は、経済産業省から委託を受けた「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を完了したと6月23日に発表した。2025年9月から2026年2月末にかけて実施した本事業では、大都市圏・地方都市・中小地域の3類型を対象に、地域特性に応じた資源循環モデルの技術・運用・経済性を一体的に検証した。
背景には、国内外の資源循環政策の急速な進展がある。日本では2023年の『成長志向型の資源自律経済戦略』策定を経て、2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行され、自動車・家電・容器包装の製造事業者に対して再生プラスチックの利用計画策定と定期報告が義務付けられた。欧州でも再生材利用義務化など法的枠組みの強化が進む中、資源循環を産業政策・経済安全保障の観点から加速させることが急務となっており、今回の実証事業はその基盤整備を担う位置づけにある。
大都市圏では、工場、オフィス・店舗、家庭の3つの排出源ごとに分けて検証を実施した。工場由来のオレフィン樹脂や事業系プラスチックのケミカルリサイクル、家庭系容器包装に含まれるPETトレイ類のマテリアルリサイクルを対象とした。石油化学コンビナートや既存のケミカルリサイクル設備といった産業インフラを活用することで、複数の再資源化ルートを組み合わせた安定供給の可能性が示された一方、事業系プラスチックについては排出段階での分別区分がリサイクル工程の要求品質と整合しておらず、選別・前処理工程への負荷集中が課題として浮き彫りになった。
地方都市では、茨城県水戸市・つくば市・古河市および岡山県西部衛生施設組合(笠岡市など5市町)を対象に、家庭由来プラスチックを対象とした高度選別施設での精密な樹脂分別によって再生材の品質向上が図れるかを検証した。品質向上への一定の効果が確認された一方、PETやポリスチレンなど一部樹脂では着色や添加剤が受入条件への適合を妨げるケースもあり、選別工程の高度化だけでは用途拡大に限界があることも明らかになった。報告書は、再資源化用途ごとに必要な品質水準をあらかじめ想定した「用途前提型の選別設計」がモデル成立の鍵になると指摘している。
中小地域では、鹿児島県薩摩川内市を中心にいちき串木野市・さつま町を対象に実施した。自治会機能を活かした住民分別により比較的高品質なプラスチックの回収が可能であることが確認され、実証規模での温室効果ガス排出量は通常時比で19%削減された。将来の実装規模では年間289トンのCO2削減効果も見込まれる。ただし容器包装プラと製品プラを単独でリサイクルするスキームでは経済合理性の確保が困難であることも判明。不燃・粗大ごみに含まれる金属など有価性の高い資源と組み合わせた処理の集約化と、近隣自治体との広域連携によるスケールメリットの確保が不可欠との結論に至った。
報告書はまた、3地域に共通する構造的な課題を4点整理している。
- 家庭や事業所での分別基準が、リサイクル工場が求める樹脂の種類・汚れ・混入物といった受入条件と必ずしも一致していない
- 高度な選別設備は一定の処理量がなければ採算が取れず、導入できない
- 一般廃棄物の越境規制などによって複数自治体での集約回収が難しい
- 工程を高度化するほど専門人材の確保や運用負荷が増大する
報告書は、資源循環システムの安定化には技術の高度化だけでなく、規模・制度・人材との整合が不可欠だと結論付けている。
MRIは令和8年度も引き続き同事業の委託先として採択されており、今年度も継続して実証を進める予定だ。再生材の用途拡大や市場形成(価格形成・トレーサビリティ)、広域連携による事業性向上についても検討を続ける。
※画像はプレスリリースより引用
【プレスリリース】三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を完了
【参照記事】令和7年度「資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業)」報告書
【参照記事】令和7年度「資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業)」に係る委託先の公募について
【参照記事】「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました
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【参照記事】「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
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