インド工科大学マドラス校(IIT Madras)の研究チームは7月31日、農業の副産物や古紙を活用して生分解性の包装材を開発したと発表した。キノコの菌糸体(マイセリウム)を培養して成形することで、従来の発泡スチロール(EPS)やポリエチレン発泡材(EPE)に匹敵する強度と耐水性を持ちながら、自然に分解される特性を実現した。
この研究は、プラスチックごみによる汚染と、焼却や廃棄で大気汚染を引き起こす農業廃棄物処理の2つの課題に取り組んでいる。インドでは年間400万トンを超えるプラスチックごみが排出される一方、3億5,000万トン以上の農業廃棄物が発生し、その多くが焼却されて資源が浪費されている。研究チームは今回の成果を通じて、これらを資源として循環利用する新たな方法を示した。
研究チームは、霊芝(Ganoderma lucidum)やヒラタケ(Pleurotus ostreatus)などの菌類を段ボール、紙、木くず、ココピート、干し草といった基材で培養した。菌株と基材の最適な組み合わせを検証した結果、EPSよりも高い圧縮強度を発揮するケースも確認された。
本研究成果は2025年6月に学術誌「Bioresource Technology Reports」に掲載された。研究はIIT Madrasの新任教員研究助成(NFIG)やインド教育省の支援を受けて実施された。研究メンバーはすでにスタートアップ「NatureWrks Technologies」を設立し、産業界との技術移転やライセンス契約、政府支援を通じて商業化を目指している。
この技術は包装材に限らず、断熱材や吸音材といった工業用途にも展開できる。農業副産物を基材として使うことで、農家の収入源の拡大や地域経済の活性化にもつながり、インドの循環経済を後押しする取り組みとなる。
【プレスリリース】IIT Madras Researchers develop Agriculture Waste-based Packaging Materials that can eliminate Plastic Use
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