シュローダーは11月1日、「シュローダー・グローバル投資家意識調査2021」の結果を公開した。個人投資家の投資動向や投資意識を把握する目的で、今回はサステナビリティに対する意識に焦点を当てた。世界33の国/地域の2万3950人(うち日本1000人)を超える個人投資家を対象にオンラインで行った調査では、日本の投資家は、コロナ禍でサステナビリティに対する意識が高まっているものの、サステナブル投資に対する認知は世界に比べ遅れをとっている実態が明らかになった。
コロナ禍は、世界の投資家にサステナビリティ意識を高めた。調査では環境問題の重要性が高まったと考える投資家は55%、社会的課題の重要性が高まったと考える投資家は57%と過半数に上る。日本では、環境問題の重要性が高まったと考える投資家は56%、社会的課題の重要性が高まったと考える投資家は65%と、全体の平均を上回った。
サステナブル投資については、その魅力を感じる理由として「環境に対するプラスの影響」は52%(2020年は47%)、「社会に対するプラスの影響」が39%(同32%)とそれぞれ増加。「高い投資リターン」を挙げたのは38%で、前回の42%から低下した。日本でも、環境、社会に対するプラスの影響を挙げる投資家の割合が大きく増加した。
サステナブル投資の定義について尋ねたところ「長期的な収益性が高く、環境や社会の変化にも対応したビジネスを行う企業に投資を行う」という回答が59%と、17年の53%から増加。また、「最も魅力的な投資先ではなくても、環境、社会、ガバナンスの課題への対応が最高水準にある企業に投資を行う」も17年の46%から51%に増加していた。一方で「物議をかもす企業への投資を避ける」は同23%から同15%に減少した。理由についてはレポートされていないが、議論を喚起すること自体を否定的に判断する投資家は減っているようだ。
また、「わからない」は17年の11%から6%まで低下した。日本では、17年は42%が「わからない」と回答、21年は17%まで低下したものの、調査対象国・地域の中では最も高い割合となった。中でも、日本の初心者/初級レベルの投資家では、3割が「わからない」と回答している。
「リスクと分散の程度が維持される場合、ポートフォリオ全体をサステナブル投資に入れ替えることをどう考えるか」との質問に対し、世界では57%が好意的と回答。国・地域別で最も好意的だったのは、タイ(76%)、インド(74%)、中国(74%)だった。日本では、好意的と回答したのは37%と、調査対象国・地域の中ではスウェーデン(36%)に次いで低い水準となった。投資経験別でみると、専門家/上級レベルの投資家のうち67%が好意的と回答し、中級の51%、初心者/初級レベルの47%を上回った。年齢層別では、若い世代のほうが好意的と考える割合が高い。
今後、さらにサステナブル投資が進むためには何が必要だろうか。サステナブル投資を増やす動機となる要因のうち、最も多くの投資家が挙げたのは「サステナブル投資により投資リターンが向上するという実績」(53%)だった。次いで「投資が社会と地球環境に与える影響を示す定期的なレポート」(40%)、「運用商品提供会社自身による、サステナブル投資であることを示す認証」(36%)が挙げられている。日本の投資家でも上位は同じ要因だった。
結果について、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社の黒瀬憲昭社長は「世界の投資家と比較して低いものの、日本の投資家のサステナブル投資に対する認知は以前に比べて広がったことがわかった。一方で、サステナブル投資に積極的な投資家は、日本ではまだ少数派」とコメント。「資産運用会社は投資家と企業の間にたって投資先を選別することにより、将来の環境や社会のあり方にも影響を与える重要な役割を担っている。企業分析においてESGやサステナビリティの要素を加えることは、持続的に成長する企業を選別する上で必要不可欠。投資家が『投資は将来の環境や社会を変える力』と実感できるようになるには、資産運用会社が、投資リターンをあげ情報開示の質を高めることで、投資家の期待に応えていく必要がある」と表明している。
調査は、世界33の国・地域のうち、32の国/地域では3月16日~5月7日、マレーシアは2021年7月5日から8月2日に実施。「投資家」の定義は今後12カ月で1万ユーロ(またはそれに相当する額)以上を投資する予定があり、過去10年間に何らかの投資行動をとった個人投資家。
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する金融投資メディア「HEDGE GUIDE」の「日本でのサステナブル投資は認知高まるも33ヶ国中最下位。シュローダーが世界の個人投資家に意識調査」より転載された記事です。