宮崎県新富町と南九州大学、およびパナソニック株式会社(以下、パナソニック)はこのほど、新富町の食品ロス削減と生ごみ減量化に向けて産官学共同で取り組んでいくことで合意し、包括連携協定を締結した。地域社会における課題解決の促進と持続的な地域社会の発展を目的として、生ごみ処理機を使った堆肥活用による食農循環プラットフォーム構築の実証実験を新富町で実施する。
日本のごみ総排出量は4,272万トン(東京ドーム約115杯分)でわずかな減少傾向がみられるが、年間処理費用は約2兆円とごみ処理事業経費は増加しており(※1)、各自治体の大きな負担となっていると3組織は認識している。老朽化などによりごみ焼却施設は減る傾向にあり、新富町のように町内のごみを近隣市のごみ焼却施設まで長距離運搬する地方自治体も少なくないとしている。高齢化が進むなかで、ごみ搬出が困難になる場合も多く、ごみ減量化やリサイクルは大きな課題であると3組織は考える。
ごみ減量化を妨げる要因の一つである食品ロスは、日本では近年横ばい状態が続いており、SDGsが掲げる「2030年世界全体の一人当たりの食料廃棄半減」実現に向けて対策が必要だとみている。2019年10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、国や地方公共団体に食品ロス削減に取り組む責務が課された。
今回の実証実験では、町民宅に設置した生ごみ処理機で処理した乾燥ごみを回収して堆肥化し、肥料として新富町内の市民農園やコミュニティーガーデンに還元する。野菜などの農作物の栽培や収穫につなげる食農循環システムとまちの緑地化の検証と研究を実施する。同時に、家庭内の食品ロス低減にも取り組み、燃えるごみの約40%を占めるという生ごみを減らし、再活用する食農循環活動に地域住民の参画を促進する予定だ。食品ロス削減や生ごみ減量への意識改革、およびごみを出さない生活様式の実践につなげていくとしている。
生ごみ処理機を使った食農循環システム案
3組織が発表した同実証実験の詳細は、以下のとおりだ。
実証実験での検証内容
- 生ごみ削減量の把握、ごみ処理費用・CO2放出量削減における効果
- 生ごみ堆肥の信頼性検証と活用先検討
- コミュニティーファーム運営や食農循環活動への地域住民参画による地域活性化。特に、子どもや高齢者の参画による食育・高齢者支援といった観点でのまちづくり効果
各主体の役割
新富町
- 実証実験場所・データ提供
- 町民モニターの選出・モニター宅で処理された乾燥ごみの回収・回収された乾燥ごみの肥料化やそれを活用するコミュニティファーム運用など町内活動の指揮
南九州大学
- 堆肥の成分分析・信頼性検証などの技術支援
- 生ごみ堆肥の出口戦略・食農循環システム全体の組織設計
- 各種ワークショップ開催などによる住民教育・啓発活動の支援
パナソニック
- 生ごみ処理機の提供
- 生ごみ処理機を活用した食農循環プラットフォーム・サービスの提案
- 同プロジェクトの包括的支援
- 地域が抱える課題の検証と課題解決に向けた具体的取り組みの推進、実施に向けた民間企業支援
実験の予定詳細および実行計画は、実証実験結果を踏まえた生ごみ堆肥の品質改善と活用先拡大なども視野に入れて、今後協議のうえ決定する意向だ。
【プレスリリース】新富町、南九州大学、パナソニックが食品廃棄ロス削減と生ごみ減量化に向け産官学連携で合意
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*記事中の画像の出典:宮崎県新富町、南九州大学、パナソニック株式会社