大成建設株式会社は2月16日、工場の排気ガスなどより回収したCO2から製造する炭酸カルシウムを用いて、コンクリート内部にCO2を固定するカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発したことを発表した。環境配慮コンクリート「T-eConcrete」(※1)の製造過程で排出されるCO2量に対して、同コンクリートによりCO2収支マイナスを実現する。

2019年、資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置され、現在、国内では「カーボンリサイクル」の実現に向けて、回収したCO2の直接利用や、CO2を用いた炭酸カルシウムの製造などのイノベーションが推進されている。同社は、これまで“セメントを使用しないコンクリート”をはじめとする環境配慮コンクリート「T-eConcrete」の開発を進め、コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減に努めている。しかし、これらの技術を発展させて「カーボンリサイクル」に対応するためには、以下のような課題があったとしている。

  • 回収したCO2を直接コンクリートに吸収させると、コンクリートが中和され、鉄筋の防錆機能を失う
  • CO2の吸収を容易にするため、コンクリート内に微細な空隙を増やす構造にした場合、コンクリート強度が低下する
  • 回収したCO2を用いて製造した炭酸カルシウムを大量にコンクリートに添加すると、粘り気の増加や硬化遅延により施工性が著しく低下し、硬化後の強度が低下する

そこで同社は、これまで「T-eConcrete」の開発で蓄積したCO2排出量を削減するコンクリート技術や知見を駆使し、回収したCO2から製造されるカーボンリサイクル材料(※2)である炭酸カルシウムを製鋼副産物である高炉スラグ(※3)主体の結合材(※4)で固化させ、コンクリート内部にCO2を固定するカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発した。

カーボンリサイクル・コンクリート概要(出典:大成建設株式会社)

同技術の特徴は、以下のとおりだ。

1.コンクリート内部にCO2の固定が可能

回収したCO2から製造した炭酸カルシウムを介して、コンクリート1㎥あたり70~170kgのCO2を固定できる。固定する効率は、CCS(CO2回収・貯留)に匹敵する。

2.製造過程におけるCO2収支のマイナスを実現

コンクリート材料内部へのCO2固定と産業副産物である高炉スラグの使用により、製造過程におけるCO2収支を-55kg/㎥~-5kg/㎥(※5)と「マイナス」にできる(普通コンクリートのCO2排出量は250~330kg/㎥)。

3.コンクリート内部の鉄筋腐食を防ぎ、構造物の耐久性を維持

回収したCO2を製造時に直接コンクリートに吸収させないため、強アルカリ性を保持でき、コンクリート内部の鉄筋腐食を防ぎ、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を維持する。

T-eConcrete/Carbon-Recycleの切断面(出典:大成建設株式会社)

4.通常設備で製造でき、普通コンクリートと同等の強度と施工性を発揮

特殊な設備を使用することなく、生コン工場の通常設備で製造できる。強度特性(圧縮強度:20~45N/m㎡)や、施工性の指標となる流動性(スランプ15cm、スランプフロー60cm)も普通コンクリートと同等で、これまでに蓄積された設計・施工・施工監理に関する技術と経験を活用できる。

T-eConcrete/Carbon-Recycleの性状(出典:大成建設株式会社)

今後、同社はカーボンリサイクル材料の開発・市販の状況を踏まえ、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を現場打ちコンクリートや二次製品など多様な建設資材に取り入れていくとしている。また、利用者に広く提供できるよう、「T-eConcrete研究会」(※6)とも連携して商品化に向けたさらなる技術開発を進めていく構えだ。

※1:普通セメントの代わりに産業副産物の高炉スラグやフライアッシュなどを混合したコンクリートのこと。従来の普通セメント使用の一般的なコンクリートと比較して、製造過程で発生するCO2排出量を最大80%削減できる
※2:回収したCO2から製造される炭酸カルシウムや、将来的にはコンクリート用砂利・砂の代替となるCO2固定可能な粉砕した廃コンクリートなどの材料。カーボンリサイクル材料としての炭酸カルシウムはまだ流通が始まっていないため、T-eConcrete/Carbon-Recycleには、CO2とカルシウム成分を反応させて製造した炭酸カルシウムを使用している
※3:高炉(溶鉱炉)で銑鉄と同時に生成される産業副産物。ここでは水によって急冷し、乾燥・粉砕した高炉スラグ微粉末を指す
※4:コンクリート中の砂利や砂などの骨材を“接着”する粉体材料で、通常はポルトランドセメントを使用
※5:1kgのCO2を回収して炭酸カルシウムを製造するために、製造設備から0.5kgのCO2が排出されると仮定した場合の試算値
※6:CO2排出量削減への貢献を目的として、大成建設ほか土木・建築資材メーカー8社が参画して活動している環境配慮コンクリートに関する研究会。同研究会を通じて、土木構造物用部材や建築物内外装建材などの多様な商品を開発し、各社製品として外販展開する

【プレスリリース】カーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を開発