アラブ首長国連邦(UAE)の循環型経済評議会は、世界経済フォーラム(WEF)と共同で立ち上げた「スケール360」イニシアチブへの最初の署名者としてのUAEの関与と役割を説明し、優先事項とコミットメントについて議論するための会議を初開催した。
UAEの「スケール360」イニシアチブの最高運営機関である循環型経済評議会には、Alliances for Global Sustainability (AGS)のCEOであるSheikha Shamma bint Sultan bin Khalifa Al Nahyan氏や気候変動・環境大臣であるThani Ahmed Al Zeyoudi博士、AI(人工知能)担当国務大臣であるOmar bin Sultan Al Olama氏、UAEの内閣事務局長であるAbdulla bin Touq氏、また公共および民間部門の上級管理職が参加している。今後四半期ごとに開催される同会議において、IoTやAIといった第4次産業革命(4IR)技術を活用することで、気候変動対策として天然資源の使用量や汚染を減らしながら、循環型経済への移行を促進し、世界規模での協業を実現する手段について協議された。
AGSのCEOであり創設者であるSheikha Shamma bint Sultan bin Khalifa Al Nahyan氏は次のように述べている。
「高度に持続可能な経済に向け、私たちが前進するうえで不可欠な役割を担うUAEの循環型経済評議会に参加できることを心より誇りに思います。スケール360イニシアチブへの参加と、WEFからの永続的な支援を通じ、UAEが世界最高レベルの循環型経済を実現することを目指しています。スケール360への貢献により、UAEは共通の目標に向けて協力し、人材を集め、成功事例を作るためのアプローチを行いながら、世界規模での変化を推し進めていきます。今こそ私たちが無駄を省き、消費を減らし、環境に優しい製品を生産し、リサイクル・アップサイクルをする時です。
資源を最大限に活用し、より健全でレジリエントな世界にするために、循環性を確保することが今まで以上に重要です。GCC(Gulf Cooperation Council、湾岸協力理事会)だけでも、循環型経済の実現により2030年までに1,380億ドルが節約されます。私たちは、アップサイクルされた材料を輸出することによって、国内での価値を生み出す機会をつくる必要があるのです。
循環型経済を後押しする企業が確実に成功できるよう、官民(特に連邦政府)および第三セクターによる、より協調的な取り組みを注視していきます。さらに、循環型経済が繁栄する革新的なエコシステムの強固な基盤として、効力のある政策と規制の枠組みの構築も重要です。
スケール360イニシアチブなどの取り組みを通じて、廃棄物の流れを明確にし測定を強化し、研究機関における協業と、この刺激的で収益性の高い新分野に資金提供するための財政メカニズムの開発を促進できると考えています。
今年は、2つの重要なマイルストーンを達成する必要があります。第1に、循環型経済に関連する国家戦略と政策を策定すること、第2に、UAEが世界における利害関係者と積極的に連携していく世界未来協議会を立ち上げることです」
気候変動・環境担当大臣であるThani bin Ahmed Al Zeyoudi博士は次のように述べる。「スケール360は、UAEの循環型経済への移行を加速し、パンデミックやその他の社会的・環境的・経済的課題への対応において、より大きな回復力を構築するのに役立ちます。
2019年の立ち上げ以降、官民の事業体が電子機器・食品・プラスチックのバリューチェーンの循環型イノベーションを拡大させる点において、大きく前進しました。2021年までに自治体の固形廃棄物の75%の埋立を回避するという目標を達成するため、あらゆる種類の廃棄物の管理方法を規定するわが国初の統合的な廃棄物管理法を施行し、廃棄物発電を導入しました。また、民間部門と協力し、環境に優しい廃棄物管理方法を採用するための重要な対策を講じています」
また、AI担当国務大臣であるOmar Sultan Al Olama氏は、次のように強調する。「UAE政府は、高度な知識と技術に基づいた、より持続可能な経済への移行を実現する新しい方法やイニシアチブを採用することによって、リーダーシップを発揮すべく取り組みを強化しています。WEFとの協業によるスケール360イニシアチブは、4IRの技術を活用することにより、循環型経済の加速を目指し、官民両分野の未来に貢献するでしょう。
UAEは、最新技術とAIによるツールを提供し、高度なインフラを開発することができました。そして、循環型経済を加速させるための国内外での取り組みとイニシアチブのサポートに参加しています。これらが、天然資源の保護を保証し、その持続可能性を確保し、さらなる革新を可能にする生産消費方法を実現することにつながりました。
戦略計画に関するガイダンスを提供・協業を促進するという主要な任務を担う議会は、枠組みを提供し、循環型経済の実現に対する障壁を取り除いていきます。また、UAEビジョン2021およびUAE100周年プラン2071に沿った、経済的および技術的革新のためのグローバルでオープンな研究拠点としてのUAEの立ち位置を再確認しようとしています」
「4IRの技術を通じて、循環型経済の移行を推し進めることは重要なステップです。4IRの技術革新は、デジタル・物理的・生物学的技術を組み合わせることによって循環型経済への移行を加速させる大きな可能性を秘めています。スケール360イニシアチブは、経済・社会・環境分野の成長させる持続可能な社会基盤を作ることにより、政府の戦略的方向性を実践的なイニシアチブへと変えていきます。私たちは、現在および将来の環境と人のウェルビーイングを高める革新的なアプローチを採用し、循環型経済への移行を加速していきます」とUAE内閣事務局長であるAbdulla bin Touq氏は述べている。
会議では、資源管理の新しい方法を模索するため、現在使用されている4IRの技術についても議論された。このような技術は、製品パスポートや原材料のインターネットを利用した製品に紐づけられたデジタルデータや、ブロックチェーンをベースとしたスキームにまで及んでいる。スケール360イニシアチブの実現により、廃棄物の削減と資源のリサイクルを効率的に促進するプラットフォームが形成されるとしている。
【参照記事】UAE’S CIRCULAR ECONOMY COUNCIL HOLDS INAUGURAL MEETING ON “SCALE 360” INITIATIVE