沖縄県産さとうきびの搾りかす(バガス)生地を使ったかりゆしウエアのシェアリングサービスを手掛けるBAGASSE UPCYCLE(本社沖縄県那覇市)を中心とした沖縄県内4社はこのほど、県内を訪れる個人や法人・団体客へバガスをアップサイクルしたかりゆしウエアを貸し出す「アップサイクルかりゆしプロジェクト」を始めると発表した。地域固有の衣服を地域内で循環させることで、大量生産・廃棄による環境負荷が問題視されるファッションの領域でサーキュラーエコノミーを推進するための有効なソリューションとすることを目指す。

アパレルの循環で地域の環境と経済へ貢献

同プロジェクトに参画するのは、県内最大手のかりゆしウェアブランド「MAJUN OKINAWA」を展開する日進商会(沖縄県糸満市)、ウェディングシーンでのかりゆしウエアのシェアリングサービスで県内トップシェアを誇るかりゆしレンタルAnne(沖縄県豊見城市)、未利用資源をアップサイクルし素材開発を行うCurelabo(沖縄県浦添市)を含む4社。Curelaboが提供するバガス生地に、日進商会が持つ余剰在庫の残布を胸元などのアクセントとして施したオリジナルのかりゆしウエアをAnneが制作した。レンタルを繰り返して汚れや破れが生じたウエアについては、最終的には炭にして土壌改良材としてさとうきび畑に戻すことで、地域内での循環を完結させる。

本プロジェクトで制作されたアップサイクルかりゆしウエアとワンピース

また、BAGASSE UPCYCLEが提供するかりゆしウエアにはNFCタグが縫い込まれており、スマートフォンをかざすとプロダクトパスポートの画面に遷移する。ここにはウエアの利用回数や製品寿命、CO2削減量とともに、ウエアのデザイナーに関する情報なども記載しており、製品の環境負荷や地域の文化・芸術に関心を持つユーザーのニーズに応えられる仕組みとなっている。

プロダクトパスポートの画面。左側の+マークを開くと、かりゆしウエアがどのような工程を経て制作されたか紹介されている。

BAGASSE UPCYCLEとCurelaboの経営に携わる小渡晋治氏によると、環境への負荷を減らす目的でウエアをレンタルする個人はまだ少ない一方で、沖縄らしさやイベントなどの統一感を求めるMICE(ミーティング・研修旅行・国際会議・展示会)目的の法人・団体客向けの需要が伸びているという。同プロジェクトでは、個人客向けにAnneのレンタルスキームを通じてウエアの貸し出しを提供し、法人・団体客は、大手旅行代理店や沖縄観光コンベンションビューローを通じて、BAGASSE UPCYCLEがレンタルの提供を進める。同プロジェクトは、2025年1月から本格的にサービス提供を開始する予定。

小渡氏は「県内の他のメーカーも余剰の生地を抱えている可能性があるので、こうした生地をもっと県内で流通させて域内の循環性を高めながら、かりゆしウエア全体としてのサーキュラーエコノミー化に取り組んでいきたい」と述べ、今後の展開を見据えている。地域の環境負荷を減らしながら、地域の服飾文化を盛り上げることで地域の経済価値につなげられるか――。アップサイクルかりゆしプロジェクトは、その試金石となるだろう。

【プレスリリース】アップサイクルかりゆしプロジェクト発足!

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