英国のウェールズ政府は、リサイクル率において世界3位にランク付けされている。このたびトップを目指すべく、名付けて「Beyond Recycling (リサイクルを超えて)」というサーキュラーエコノミー戦略を打ち出した。
現在英国は、新型コロナ、気候変動、および英国離脱という3つの大きな課題に直面しているが、この意欲的な戦略によってサーキュラーエコノミーへの移行を促進することで、ウェールズにおけるグリーンリカバリーを支援していく。同戦略の内容は、全文バーションと要点が書かれた概要バージョンがあり、政府のサイト上でダウンロードできる。
同戦略は主要目標として、リサイクルだけに留まらず、食品の無駄と使い捨て用品を削減し、「修理、再利用、そして廃棄物から何かを作り出す」ことを掲げる。新型コロナからの回復や気候変動への取り組みとこれらの活動の紐付け、コンセプトの説明やロードマップとともに、具体的な政策を盛り込んだ。例えば、ウェールズの年間67億ポンド(約1兆円)の公共投資セクターにおける入札では、低炭素および資源効率の高いプロジェクトが優先的に選ばれるという。
また、ウェールズ政府は昨年、サーキュラーエコノミーへの投資資金を650万ポンドから4300万ポンドへ引き上げた。この資金により、ウェールズ全体で180件のプロジェクトが支援を受けた。それぞれの自治体では、壊れた物品を修理し、余剰食品を必要な場所へ分配し、陶器やプラスチックなどを再活用して家庭用家具を作るなどの活動を行っている。
支援を受けたプロジェクトの一つ「スマイル・プラスチック(SmilePlastics)」は、使用済みプラスチック容器包装をモダンなインテリア家具に変える。昨年、政府とチャリティ団体WRAP(Waste and Recourses Action Programme)は、同プロジェクトに30万ポンドの投資を行い、会社および生産の拡大を行うことで、18の雇用も生み出した。
このほかにサーキュラーエコノミー基金に支援を受けた組織として、チャリティ団体「捨てるのはもったいない(toogoodtowaste)」がある。同団体は既に25年以上、不要品を回収しそれらを安価で再販することで、地元コミュニティの支援を行っている。このほど、基金から36,000ポンドの支援を受け、ショールームの拡大を行ったことで、より多くの品物の扱いが可能となった。
同戦略の公表に際し、環境・エネルギー、農村地域大臣Lesley Griffiths氏は次のようにコメントしている。「Beyond Recycling戦略に掲げた施策に沿って、我々自身で資源管理を行い、新型コロナ、英国離脱および気候変動対策として、グリーンリカバリーへ前進する。同時にこの戦略は、2050年までにカーボンニュートラルを実現するために必要な役割を果たすものでもある」
ウェールズをはじめ、英国では概して伝統的に古いものを好む文化と、ものを捨てず再利用する習慣が根付いている。前述の「捨てるのはもったいない」のようなチャリティ団体は、サーキュラーエコノミーの概念が注目される以前から全国に点在している。資源循環推進におけるリーダーとして役割を果たそうとするのも肯ける。
【プレスリリース】Wales aims to become world number one recycler as it announces Circular Economy strategy
【参考サイト】Waste and Resources Action Programme (WRAP) home page
【参考】Beyond Recycling (概要)
【参考】Beyond Recycling(全文)
藤原 ゆかり
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