運河が張り巡らされ、平らな土地が広がる街、アムステルダム。人よりも自転車のほうが多いと言われており、美しい街のなかを多くの自転車が走り抜けていく光景が日常となっている。

2020年、アムステルダム市はサーキュラーエコノミー戦略を発表した。政策の採択から3年が経ち、街ではサーキュラーエコノミーの実現に向けたさまざまなプロトタイプが、行政、そして市民から生まれている。なぜ、アムステルダムではこうして多くの事例が生まれ、支持されているのだろうか。そして、人々がサーキュラーエコノミーに関心を寄せる背景には何があるのか。

そうした問いを探求するため、IDEAS FOR GOOD/Circular Economy Hub編集部の欧州在住メンバーによる事業チーム「ハーチ欧州」と、サステナブルな旅を届ける株式会社ジャパングレーラインの共催で、サーキュラーエコノミー先端都市と呼ばれるロンドン・パリ・アムステルダムを巡るツアー「Beyond Circularity 2023」を開催した。世界的に注目されている経済・社会概念である「サーキュラーエコノミー」。世界に先駆けてサーキュラーエコノミーの実践を進めてきた欧州では今、どんな議論が繰り広げられているのか──そんな現地のリアルを、五感で体感した8日間の旅だ。本記事は、「Beyond Circularity 2023」のうち、アムステルダムに焦点を当てていく。

ロンドン、パリの視察を終えた最後の目的地アムステルダムでは、クライメートニュートラルに対応した住居が並ぶハウトハーフェン地区や、再利用・アップサイクルされたオフィス家具をレンタル式で管理する企業「Furnify」を訪問したあと、ボートで運河を巡りながらゲーム感覚でごみ拾いを体験。

サステナブルな取り組みを多彩に取り入れたホテルや、建築材のマテリアルパスポートを実装する「Madaster」、サーキュラーエコノミーを導入した建築デザインを手がける「RAU Architects」からも話を聞き、サーキュラーエコノミー実践の足取りを辿った。

本記事では、Beyond Circularity 2023のアムステルダム編の中で編集部が見たものや感じたことを綴っていく。この旅の視点が、みなさんの活動のインスピレーションとなれば幸いだ。

第一部:「日常」の目線からサステナビリティを捉える機会をつくる

移民を受け入れてきた歴史もあり、多様なバックグラウンドを持つ人が暮らすアムステルダム。異なる文化が入り混じっているため、オープンな姿勢で積極的にコミュニケーションをとることで物事を進めようとする人が多い印象を受ける。新しいアイデアもうまく取り入れる姿勢は、サステナビリティの推進にも一役買っているようだ。

新たな居住地区の魅力は、暮らしを選べること「Houthaven」

現在アムステルダムでは、住宅不足が続いている。各地で建設が続くなか、他と少し異なる特徴を持っている地域が「Houthaven(ハウトハーフェン)」だ。ここは、アムステルダム初のクライメートニュートラル地区。エリア内のエネルギーは、近隣にある工業エリアからの排出熱を活用している。2009年に都市計画の一部として始まり、現在2,700戸にまで拡大した。

地区全体が7つの島で構成されており、それぞれが異なるコンセプトを持っている。例えばタティン島と名付けられたエリアは音楽がテーマになっており、窓枠やサッシを白くすることで五線譜を表現したデザインになっている。

五線譜をイメージした建物

購入の形態も多様であり、一部の区画ではディベロッパーだけでなく個人にも土地の購入が許可された。これにより、購入者が自由に建物をデザインすることも可能となったため、建物によって1フロアの高さが異なるなど、住む人の個性が表現されている。

地区内には学校や福祉施設も併設されている。学校はBrede school Houthaven(ブレダ・スクール・ハウトハーフェン)と呼ばれ、アムステルダムの中でも教育の質が高いことで知られる教育機関の系列であり、住居が建つ前からこの学校への入学を目的にハウトハーフェン地区の住居を予約していた人も少なくないという。

ハウトハーフェン地区を案内してくれたボランティアガイドのUteさん

どんなデザインの家に住みたいか、どんな暮らし方をしたいのかなど、生活を楽しむことを中心に捉え、その一部としてサステナビリティを位置づけることでより幅広く人々に支持されているようだ。

旅行先でごみ拾い?観光に環境課題を取り込む方法とは「Plastic Whale」

アムステルダムの象徴的な存在である運河。運河沿いには観光スポットも多く人々で賑わう一方、水面にペットボトルやテイクアウト容器のごみなどが浮いている様子も見られる。

この現状を「楽しく」解決しようと取り組んでいるNGOが、「Plastic Whale(プラスチック・ホエール)」。運河を船で巡りながら、乗客は網を手に「ごみ釣り」をするというアクティビティを提供している。有料でありながらも、観光客に人気がある。

実際に体験してみると、まるで乗客全員で協力して宝さがしをするかのよう。例えば透明のプラスチックは水中で見つけることが難しく、どこにごみがあるのか、お互いに声をかけながら回収した。夢中になって拾っていると、最後にはごみが5袋近くにもなった。こうして集まったごみはリサイクルされ、家具やごみ拾いに使用するボートへと生まれ変わる。

遠くから眺めると気付かない細かいごみも多く見つかる

拾ったごみは船内で分別する。やはりプラスチックごみが多い印象を受ける

参加者からは「もっとたくさんごみを拾いたかった!」「水の中から網でごみを引き上げるのは意外と大変」「思いもよらないごみが見つかるのも面白い」などの声が聞かれた。

運河といえば、ボートやクルーズ船でゆっくりと景色を味わうことが多い。それとまったく異なり、ゲーム感覚でごみを拾いながら運河を巡るという楽しみ方が、観光客が参加したいと思うポイントなのだろうと感じられた。ネガティブな印象を持たれがちな「ごみ」に対して、船で回収するという身近にはない体験を組み合わせることで、新しい価値が生まれているのではないだろうか。

▶参考記事:【欧州CE特集#31】運河でペットボトルを釣り、サーキュラー家具をつくるアムステルダムの「Plastic Whale」

地域住民にとっても居心地の良い空間をつくる「Hotel Jakarta」

アムステルダムで最もサステナブルなホテルのひとつ「Hotel Jakarta(ホテル・ジャカルタ)」。19世紀初頭にはインドネシアからの船がこの地域の港に来ていたことから、インドネシアの首都であるジャカルタがホテルの名前となっている。

ホテル内を案内してくれた、マーケティング担当のPienさん

ホテルのなかは、外にいるかのように太陽が感じられる。天井がガラス窓になっているのだ。この窓には透明の太陽光パネルが設置されており、室温にあわせて自動で窓が開閉する仕組みになっている。あたたかい空気は上にあがるため、天窓を通して自動的に空気の入れ替えが可能。再生可能エネルギーの活用だけでなく、そもそものエネルギー需要の減少にも取り組んでいるのだ。

また、熱エネルギーを貯蔵するシステムを導入しており、地下で蓄えた熱気や冷気を利用して床下を流れる水の温度を管理し、客室の室温調整をおこなっている。温度の調整に多少時間がかかるが、客室内にこの仕組みについて伝えるQRコードを設置し、宿泊客とのコミュニケーションを図っている。

200部屋ある客室のうち、176部屋はモジュール式で作られた。各部屋の大部分がすでに組み立てられた状態で建設場所に持ち込まれ、パーツを組み合わせて完成したのだ。これにより1日で13部屋をつくることができ、3週間という早さで建設された。

ホテル・ジャカルタでは、旅行客だけでなく、地域住民も利用しやすい場になるよう取り組んでいる。1階にあるベーカリーやプール施設は誰でも利用可能だ。

「例えばベーカリーには地域の方が日々訪れていて、作業ができるカフェとしても機能しています。私たちホテル側としても、そうした地域との繋がりを持つことはとても良いことだと捉えています」

ウェルネス施設のみ利用する人がホテルのエントランスを通らなくて済むよう、専用の入り口を設けるなど、できる限り宿泊客以外の人が入りやすくなる工夫が各所に見られる。近隣住民向けのイベントの開催などもしているそう。こうした工夫を通じて観光拠点であるホテルが地域の施設にもなることで、観光客が楽しむだけでなく地域住民にとって暮らしやすい環境を提供しているのだ。

ホテル天井の窓に連なる小さな正方形が太陽光パネル

メニューを決めるのは、今日ここで採れる食材「Restaurant De Kas」

アムステルダムにある温室レストラン「Restaurant De Kas(レストラン・デ・カス)」。このレストランには、メニューが存在しない。『朝に収穫し、午後に皿の上へ』をフィロソフィーとして掲げており、その日に採れる食材に合わせてメニューが決まるからだ。

Restaurant De Kasはアムステルダムとベームスターという近隣の街に畑とグリーンハウスを所有し、300種以上の野菜やハーブ、果物などを栽培。これらは調理直前に収穫され、すぐにキッチンへと運ばれる。まさに採れたての食材であり、究極の産地直送といえるだろう。わざわざ遠くから食材を運ぶ必要もないため、輸送にかかる環境負荷も削減できている。

食事をする席からも、隣接するグリーンハウスの様子が見える。「この野菜は、つい先ほど隣の畑から収穫してきました」という話を聞きながら味わうと、より食材の新鮮さやありがたさが感じられた。

Restaurant De Kasの内部。食事をするエリアも温室と同じ建物になっており、緑豊かな空間

グリーンハウスには多様な種類の野菜やハーブが育てられている。食事だけでなく目で見ても楽しくなるような場所だ

▶参考記事:アムステルダムの「メニューのない」温室レストラン

楽しい。落ち着く。心地よい。その場所や空間、経験を通して人々がどう感じるのかを大事にしたものが、人々に広く支持されているのかもしれない。当たり前のように聞こえるが、そんなポジティブな側面を探求したデザインであるからこそ、サステナビリティの取り組みも多くの人が受け入れやすいのだろう。

第二部:廃棄物も、資源。循環型の実現に必要な「価値」の変化

「サーキュラーエコノミーといえば、アムステルダム」とイメージする人も少なくない。そんな印象が根付いている背景のひとつは、循環型の事業を実践する具体的な事例が豊富にあることだろう。

建材にアイデンティティを与えて循環の仕組みをつくる「Madaster」

Madaster共同創設者のひとり、Pabloさん

建築業界では、サプライチェーンの把握やデジタル化が未だ進んでおらず、廃棄物の排出量がかなり多い分野であるという。実際EU内では、廃棄物のうち3分の1以上を建設および解体事業が占めているようだ。この課題に対し、建築物や建材の価値を再定義し資源の循環を生み出そうとしている企業が「Madaster(マダスター)」だ。

「現在の経済は、資源を採り、作り、捨てるという直線型の仕組みになっている。しかし、今は廃棄物とされるものも本来は素材や資源であるはず。廃棄物にアイデンティティを与えることで、ひとつひとつに価値と役割を見いだせるようになる。そのために、私たち人間がパスポートで身分証明をするように、素材にもパスポートを与えてはどうか」

このように素材の情報を証明する手法は、マテリアルパスポートと呼ばれる。これをもとに、Madasterでは不動産とインフラ事業を対象に建築素材を登録できるクラウドサービス「Register(レジスター)」を開発し提供している。

Registerはクラウド上に空っぽの棚を用意し、顧客である企業はそこにデータを格納する。Madasterは、製造者からの製品情報や法律をもとに、各素材の二酸化炭素排出量、土壌や空気への影響などの情報を追加する。掲載された素材データは追跡可能であるため、顧客である企業が素材を売ったあとでも、その素材がどこにあるかが把握できる仕組みだ。これにより、自社製品の買い取りや回収もおこないやすくなる。

Madasterは建物や建築素材のデータを格納する場所を提供し、素材や関連する法律の情報を追加するのみ。Registerは新しいサービスではなく、今までの仕組みを調整し、情報を整理するためのものだという。

格納されたデータをどのように使うかは、顧客次第。企業にとっては、Registerによって情報を公開することが、事業の透明性を担保することにつながる。同様の情報公開をおこなっていない企業と比較した際、どちらがより透明性が高いかを判断する場面でも活用されるだろう。

ESG投資などの加速から企業が持つべき責任のあり方が問われるなかで、ものやサービスそのものだけでなく、どのような素材を使ってつくられたのかという背景が重視されるようになっている。これに対しMadasterは、素材の価値と役割を見いだす立場を担っている。企業が循環型に移行するための後押しをすることが、企業にとっても社会にとってもより良い方向に進みつつあるようだ。

建材の循環を具現化することで協働を生む「RAU Architects」

RAU ArchitectsのErikさん

「廃棄物は、価値を与えられていない素材だ」

モノに価値やアイデンティティがないとごみになってしまうが、ごみとされているものに価値やアイデンティティを見いだすことができたら、それは貴重な素材となる。昨今、資源の枯渇が進むにつれて素材はますます希少になり、その価値は上昇している。

この現状から「RAU Architects(ラウ・アーキテクツ)」が提案するのが、「Building as Material(素材の倉庫としての建物)」という考え方だ。建物に使用される素材は、一度使ったら廃棄物になるわけではない。あくまでも建物は素材が組み立てられたものであり、その建材は繰り返し何度も使えるのだ。

このアイデアに基づいてRAU Architectsがデザインした建物のひとつが、Toriodos Bank(トリオドス・バンク)のオフィスだ。このオフィスは、オランダ・ザイストにあるDe Reehorst(ドゥ・リーホースト)という地域に建設された。ここは人の手が入らないことで治安の悪化も懸念されていたため、不動産を管理する責任者を設けることで状況を改善する取り組みがはじまり、その一つがオフィスの建設であった。

RAU Architectsのチームは、景観から自然と続くような建物内部になるよう、これらを統合することから着手。これは、自然・経済・文化が平等であるべき、という考えに基づいているという。

「経済とエコロジーは同じであるべきです。Toriodos Bankのオフィスの屋根には小さな木々が植えてあり、生物多様性の改善に貢献するだけでなく虫や動物たちの住処にもなります。水辺を設置したエリアには、鹿が水を飲みに来ることもあります。これこそが、建物によってその場所を改善するというアイデアの全貌なのです」

建設にあたっては、建物が周囲の木よりも高くなってはいけないという制約が設けられた。そして、自然界には完全な直線が存在しないことから、建物は曲線を描くモチーフが採用された。また、建設予定地の生物の生息状況のレポートから生物が生息していることが分かったため、建物の規模を小さくする必要があったという。

こうした規則を守ったうえで、建物の基盤であるコンクリ―ト部分を除いて、ほとんどが木材を用いてつくられた。木材同士の接着には、165,312個のネジを使用。接着剤を使用していないため、ネジを外せば再び使うことができる。つまり建設現場は、建築工事というよりも木材の組み立て場に近くなり、建設期間を短縮することが可能だ。

RAU Architectsが設計を手がけたトリオドス・バンクのオフィス

木材には、クロス・ラミネイテッド・ティンバーという、木材の繊維が互い違いになるように接着した木材が採用されている。これが内装に活用されていることで、建物のメイン構造は二日で完成させることができたそうだ。また、これらは近隣で伐採された木材であり、建設地で伐採されたものではない。木材を建築に利用するには、数年かけて完全に乾燥させる必要があるためだ。

エレベーターが稼働するための縦の空間にも、木材が使用された。この部分には鉄筋コンクリートが使用されることが通常であったが、なんとか各パーツを木材でつくることに成功した。木材でつくる可能性を示すことができて、やっと説得することができ実現に至ったそうだ。

火災法に関する規制があるため、建物のすべてをバイオ素材でつくることはできない。こうした規制が耐久性を落としてしまうこともあるという。そのため、建築や木材それぞれの専門家と協力してアイデアを練ることが重要である。

アムステルダムでは、このように木材を多用した建築物はあまり馴染みがないという。そんな新たな試みにおいて、事業をはじめる際には建設に関わる全員に納得してもらうことが重要であり、長い時間をかけて対話を重ねたという。同様に、知識を共有することも欠かせない。トリオドス・バンクの事例では、実際に建設を担う人々と一緒に建設予定地を歩きながら、建物の完成イメージを書き、ビジョンが共有された。こうすることで、同じマインドセットを持ってプロジェクトに取り組むことができるのだ。

「マインドの変化が最も大事だ。マインドを変えることができれば、他のどんな変化も起こすことができる」

事業がいかに優れているかも重要であるが、事業にかかわる人と目的やビジョンを共有し、同じ目標に向かって共に取り組む環境を整えることが、新たな挑戦に踏み出す基盤となるのかもしれない。

第三部:サーキュラーエコノミーの先駆けとなったアムステルダムの「現在地」

2020年にサーキュラーエコノミー戦略を発表したアムステルダム。さまざまな企業が資源を循環型で活用しようとする姿勢が見られる一方、地域全体としての仕組み作りは進んでいるのだろうか。

企業とデザイナーを繋ぎ、オフィス家具の循環を支える「Furnify」

FurnifyのJaninaさん

「Furnify(ファニファイ)」はオフィスにおけるカーペットや家具といったインテリアをレンタル式で管理する事業をおこなう企業だ。

クライアントである企業からオフィスの変更などにより家具を変えたいと要望があった際に、Furnifyは家具を引き取ったのち、デザイナーに依頼して新たな家具に作りかえて提供したり、他のオフィスで不要になった家具を再利用として提供したりする。企業とデザイナーを繋ぐ立場を担い、再利用・修理・改修・目的の変更などを通して家具をより長く使うことができるよう、サポートする役割を担っているのだ。

また、空間の有効活用に対してもコンサルティングをおこなっている。近年耳にするマルチユースという言葉。ひとつの建物や部屋を、さまざまな目的で使用することができることを指す。

例えば、FurnifyのオフィスでもあるDB55という建物も複合型施設であり、複数の企業が同時に利用している。主にオフィスとして使われている一方、空間の広さを調節することが可能なため、イベント会場やレストラン、ヨガ教室としても使用されている。既存の空間を最大限に活用することで、新たな建物をたてる需要を減らすことにも繋がる。

施設内には、ひとりひとりが落ち着く環境で仕事ができるよう、カーテンで個室にもできるソファ席に加えて、さまざまな大きさや形のアップサイクルされた椅子が並び、利用者向けのカフェも併設されている。

この建物自体も、使われなくなった車庫を再利用している。フローリングの代わりに電車の床材を使用したり、ソファの代わりに電車の座席が活用されたりと、廃棄予定だった素材の新たな姿がいたるところで見られる。

こうように企業による資源の活用が推進されつつあるのも、政府が出したサーキュラーエコノミー戦略が後押しになっているという。企業に対してアクションを促すには、政府による進むべき道を提示が少なからず影響をもたらしているようだ。

Furnifyもオフィスとして利用する複合型施設DB55の内部。写真中央部分が線路の枕木を使用した部分だ

循環する事業ではなく地域を創る「Circular Economy Club Amsterdam」

ツアーの締めとなったのは、「Circular Economy Club Amsterdam(サーキュラーエコノミークラブ・アムステルダム)」主催のネットワーキングイベント。この組織の立ち上げ人である、FurnifyのJaninaさんが中心となり開催された。

サーキュラーエコノミーに関わる行政および企業が参加。企業からは、代替レザーを手がける会社や、サーキュラーエコノミーのコンサルティング会社などさまざまな分野から関係者が集まった。事業紹介のプレゼンテーションを経て、個々にディスカッションをするなど新たな繋がりを築く場となった。

サーキュラーエコノミーというキーワードだけでもこのように多様な事例が見られることから、すでに多くの企業がこのトピックに関心を持っていると感じられた。しかし、個別の事業では資源循環を生み出す動きが見られた一方、地域や産業全体でのシステムとして循環を生み出す点にはまだ踏み込めていない印象だ。その企業間の繋がりづくりに挑むのがCircular Economy Club Amsterdamのような存在であり、まさに今、点と点を結ぶ必要性が見えてきているのかもしれない。

編集後記:新しい経済システムを築く、対話型の意思決定

暮らしのなかから人々を巻き込み、価値を再定義しビジョンを共有することで事業を進め、その経験や知識を共有する。アムステルダムが経験した過程から学べることは、サーキュラーエコノミーの実現は単に資源が循環するシステムをつくるということではなく、人と人が向き合って対話を重ね、協働できる場をつくるということ。そのためには時間と忍耐も必要なようだ。

資源が枯渇しているという現状を理解し、いますでにある資源を、まずは無駄なく大切に使い続ける。「もったいない」という言葉を持つ日本でも、日本の文化や考え方に合ったサーキュラーエコノミーを実現する道筋があるのではないだろうか。

ツアー参加者からの声でも、「各施設や機関の訪問後、何が日本と違うのかを議論できた点」が印象に残ったこととしてあがっていた。このツアーに参加してくださった方々、そしてこの記事を読んでくださった方々の、“自分にとって”の理想の世界や、目指したい社会のあり方の解像度が、ほんの少しでも上がっていたら嬉しい。

【参照サイト】Brede school Houthaven | ESPERO
【参照サイト】Triodos Bank / RAU
【参照サイト】Construction and demolition waste|European Commission

Photo by Masato Sezawa

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※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。