Sponsored by 駐日オランダ王国大使館
2024年3月6日、東京・駐日オランダ王国大使館(以下、オランダ大使館)を会場に、循環型のまちづくりをテーマとする日蘭交流イベント「循環する未来を築く『しげんバンク』」が開催された。
当日は、オランダ大使館主催のもとで2023年6月に開催されたオランダ視察ツアーの参加者によるラウンドテーブル(意見交換)を実施。また、オランダ・ Madaster社のパブロ・ヴァンデンボッシュ氏もオンラインで参加し、資源フローではなくストックに着目した「ストック型循環」の実現に向けた建築・まちづくりにおける取り組みの現状と可能性、課題について議論した。本記事では、レポート前半に続き、当日の様子をレポートする。
▶前編はこちら
目次
プログラムは、オランダ王国大使館公使参事官のピーター・テルプストラ氏による挨拶で幕を開けた。
ピーター氏「資源の枯渇や気候変動といった世界的な課題に立ち向かう上で、サーキュラーエコノミーは重要な概念であると考えています。オランダは、最も早く『2050年のサーキュラーエコノミー達成』という野心的な目標を掲げた国のひとつです。この達成に向けては、オランダ政府だけではなく、様々な企業・団体との協働が欠かせませんし、トップダウンやボトムアップなど、多角的なアプローチが求められています。本日の交流会は、まさにこの多様なコラボレーションによる挑戦のための取り組みです」
Part1:オランダ視察ツアーの振り返りと現況の共有
登壇者(順不同)
- 中台澄之氏(株式会社ナカダイ 代表取締役)
- 祐川幸子氏(株式会社新東通信 CIRCULAR DESIGN STUDIO.)
- 河内幾帆氏(金沢大学 融合学域 准教授)
- 南雲岳彦氏(一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事)
- 坂野晶氏(一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン 代表理事)
- 田中浩也氏(慶應義塾大学SFC 環境情報学部教授)
- 横溝成人氏(大成建設株式会社 設計本部 先端デザイン部部長)
- 加藤佑氏(ハーチ株式会社 代表取締役)
2023年のオランダ視察ツアーから1年間が経過した今、改めて参加者がツアーで学んだことを振り返り、その学びを活かすためのパネルディスカッションが行われた。以下に、各登壇者による共有の内容を紹介する。
中台氏「これまで日本にオランダは比べてリサイクルや分別の取り組みが遅れているという印象を持っていました。しかし、現地を視察して比較してみると、一概にオランダのほうが取り組みが進んでいるというわけではなく、日本も十分に高い技術を持っていることに気づきました。他方で、オランダでは廃棄物処理と生活をウェルビーイングの文脈で結びつけることで取り組みを充実させているところは、オランダの優れている点だと感じます」
祐川氏「私は愛知県蒲郡市や長野県白馬村でサーキュラーエコノミーを実装するためのお手伝いをしています。特に、地域づくりに企業を巻き込むことが役割です。オランダの現地視察では、インキュベーションセンターBlueCityをはじめ、『魅せる』ことを前提とした施設づくりが行われていることを知りました。特定の地域や業界の中にとどまらず、性別や年齢を問わず多様な人々を巻き込んでコミュニティ作りをしているところも特徴的でした」
河内氏「私は消費者の行動や意識変容に働きかけるような環境教育プログラム開発に取り組んでいます。オランダでは、社会を変えるためのトップダウン式のシステム作りが骨太であることを学びました。他方で、見上げると美しい建物が並んでいる街中でも、視線を落とすとポイ捨てされたごみが散見され、それが近くの運河に流出していることも分かりました。ボトムアップの観点で比較すると、日本人は街を綺麗に保とうという意識が高く、消費者視点での意識変容は日本の強みとなる可能性を再認識できました」
南雲氏「オランダは、マンゴーの皮で革細工を作ったり、排泄物を堆肥化してお茶を育てたり、海藻を使って建材を作ったりと、生々しく刺激的なアイデアに溢れていることを感じました。また、オランダは幸福度ランキングでも世界で5番目を記録しており、イノベーションやサーキュラー、サステナブルの項目でも高順位をマークしていますので、我々が取り入れるべきことが多くあるのではないでしょうか。日本人の生真面目なところとは異なる奇想天外な発想を、オランダに学ぶことができたらと思っています」
坂野氏「ゼロ・ウェイスト・ジャパンでは、自治体と共にごみの減量や資源循環の政策立案、実装に取り組んでいます。今回の視察でも、どのように方針を立て、それを実現していくのかに強い関心がありました。オランダでは、例えば道端に衣類の回収ボックスを置いて簡単に分別回収ができるようになっています。しかし、回収、再資源化後の再流通や再利用については課題を抱えているようです。とはいうものの、課題解決に向けたアクションを起こすまでのスピーディーさや好奇心の高さはオランダの良さだと考えます。取り組みの継続には難しさもありますが、成果が現れるのを楽しみに進捗を追っていきたいです」
田中氏「オランダでの視察を通じて感じたことは、彼らが合理性を軸に物事を捉えているということです。『ごみ』はいらないものであり非効率的な産物ですから、その非効率を避けるために、彼らの中でサーキュラーエコノミーが必要性を帯びるのだと思います。他方で、採算が合っていないとか、果たして環境のためになっているのか分からないとか、答えの分からない課題に対しては一定のユーモアや余白を持って機敏に動き出しています。こうした合理性とユーモアのバランスをとりながら進んでいくオランダのやり方を、日本らしい循環型のまちづくりにも取り入れられないかと考えています」
横溝氏「オランダ視察ツアーは、日本から多様なバックグランドのメンバーが参加しており、視察先以外の移動中にも様々な学び合いが実現できました。特に印象的だったのは、現地のチョコレートメーカー『トニーズチョコロンリー』発展のストーリーです。元々テレビで活躍していたジャーナリストが起業したスタートアップが、今や国内で最も人気のチョコレートメーカーになっています。オランダにはこのように、世の中をより良くする取り組みを社会全体で育てていく風土があることを知りました。大成建設では、オランダでの学びを日本に展開していく取り組みを始めました。後ほどご紹介します」
加藤氏「昨年のオランダ視察ツアーでは、ジェンダーや年齢など参加者の多様性にも配慮されていました。資源循環とは、誰かにとって価値がないものを価値を感じる他の誰かに受け渡すことでもあります。そのためには異なる価値観が混ざり合うことが必要です。その意味で、今回の視察ツアーのような『旅』は、サーキュラーエコノミー実現に向けた価値観の交差点として重要な役割を担うと考えています。日蘭それぞれの良さや課題を相対的に可視化することで得られる気づきがありますので、今日のように、多様な人々が交わる場は循環経済への移行において重要ではないでしょうか」
Part2:日本における「しげんバンク」の可能性
登壇者(順不同)
- ロバート・ダイスターハウス氏(オランダ内務・王国関係者 サステナブルビルディング特使)
- 田中浩也氏(慶應義塾大学SFC 環境情報学部教授)
- パブロ・ヴァンデンボッシュ氏(Madaster社 ディレクター)
- 古市理氏(大成建設株式会社 設計本部 先端デザイン部 先端デザイン室室長)
- 南雲岳彦氏(一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事)
後半は、サーキュラーエコノミー実現に向けた日蘭の協働事例として、建築資材の循環を目指す「しげんバンク」の取り組みの紹介が行われた。
本セッション開催にあたり、オランダ内務・王国関係省サステイナブルビルディング特使・ロバート・ダイスターハウス氏が、建築資材の利活用の課題や今後の展望についてのビデオレターを寄せた。
ロバート氏「新しい建物に使用される新しい資材だけに注目していては不十分です。既存の建物と資材の存続期間を延ばすことも重要です。平均的な建物は100年存続可能であるにも関わらず、なぜ20・30年ごとに取り壊す必要があるのでしょうか?建築物が存続期間に排出する炭素排出量全体を考えると、取り壊して新しく建てるより、リノベーションの方が排出量を抑えられます」
「もしも取り壊す理由があるならば、その建材は解体して分解して廃棄物とするのではなく、新しい建物で再利用し再生を目指すべきです。そこで、再利用を促進するための鍵となるのはデータです。どこにどんな資源があるのか情報を把握し、蓄積することにより、建造物は都市鉱山になり、原材料の保存庫となります。現在オランダの政策では、データそのものというより、データとデータの交換がサーキュラー建築、再利用、補修管理につながる可能性に注目しています。本日の議論が、オランダと日本が共に解決策を模索していく新しい一歩となることを願っております」
資源のストック型循環を描く「しげんバンク」とは
はじめに、慶應義塾大学SFCの田中氏が、「しげんバンク」の概念について説明を行った。
資源の有効活用を考えるとき、そこにはフロー(流動)とストック(蓄積)という二つの概念が存在する。例えば資源循環のフローに着目したマテリアル・フロー分析では、イベントなど特定のシステムに対してどのような資源やエネルギーがインプットされ、どのような廃棄物や汚染がアウトプットされるのかを可視化する。また、インプットのうちどの程度が循環・再生型の資源で、アウトプットのうちどれだけがリユースやリサイクルなども含めた循環・再生フローに戻っていくのかを特定した上で、サーキュラリティ(循環率)を定義する形となる。
一方で、このインプットまたはアウトプットのうちどれだけが循環・再生型になっているかという循環率の指標には、インプットからアウトプットにかかるまでの時間は反映できない。しかし、特に建築資材などのように長期利用を前提とする領域の循環を考えるうえでは、循環のサイクルが一巡するまでの時間をできる限り伸ばし、可能な限りインプット量を減らすことが重要となる。一度システムにインプットした資源をストック(蓄積)し、そこからできる限り長く、多くの価値を引き出していく。これが「ストック」の考え方で、循環経済においてはマテリアル・フローだけではなくマテリアル・ストックの視点も重要となる。
「しげんバンク」とは、後者の「ストック型循環」実現に向けた取り組みのことを指し、小学生が教科書で読んでも理解できるような親しみやすい表現として、田中氏が提唱する概念である。
田中氏「あるひとつの建物だけを見ても、様々な材料が使われています。100年経って建物が寿命を迎えたとき、果たしてそこにある建材に需要はあるのでしょうか。資源としての価値に変化はあるのでしょうか。それは、そのとき発生する材料ごとの重さや量によって異なりますし、材質によってはまだ寿命が残っているものもあるかもしれません」
「また、資源の蓄積(ストック)のあり方を考えるときには、すでに発生することが決まっている、不要または余剰の資源をどう扱うかにとどまらず、そもそも資源の寿命を引き延ばすための工夫も必要です。『しげんバンク』では、現状よりも資源の寿命が延びたとき、それをどのように計量し、管理し、そして再利用するのかというところまで見通しています」
ストック型循環の実現に向けては、建造物や製品が寿命を迎えたときに、資源ごとに解体し、パーツ化して再利用できるようなデザインの採用が求められている。田中氏はこのように循環を前提とした設計が施された建築を「サーキュラーネイティブ建築」と定義した。
さらに、資源を手放したいと思っている人と手に入れたいと思っている人が、適切なタイミングでマッチングされる必要もある。今どこにどれだけの資源がストックされているのか、それはいつ寿命を迎えるのか、といった情報を集約し、オープンソース化することが重要だ。
田中氏「具体的なアクションとして民主化と合理化の二つが求められていると考えます。民主化とはすなわちストーリー化のことで、生活者が資源循環への参画をジブンゴトとして捉えられるような親しみのあるストーリーテリングです。合理化とはすなわち数値化のことで、ストック資源のデータ集約し公開することで、効率的な循環を促すことです」
田中氏は終わりに、具体的な行動事例として、これからご紹介する、オランダ・Madaster社と大成建設との協働による新たなプロジェクトを挙げた。
建築分野における脱炭素実現を目指す。オランダ発のプラットフォーム「Madaster」
続いて、オランダでストック資源のデータ化に取り組むMadaster社のディレクターパブロ・ヴァンデンボッシュ氏が中継を繋ぎ、オンラインにて講演を行なった。
Madaster(マダスター)は、「マテリアル・パスポート」と呼ばれる、建材として使われる素材の特性や調達源、環境負荷などを記録したデータをクラウド上に集積し、建築家や専門家、建設企業などに提供しているプラットフォームだ。登録されているデータは資源にとって「パスポート」のような役割を果たし、それがどんな性質を持つ素材で、どこでどのように利用されてきたのかという履歴も把握できるため、建造物の解体時などに使用されていた建材の再利用の促進につなげることができる。
パブロ氏「Madasterは、データとテクノロジーが生きるネットゼロ社会実現への貢献を目指しています。これまでに7つの国でシステムの導入やその検討が始まっており、行政から民間まで1,000を超えるクライアントとともにデータ集積を行っています。面積に換算すると、25平方キロメートル(※)分に相当するデータが集まっています」
※25平方キロメートル=東京ドームおよそ535個分相当
「課題を解決するためには、まずは課題の全容を理解する必要があります。続いて、速度感を持って取り組みをスケールアップしなくてはなりません。刻一刻とその深刻度を増す気候危機へ立ち向かうために、我々がアクセスできる技術や知識を素早く集め、効率的に活用していくことが求められます」
Madasterのプラットフォームにおいて特に重要視しているのは、データの透明性だという。
パブロ氏「データが収集できても、それが中身のわからないブラックボックスでは意味がありません。世界のどこからでもアクセスできて、分かりやすいデータであるべきです」
現状の利用シーンについて、パブロ氏は次のように解説した。
パブロ氏「土地の開発企業(デベロッパー)は、長寿命で質の高い建物を作りたいという想いを持っています。また、投資家はコンプライアンスレポートを通じて企業の社会的責任を測っていますので、生産に関わる企業は、コスト面はもちろんカーボンフットプリントに対する配慮を示すために、Madasterのシステムを活用しています」
一般消費者や建物の利用者に向けてのブランディング構築にも活用されているというMadasterのプラットフォーム。他方、データの有効利用においては経済合理性における課題があるという。
パブロ氏「再生資源やリサイクル資材を購入するよりも、一次資源を購入した方が安く済ませられるのが現状です。しかし一次資源の使用を継続することは、”今”我々のお財布には優しくても、”未来の”地球や社会にとって良い影響は及ぼしません。マテリアルパスポートを持った建材がより使いやすくなるため、ひいてはカーボンフリー(ネットゼロ)の実現のために、この仕組みを変えなくてはなりません」
終わりに、パブロ氏はこれから始まる日蘭協働の展望として、地域ごとに異なる条件への適応に触れた。
「グローバルな展開を加速させるためには、ローカルなマーケットの状況や法規制に対応していくことが必要です。例えば日本は、オランダと違い地震が多いため、それによって素材の寿命や質が変化する可能性があります。こういったローカルな課題にも対応するプラットフォームを構築し情報の質を高めるとともに、日本語機能の追加等使いやすいシステムへのアップデートを進めたいと考えています」
「ゼロカーボンビル」の実現に向けた日蘭協働の最前線
続いて、国内で脱炭素と資源循環による「ゼロカーボンビル」の実現を目指す大成建設・設計本部の古市理氏が、Madasterの国内導入に関する紹介を行った。
古市氏「大成建設は2023年10月、オランダのMadaster社を訪問し、その仕組みを日本に導入できないかと相談しました。早速意気投合し、2週間ごとにオンラインでレクチャーを受けながら、日本の市場や環境条件に合わせたシステムの構築に取り組んできました」
Madasterのプラットフォームを用いた「しげんバンク」の実装を模索している大成建設。古市氏は、建材のストック型循環の実現に向けたオリジナルシステムが持つ機能について解説を続ける。
古市氏「鍵となるのは、建材の各パーツの分解可能性と再装着性です。システム上では、それらを数値化するとともに、Madasterが取り入れているサーキュラリティも数値化しています。3Dイメージを用いてCO2の排出量を部分ごとに可視化する機能も備わっています」
Madasterではデータを入力すると瞬時にダッシュボード上にその数値が表示されるようになっている。建材の製造、施工、修繕、解体におけるCO2排出量にあたる「エンボディドカーボン(Embodied Carbon)」の値も算出し、ライフサイクル全体における地球温暖化係数も見える化されている。
古市氏「Madasterのシステム導入による大きな特徴は、資源のもつ経済性の転換です。建物の価値は一般的に時間が経つと減価償却によって目減りしていくものですが、Madasterのシステムにおけるストック型循環の概念では、リサイクル可能な資源を所持しているという点で、貯蔵量が増えればその分価値も高まります」
大成建設では、建物のライフサイクルCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素化計画(ゼロカーボンビル)を建てている。
古市氏「BIMデータを活用し、CO2排出量を建物のパーツごとに色分けします。これにより、建物のどこの部分が、あるいはどんな部材が環境負荷につながっているのかが分かるようになります。加えて、調達、施工、運用レベルでのCO2削減の方法を独自に編み出すことで、目標達成に向けて必要なアクションを具体化します」
古市氏は、「今後は、建築業界においてサーキュラーなマネジメントは当たり前になるだろう」と結び、Madasterのシステムに学ぶ日本版プラットフォーム構築に向けた前向きな姿勢を見せた。
循環性と経済性は両立するのか。日本らしい捉え方を考察する
プログラムの最後に、田中氏、パブロ氏、古市氏に、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事の南雲岳彦氏も交えたクロストークが行われた。
議論の軸となったのは、資源循環の指標である「サーキュラリティ」と経済合理性との両立の可能性だ。ストック型の循環において重要なのは、資源のリサイクル率、長寿命化、分解可能性の3要素だ。しかし、ひとつの資源が長く使えれば使えるほど、経済的な循環は停滞してしまう。
南雲氏「オランダの人々のモチベーションにあるのは、短期的な経済性の確保ではなく、次世代以降のウェルビーイングの向上ではないでしょうか。その前提に立つと、動機づけの出発点は未来の世代にどんな社会を残したいのかというビジョンです。その理想を達成するためには、今何をしなくてはいけないのか。そのようにバックキャスティングして考えることで、相反する二つの概念をどう両立させるべきかという問いへの答えが見えてくるかもしれません」
田中氏「建築に関して言えば、これまで我々は十数年程度の期間しか考慮していませんでした。しかし、社会の持続可能性の課題に直面すると、50年、100年、あるいは1,000年という単位で寿命を考えなくてはなりません。そこで、日本らしい考え方として、例えば神社やお寺を長期間にわたって保護・活用してきた価値観が役に立つと思うのです。その概念を建築全体にも流用すれば、自分が死んだ後も建造物や建材が次世代でどう活用されていきたいかというビジョンを起点とする考え方がしっくりくると考えます」
古市氏「デジタル技術を活用すれば、物質的に出来上がってない建物をバーチャルで可視化したり、サーキュラリティや環境負荷を見える化したりすることができます。デジタルソリューションによって、生活者にも資源循環を身近に感じてもらい、それに参加できるようになると良いのではないでしょうか」
パブロ氏「本日の議論を通じて可視化されたのは、今データが必要とされていること、我々の社会には確かに資源のストックが存在していることです。このような気づきを得るための洞察力を持つことが、取り組みの第一歩となるかもしれません。加えて、卓上で理論的な議論するだけではなく、実際に行動を起こすことも重要です。実用的な経験を通じて学んでいくという方法は新しい形かもしれませんが、その実践がより良い未来を作っていくはずです」
終わりに、オランダ王国大使館公使参事官のピーター・テルプストラ氏が次のように述べ、本交流会は幕を閉じた。
ピーター氏「議論の結論を、すぐに見出すことは難しいでしょう。それだけ充実した内容であったと思います。最後に、本日の交流会の初めに述べた、サーキュラーエコノミー実現の緊急性を再度強調して起きたいと思います。2023年、地球の平均気温は観測史上過去最高を記録しました。2024年には、その記録を上回るかもしれません。ですから、皆が協力して課題について議論し、解決策を見出し、行動しなくてはなりません。本日の交流会によって人々がつながることで、各人が持っているアイデアを具体化し、一人ひとりが自分にできることを発見できることを願っています」
Madasterの協力による「しげんバンク」や「Vortex Economy®︎」の取り組みは、まだ始まったばかりだ。社会実験と実装を経て、日常においてストック型の資源循環を感じることができる日を見据えて、IDEAS FOR GOODでは今後も、日蘭協働によるサーキュラーエコノミー推進の辿る道を追う。
【参照サイト】地域幸福度(Well-Being)指標 (Liveable Well-Being City指標®)
【参照記事】新しい資源循環を実現したまち「Vortex City」のHP公開を開始
【参照サイト】JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点
【関連記事】持続可能な未来への移行をどうデザインする?アアルト大学・イディル教授に聞く
【関連記事】循環経済への移行に向けて日本とオランダが学び合えること。日蘭交流プログラムレポート
【関連記事】【アムステルダム視察レポ】サーキュラーエコノミー先進都市を支える「システム」を問う(Beyond Circularity 2023)
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。