京都市を拠点にゼロ・ウェイストモデルを展開する株式会社斗々屋が、フランチャイズ(FC)モデルによる事業展開を開始した。このほど実施されたモデルお披露目会の様子をレポートする。

サーキュラーエコノミーを生活レベルで実践する手段として、量り売りを主軸とした小売モデルへの期待は高い。国内でも小規模な店舗やネットワークは現れつつあるが、大規模な普及にはハードルが多い。消費者の手間、運営者の労力、衛生管理、コスト面などだ。これらを支援する政策環境も未だ成熟していない。

斗々屋が構築するのは、消費者意識に依存しない「仕組み」だ。同社代表取締役の梅田温子氏は「とにかく利便性を崩さない」と話す。同社は京都の実店舗を通じ、計量技術のシステム化や食品ロスを抑止するオペレーションを確立。基盤にあるのは、「通い箱」活用などによる流通のゼロ・ウェイスト化や最適な地域での調達先だ。ゼロ・ウェイスト小売のパイオニアとして、既存の小売システムを循環型に再構築してきた。今回のFC化は、これら一連のノウハウを全国へ水平展開するためのパッケージである。

リデュースが前提

今回の取り組みには明確な背景がある。同社は「地球1個分の暮らし」を実現するため、経済成長と環境負荷のスパイラルを断ち切ることを目指している。その方策の一つにゼロ・ウェイスト小売モデルがあるが、これを大規模に普及させる必要がある。そこで、選んだのがフランチャイズ方式。実店舗で積み上げたノウハウをもとに、地域に即した形で日本各地にゼロ・ウェイストを根付かせるねらいだ。

梅田氏は「リサイクルには限界があり、リデュースこそがサーキュラーエコノミーの本質」と言い切る。グローバル企業の例を挙げ、移行しなければ生き残れないと認識する企業が増えていることを指摘し、「サーキュラーエコノミーはコストではなく投資」であることを強調した。

「農場から小売までの食品ロス抑止」と「持続可能な農業の普及」

規格外野菜などを優先的に使用した加工品(写真:斗々屋)

斗々屋では、有機・無農薬栽培の生産者からどうしても出てしまう規格外野菜や果物を積極的に買い取っている。これらをそのまま販売するほか、ピューレなどの加工品にも転換する。

「味は同じ。『可愛い形をしているのでぜひ買ってください』と。これは消費者に対する教育にもなっていて、斗々屋にもしまっすぐなキュウリが並んでたら、お客様は逆に『大丈夫?』と思われるかもしれない」と梅田氏は笑いながら話す。

店舗では、販売期限が迫った食材や端材を、併設キッチンで即座に惣菜やスープへ加工する。それでも余剰が出れば瓶詰めにする。こうして約700品目の商品を一切捨てずに使い切る。昔からある知恵を現代のゼロ・ウェイスト小売という枠組みで実現した形だ。

「有機農家の暮らしを守り、価値をつけ、それを生産者に返す。こうした取り組みなしには持続可能な農業は広がらない」という梅田氏の想いがある。

食品ロスゼロを実現するだけでなく、加工を通じて価値を付加し、収益につなげる。その先にあるのが持続可能な農業の発展だ。

サーキュラーエコノミーの原則の一つに「自然の再生」がある。斗々屋は小売りという立場から明快にこの原則に沿った事業活動をする。

一連の取り組みは、個人の行動変容のみならず、食のサプライチェーン全体を循環型へ変えていく「文化変容」への挑戦でもある。

量り売りを標準化する技術:寺岡精工との提携

寺岡精工開発のセルフ量り売りシステム

量り売り普及の壁の一つに不便さがある。梅田氏は消費者に負担を強いるモデルは広がらないと認識し、不便さの解消を条件に挙げる。手間とコストを乗り越えるために消費者意識は重要だが、これに頼るばかりではサーキュラーエコノミーは実現できない。

そこで計量器大手の株式会社寺岡精工と提携し、技術面からもアプローチする。同社の亀山哲氏は「量り売り=面倒というイメージがあった」と話すが、これを解消すべく以下のような技術を開発している。

  • RFIDによる自動容器重量(風袋)引き: 容器に貼りつけたRFIDタグから重量を読み取り自動で風袋引きを行い、純重量を自動確定。セルフ計量でありながら、既存スーパーと遜色ない購買スピードを実現している。
  • AIカメラによる商品識別: スケールに置いた商品(青果物)をAIが即座に判別。消費者がリストから検索する手間を簡素化。
  • POSシステムによる顧客情報管理: デポジット容器とデポジット容器を利用する顧客情報を管理する日本初の計量POSシステム。

クローズドな環境であるオフィスでの先行実装

純粋な小売店に加え、「オフィス斗々屋」としての職場展開も加速している。従業員にゼロ・ウェイストを体感してもらうサービスだ。

企業にとっては、クローズドな環境でパッケージ量を減らすことができる。リユース瓶活用による廃棄削減量・CO₂削減量を算出し、満足度を把握するなど定性・定量データを導入企業に共有する。

こうした直接的な環境負荷削減だけではない。従業員にゼロ・ウェイストを体感してもらうことで、業務でサーキュラービジネスを発想するための支援策となる。「パッケージレス商品を一年間使ってみると、パッケージの無駄に気づくようになる。このような感覚を持つことで自然に行動変容につなげ、意識の改革を促す」と梅田氏は話す。

店舗でもオフィスでも、FCモデルでゼロ・ウェイスト小売を水平展開

これまで述べてきた取り組みをパッケージ化し、加速度的にゼロ・ウェイストモデルを広げたいという意向を反映したのが今回のFCモデルだ。FCモデルの対象として、既存店導入型・地域拠点型(小売店・ミニカフェなど)・オフィス型(企業・福利厚生)を想定している。パッケージは全国一律ではなく、それぞれの地域に合った形で提供するという。なお、本部とオーナーは対等なパートナーとして関係をつくっていくという。

既存店舗は急に量り売りに転換するのは難しい。そのため、まずは「棚2つ」からの開始も可能だとして導入ハードルを下げる。導入店舗にとってはごみ削減だけでなく、新たな顧客開拓の可能性も生まれる。

大企業では、オフィス斗々屋の拡大版としてFC展開も想定している。これは投資家等への外部コミュニケーションに活用できるメリットもある。

ゼロ・ウェイスト小売普及環境整備のモデルケースに

欧州では政策による量り売りモデルの普及支援が進む。先頭を走るフランスの気候変動対策・レジリエンス強化法では、2030年までに400平方メートル以上のスーパーマーケットの売場面積20%以上を量り売りにすることを義務付けている。

日本における環境は、既存の法制度が量り売りを想定していないことがあるなど、未成熟だといえる。もちろん、日本では品質衛生基準の高さや生産者責任の考え方、気候条件など、欧州とは異なる環境がある。

それでも斗々屋は、日本に適した製品や条件などの最適解を提示しようとしている。日本の今後のゼロ・ウェイスト環境整備に向けたモデルケースになるのではないだろうか。

意識に頼らない仕組みの構築。システムチェンジへの道筋

斗々屋のフランチャイズモデルは、ゼロ・ウェイスト小売を通じた「システムチェンジ」への挑戦だ。言い換えれば、意識に頼らない仕組みの構築を意味する。改善してきた計量技術で運用コストを下げ、加工でロスを利益に変え、規制への適合を容易にする。現に、斗々屋の粗利益率は40%を超えている。

展開の先には、ユーザーへの直接的な経済還元も見える。英国の調査では、リフィル形式で販売される商品価格は、従来の包装済み商品と比較して平均10〜15%安価に設定されているケースも報告されている。英小売Waitrose(ウェイトローズ)では、顧客のメイン動線に量り売りエリアを配置し、認知度と利便性を高めている。物価高局面の今、モデルがスケール化するほど、アクセシビリティも高まる。

斗々屋でも、比較対象商品が少ないため単純比較は難しいが、量り売りによって包装関連コストを削減できるため、小売価格が従来商品と比べて低く設定できている商品もあるという。さらに、消費者は必要な分量だけ購入できるため、購入量を適正化することで割安感を得ているようだ。

梅田氏は最後にこう締めくくる。 「私たちの取り組みは、あらゆる分野の企業へサーキュラーエコノミーへの移行をサポートすることです。多様なサービスを揃え、誰もが一緒に進めていける流れを作っていきたい。できることから共に進めていけたらと思います」

【参考】

※冒頭画像は斗々屋提供。その他記載がない場合、筆者撮影