環境省は6月20日、「リユース等の促進に関するロードマップの方向性」を公表した。これは、拡大するリユース市場のさらなる発展と質の向上を目指し、消費者、事業者、自治体それぞれの取組を促進するための政策の骨子を示すものだ。同省は今後、この方向性に基づき議論を深め、2025年度中に正式なロードマップを策定する計画だ。

公表された資料によると、日本のリユース市場規模は2023年時点で約3.1兆円に達し、2030年には約4兆円に成長すると予測されている。一方で、環境省が2024年度に実施した消費者アンケートでは、過去1年間に中古品を購入した経験がない人が71.2%に上ることが明らかになった。市場の成長とは裏腹に、多くの消費者にとってリユースがまだ身近な選択肢になっていない現状が、今回の政策立案の背景にある。

このロードマップの方向性は、政府が「成長戦略フォローアップ」で掲げる「循環経済関連ビジネスの市場規模を2030年までに80兆円に拡大する」という目標達成に向けた具体策の一環と位置づけられる。また、2023年12月に閣議決定された「循環経済への移行加速化パッケージ」で示された、リユースビジネス支援や自治体との協働取組の倍増といった目標とも連動している。

今回示された方向性は、以下の4つの柱で構成される。

1.消費者のリユース取組の促進

消費者にリユースのメリットや多様な回収・買取方法が十分に認知されていない課題に対応する。具体的には、「リユース月間」の設定や集中的なキャンペーンの実施、小中学生などを対象とした環境教育を推進する。また、先進的な取組を行う「リユース先行自治体(仮称)」を選定・支援し、その成功事例やノウハウを全国に横展開する。さらに、自治体や事業者の取組を見える化するポータルサイトの立ち上げも検討する。

2.リユース市場の拡大に向けた需要創出

リユース市場の裾野を広げるため、新たなビジネスモデルの創出を支援する。シェアリング、リペア(修理)、リファービッシュ(再生品)といった、製品の長期利用に繋がる事業のモデル事業を展開する。また、大きな購買力を持つ国や自治体による需要を創出するため、公共調達の指針であるグリーン購入法の基本方針を見直し、リユース品の調達基準を拡充することを検討する。

3.リユース事業の信頼性の向上

消費者が安心してリユースサービスを利用できる市場環境を整備する。国として初めてリユース事業者の取組を評価する「優良事業者ガイドライン」を策定し、オンラインプラットフォーム事業者などと連携して優良な事業者を支援する。一方で、無許可で廃棄物を回収するような不適正事業者に対しては、自治体向けのセミナー開催などを通じて指導を支援し、市場の信頼性を高める。

4.リユース促進に向けた基盤づくり

リユースがもたらす環境面での効果を可視化する。リユースによる温室効果ガス(GHG)排出削減効果の算定事例集を作成し、事業者が活用しやすい基準を整備する。また、リユース品の国内外での取り扱いに関する課題を整理するため、2027年までの2年間で重点的な調査を実施し、消費者向けの手引き策定など必要な措置を講じる。

環境省は今後、具体的な数値目標や指標を検討する「指標・目標に関するWG(ワーキンググループ)」を設置し、2025年11月頃に開催予定の第2回検討会でロードマップの素案を提示する。その後、さらなる議論を経て、2025年度中の正式なロードマップ策定を目指す。

【プレスリリース】リユース等の促進に関するロードマップの方向性の公表について
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