株式会社田中貴金属グループは7月31日、貴金属回収プロセスにおける二酸化炭素(CO2)排出削減と有機物の再資源化を目指し、株式会社JEPLANと事業提携すると発表した。貴金属リサイクルを手がける田中貴金属と、プラスチックのケミカルリサイクル技術を持つJEPLANが協力し、脱炭素と資源循環の両立を目指す。
田中貴金属は1885年の創業以来、希少な資源である貴金属のリサイクルに取り組んできた。顧客から回収する工程廃棄物のうち、貴金属が付着したプラスチックなどの有機物については、従来、焼成処理によって有機物を除去し、残った灰から貴金属を回収していた。この方法は貴金属の回収には有効である一方、有機物を燃焼させる過程で発生するCO2の削減が課題となっていた。
今回の事業提携により、田中貴金属は従来の焼成処理に加え、JEPLANのケミカルリサイクル技術を活用した新たなプロセスを将来的に導入することを検討する。JEPLANは、使用済みペットボトルなどを分子レベルまで分解し、再重合することで石油由来の原料と同等の品質の素材を製造する「ケミカルリサイクル」の独自技術を確立している。
新プロセスでは、シリンジやウエスといった貴金属が付着したプラスチック廃棄物をケミカルリサイクル技術で処理する。これにより、貴金属を回収すると同時に、これまで焼却されていたプラスチックも再生原料として再資源化が可能になる。田中貴金属グループによると、対象となる貴金属回収プロセスにおけるCO2排出量は従来の10%程度に抑えられる見込みだ。
この取り組みは、金属リサイクルとプラスチックリサイクルという異なる専門領域の技術を組み合わせることで、これまで両立が難しかった環境負荷低減と資源循環の高度化を実現する構想だ。両社はそれぞれの専門性を活かし、脱炭素・循環型社会の実現に貢献していく。
【プレスリリース】田中貴金属グループ、脱炭素・循環型社会実現に向けてJEPLANとの事業提携を発表
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