英国のシンクタンク・チャタムハウス(王立国際問題研究所)はこのほど、公正で包括的かつ循環的な社会の促進につながる包括的な循環型貿易の枠組みを示した論文「Trade for an inclusive circular economy ~A framework for collective action」を発表した。現代の生産・消費、自由貿易システムでは先進国が途上国に比べて多くの利益を享受する一方で、途上国に行きつく低価値または違法な廃棄物が適切に管理されないことによる環境・社会的リスクが顕著になってきている。本論文は、こうした不均衡が是正されないままサーキュラーエコノミーへの移行を行えば国際間格差を一段と拡大させることになると警告。公正で包括的かつ循環的な社会の実現を可能にする包摂的な循環型貿易の枠組みの提示を試みている。

なぜインクルーシブなサーキュラーエコノミーが求められるのか?

国際貿易は、サーキュラーエコノミーへのグローバルかつ包括的な移行を実現する重要な要素である。しかし、循環型商品・サービスや原材料の貿易を促進するための現在の貿易政策は、多くの障壁によって制約を受けている。循環型貿易の社会的、経済的、環境的可能性を実現するには、これらの障壁を克服するための統合的かつ協調的なアプローチが必要となる。

本枠組みの目的は、必要な経済的繁栄と人間と環境のウェルビーイングの達成に貢献するサーキュラーエコノミーの可能性を制限する、より困難な課題を解決することではない。真に持続可能であるためには、高所得国の政策立案者たちは循環型貿易が消費関連の環境への影響をプラネタリーバウンダリー内に留め置き、低中所得国が市民に不可欠な商品とサービスを提供するために成長する余地を精査する必要があるとしている。

本論文で提示された包摂的な循環型貿易の枠組みは、貿易および貿易関連のサーキュラーエコノミーと開発政策、慣行、協定のすべてが包括的なサーキュラーエコノミーの共通の目標に向けて確実に機能するように設計されており、多国間、地域、二国間レベルでの新しい形の調整が必要になるとしている。その上で、貿易、サーキュラーエコノミー、持続可能性、および開発政策の分野を橋渡しする試みだとして、貿易および貿易関連のサーキュラーエコノミーおよび開発政策の設計方法、ならびに既存の貿易および環境規制または条約の評価方法の変更を促進することを目指すとした。

本枠組みの主な対象者は、政府、政策立案者、貿易、サーキュラーエコノミー、持続可能性に焦点を当てた国際フォーラムなど。さらに、環境、サーキュラーエコノミー、国際開発に焦点を当てた企業、学界、NGO など、政策設計に影響を与える幅広いコミュニティとなる。その上で▼多国間の環境交渉と議論▼国内のサーキュラーエコノミー基準、政策、規制またはロードマップの開発▼環境、国際開発および外国投資に関連する貿易政策の立案▼民間企業および NGO による使用――を想定している。

本枠組みは、包摂的なサーキュラーエコノミーのための貿易に関連するSDGsターゲット、および必要とされる行動計画と行動原則をまとめたものだ。サーキュラーエコノミーへの世界的な移行は幅広い SDGs に貢献するが、循環型貿易は4つの SDGsゴール (8、10、12、17) へ特に貢献することを約束している形となっている。

英チャタムハウスが公表した、包摂的なサーキュラーエコノミーのための貿易に向けた行動枠組みの概念図。最下段の4つの行動の原則に基づき、中段の集合的な行動と解決策を取ることでSDGs 8、10、12、および 17 を中心に貢献できると主張している。集合的な行動の領域については、対象を絞った集団行動が目標の結果に向けて大きな利益をもたらす貿易システム内の戦略的領域を特定している。(「Trade for an inclusive circular economy ~A framework for collective action」より抜粋)

循環型貿易が貢献できる4つのSDGsゴールとは?

では、各SDGsゴールはどのような包摂的な循環型貿易を推進することで達成させるのだろうか。順に見ていきたい。

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