株式会社アストロスケールは2025年9月1日、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)との間で、協力衛星を対象とした宇宙空間における燃料補給技術の委託研究契約を正式に締結した。これは、内閣府主導で創設されJSTが推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称、K Program)」において、「複数軌道・電気推進への拡張性、国際市場を意図した国産の化学燃料補給技術開発」の研究開発をアストロスケールが正式に受注したものだ。アストロスケールは2025年1月に本件に採択されていた。
本研究開発では、アストロスケールがこれまで培ってきたRPOD(ランデブ・近傍運用・ドッキング)技術を土台に、ロボティクス技術、コンピュータビジョン技術、燃料移送技術を組み合わせて低軌道での化学燃料補給実証を行う。さらに、さまざまな推進剤にかかる地上検証等により、静止軌道や電気推進の燃料補給への拡張性も視野に入れた研究開発を実施する。研究開発期間の目安は5年程度で、予算総額は最大108億円(税別)だ。
実証用に開発する衛星の名称は「REFLEX-J(リフレックスジェイ)」に決定した。「REFLEX-J」は「Refueling for Extension and Flexibility-Japan」の略称であり、「REFLEX」という名称には「柔軟性の向上」という意味が込められている。衛星の寿命を延長し、衛星利用の柔軟性を拡張する技術の実証衛星として、REFLEX-Jは宇宙インフラの新たなスタンダードを築くことを目指す。本実証は、2029年頃の実施を見込んでいる。
アストロスケールの代表取締役社長である加藤英毅は、地球周回軌道が衛星やスペースデブリの増加により混雑化が加速しており、このままでは長期的に軌道を利用することが困難になると指摘した。この問題解決と宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)を実現するためには、使い捨てを前提とした衛星やロケット開発から脱却し、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Repair(修理)、Refuel(燃料補給)、Remove(除去)といった循環型経済を宇宙空間で実現することが重要であり、そのソリューションが軌道上サービスだと述べている。軌道上サービスの一つである燃料補給サービスは、衛星運用者にとって、衛星の寿命を延長することで衛星機数や打上げ回数を低減すること、そして衛星の小型化や低コスト化のような経済的利益にもつながる。また、燃料の制約を取り払うことで衛星のミッションの範囲や柔軟性を拡大し、新たな衛星運用の可能性を切り拓くものだ。
【プレスリリース】アストロスケール、科学技術振興機構より人工衛星への燃料補給技術の研究開発を受注
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