出光興産株式会社と出光アメリカズホールディングス(以下、IAH)は2023年6月、スタートアップの加Anaconda Systemsと共同で有機廃棄物を原料とした堆肥製造の事業化検討を開始した。

日本国内で排出される生ごみなどの食品廃棄物、動物・植物性残さ、動物のふん尿などの有機廃棄物を10日以内に堆肥化する技術を活用し、大規模かつコスト競争力に優れた廃棄物処理・堆肥製造を目指す。Anaconda Systemsが有する好気性発酵技術を用いて、自然発酵に最適な環境を維持し、エネルギー消費を最小限に抑えて堆肥化できるとしている。

同事業の特徴は、「高効率製造により、大規模な国産堆肥製造が可能なこと」「廃棄物の最適処理・資源循環により、エネルギー利用の効率性向上とコスト削減を実現すること」「地域に根差した低炭素化社会を実現すること」であると出光興産は発表している。

3社が事業化検討にいたった背景は、有機廃棄物の資源循環策の需要と有機農業の拡大への期待の高まりだ。現在、低炭素社会実現に向けた食品・農業分野の取り組みとして、食品残さ・汚泥からの肥料化成分の回収・堆肥化や、バイオ炭の製造と散布による二酸化炭素貯留など、さまざまな資源循環策が展開・検討されている。有機農業の拡大も期待されているなか、化学肥料原料を多く輸入している日本では、化学肥料の原料コスト高騰が食料生産に大きな影響を及ぼし、低炭素社会の実現と食料生産の安定性において国産有機肥料の増産が求められていると出光興産はみている。

堆肥製造事業の資源循環イメージ(出典:出光興産株式会社)

今後、3社は自治体やパートナー企業と共同で堆肥化事業の実用化検討を進め、約200~300トン/日の有機廃棄物を処理して堆肥を製造する初期プラントを2020年代後半に建設する計画だ。3社の取り組みが、有機廃棄物の地産地消および持続的な食料システム構築に寄与していくことが期待される。

なお、食料安定供給および持続的な食料システム構築を目指し、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を2021年に策定した。戦略では、2050年までに化学肥料の使用量を30%削減すること、2050年までに耕地面積に占める有機農業の面積を25%に拡大することなどを目標として掲げている。

【プレスリリース】有機廃棄物を原料とする堆肥製造事業の検討開始について ~カナダのスタートアップ企業と協働し、日本国内において2020年代後半の初期プラント建設を目指します~
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