丸紅株式会社はこのほど、一般社団法人日本クルベジ協会(以下、日本クルべジ協会)からバイオ炭(※)の農地施用による日本初のJ-クレジットの独占販売代理権を取得した。

日本クルベジ協会の「クルベジ」という名前は、「COOL(地球を冷やす)VEGE(野菜を)TABLE(食卓で)」の略で、田舎(農家)と都会(消費者)をつなぐ架け橋として活動している。同協会は、里山の森林整備・生態系サービスと農地の保全・有機栽培という循環の仕組みを構築するべく、里山の森林保全活動で出る間伐材や竹で炭を作り、畑に有機肥料として埋めて炭素固定し、野菜を育てる活動を展開している。加えて、若手農家の支援や里山・畑・街の人が集う場としての交流会なども開催している。

植物が吸収したCO2は廃棄・分解時に排出されるが、バイオマスを加熱(炭化)して作られる固形物であるバイオ炭は、炭化を使用して固定すると大気中への排出を抑えられる。2020年9月、日本政府はバイオ炭の農地炭素埋設をJ-クレジット制度の方法論として認め、2022年6月にはJ-クレジット制度認証委員会がバイオ炭を農地に撒いた際の排出削減量を認証した。

今後、丸紅株式会社は日本クルべジ協会と共同で同クレジットを販売していく。多くの農業生産者は、農林業などで発生する地域の間伐材をはじめとする未利用バイオマスを熱分解し土壌改良材として施用することで、同クレジットを利用できる。同時に、丸紅株式会社は自社が販売する循環型食器「edish」に同クレジットを活用し、調達・製造工程でのCO2排出量をゼロにした「edishカーボンニュートラル」の販売を2022年8月以降に開始する予定だ。

日本クルべジ協会の活動は、2019年に開催された第8回G20首席農業研究者会議(G20MACS)でバイオ炭による炭素貯留効果の例として報告された。農林水産省が同年11月に開催した国際ワークショップでは、G20メンバーなどの関心国・国際機関の研究者が、日本クルべジ協会の生産現場を視察した。

丸紅株式会社は中期経営戦略「GC2024」において、既存の事業基盤とネットワークの活用・全社横断的な取り組みの推進による「新たなグリーン事業の創出」を掲げている。今後、丸紅株式会社は同クレジットの販売・未利用バイオマス(竹材や食品残さなど)の有効利用・バイオ炭施用農地で作られた環境保全農作物の販売などを通じて、地域のサーキュラーエコノミー移行を目指していきたい考えだ。

里山は、2019年に大阪で開催されたG20サミットの夕食会のコンセプト「持続可能性と美食」としても紹介された。日本が培ってきた豊かな里山・自然・農耕文化・人との関わり方の循環を目指す日本クルベジ協会の試みが、丸紅株式会社との協働によって促進されていくことが期待される。

※ バイオ炭:燃焼しない水準に管理された酸素濃度のもと、350℃以上でバイオマスを加熱して作られる。土壌への炭素貯留効果とともに土壌の透水性を改善する効果が認められている土壌改良資材(引用:2019年改良IPCCガイドライン)

【プレスリリース】日本初、バイオ炭の農地施用によるJ-クレジットの販売について~循環型食器「edish」にも活用~
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*冒頭の画像の出典:丸紅株式会社