旭化成株式会社(以下、旭化成)はこのほど、デジタルプラットフォーム構築プロジェクト「BLUE Plastics(ブルー・プラスチックス)」において開発した消費者向けアプリケーションのプロトタイプを用いた実証実験の結果を発表した。
再生プラスチックの資源循環を可視化するプラットフォームの開発を目指し、旭化成は2021年5月に同プロジェクトを発足させた。資源循環社会を実現するためには、再生プラスチックのリサイクルチェーンの情報をブロックチェーン上で可視化し、消費者が安心して再生プラスチックを利用できる環境を整えることが必要であるとして、同プラットフォームの開発を進めている。「リサイクル社会実装基盤の確立」「消費者を巻き込んだ文化醸成」「リサイクル素材利用促進」を目標とする同プロジェクトには、日本アイ・ビー・エム株式会社、ライオン株式会社、メビウスパッケージング株式会社、株式会社富山環境整備が参加している。
同プラットフォームの価値を検証し、コンセプト開発と資源循環社会実現に向けた施策を検討するべく実施した実証実験では、消費者の意識・行動の変容に対する有効性を調査した。プロトタイプには、消費者のリサイクル意識を高め行動を促すことを目的として、再生プラスチックを用いた製品の来歴情報を表示する機能や、消費者自身のリサイクル活動を記録する機能を搭載した。
実証実験の概要と結果は、以下のとおり。
概要
- 実施期間:2021年10月~12月
- 対象者・実施方法:首都圏在住で、スマートフォンを日常的に利用し、ごみの分別廃棄を自ら実施している20~60代の218名が、アプリケーションのプロトタイプを1カ月間利用した
- 分析・検証方法:期間中に参加者に実施したWEBアンケート調査とインタビューの回答をもとに、アプリケーション機能が参加者のリサイクルに対する意識・行動に及ぼす影響・効果を分析・検証した
結果
- 環境貢献活動に関する消費者の興味・関心と行動には相関がみられたが、興味・関心のスコアが行動のスコアを上回り、「興味はあるが行動に移せていない」という傾向がある
- 使用済みプラスチック関連の環境問題への興味・関心は高いが、84%の参加者が再生プラスチックについて十分理解していない
- 再生プラスチック製品のリサイクル率や来歴の透明性は、「消費者の意識変容」に影響を及ぼしており、消費者が商品を安心して購入する際の基準の一つになりうる
- アプリケーションを利用した消費者自身のリサイクル活動の記録・可視化が、「消費者の意識・行動変容」に影響を及ぼす
今回の実証で得られた知見をもとに、旭化成は参加企業と連携して、実証実験の規模・製品や素材の種類を拡大させ、再生プラスチックの利活用促進と同プロジェクトの早期社会実装に向けて取り組んでいく意向だ。今回、良好な実証実験結果が得られた同プラットフォームの開発が進められ、消費者のリサイクル意識が向上し行動が促進されていくことが期待される。
なお、旭化成は2021年10月、サーキュラーエコノミーに関する情報・課題の共有の場として「BLUE Plastics Salon」を立ち上げた。現在約30の企業や団体が入会し、定期的に会合を開催している同サロンは、参画企業・団体を募集中。サロン内でもデジタルプラットフォームを活用した共創の取り組みを実施していくとしている。
【プレスリリース】BLUE Plasticsプロジェクトにおける実証実験の結果報告
【参照サイト】BLUE Plastics Salon
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*記事中の画像の出典:旭化成株式会社