旭化成株式会社(以下、旭化成)は、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の技術支援を受けた「BLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)」プロジェクトを発足させ、2022年3月末までにプロトタイプを用いた実証実験を開始することを発表した。SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとするサステナビリティへの取り組みの一環として、資源循環社会の実現に向けたデジタルプラットフォームの構築を目指す。

同プロジェクト発足の背景は以下である。使用済みプラスチックの資源循環推進や再生プラスチックの利活用が進む一方、再生プラスチックを利用した製品のリサイクルチェーンや原料のリサイクル比率を証明することはこれまで困難であったと旭化成はみている。同社は、再生プラスチックのリサイクルチェーンを可視化することで、安心して再生プラスチックを利用できる環境を整えることが必要だと考え、リサイクルチェーンに関わるさまざまな企業から消費者まで幅広く使える横断的デジタルプラットフォームの開発を目指してきたとしている。

BLUE Plasticsプロジェクトの概要

同プロジェクトの概要は以下のとおりだ。

  • 一般家庭などから廃棄・回収される容器・包装プラスチックを再生した原料(ポリエチレンを想定)を使用したトイレタリーボトルへの取り組みから開始する
  • すでに完成しているプロトタイプにリサイクルチェーンへの参加企業の意見を反映して改良し、2022年3月末までに再生プラスチックを試験的に流通させてブロックチェーン上で管理する実証実験を実施する
  • 将来、デジタルプラットフォームで運用する樹脂の種類や用途を拡大し、同業他社問わず誰もが活用できるオープンなデジタルプラットフォームとして公開して、日本だけでなくアジアへの展開も見据えて取り組んでいく

「プロトタイプ」消費者向けアプリケーション(出典:旭化成株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社)

同プロジェクトではIBM Cloud上で稼働するブロックチェーン技術を活用して、日本IBMがデジタルプラットフォームを開発する。ブロックチェーン技術は、全履歴を連続的に記録する「不可逆」なデータベース技術で、関係者全員がアクセスできるがデータは改ざんできないため、トレーサビリティが確保されるのが特徴だ。同プロジェクトは、参加企業が以下のように役割を分担して共同実施される。

  • 旭化成:プロジェクト推進
  • 日本IBM:デジタルプラットフォーム開発支援
  • ライオン株式会社:ブランドオーナーの立場から開発協力
  • メビウスパッケージング株式会社:成型加工メーカーの立場から開発協力
  • 株式会社富山環境整備 :リサイクルメーカーの立場から開発協力

プロトタイプの特徴

すでにデジタルプラットフォームのプロトタイプが完成している。プロトタイプは、下記3つの特徴を有する。

  1. ブロックチェーンによる認証でリサイクル証明を確保:日本IBMのブロックチェーン技術を応用し、再生プラスチックのリサイクル率を証明する。消費者はスマートフォンのカメラで再生プラスチック製品に貼付されたQRコードなどを読み取ることで、再生プラスチックのリサイクル率を確認できる
  2. リサイクルチェーンの可視化により消費者の安心感を醸成:上記同様に製品のQRコードなどを読み取ることでリサイクルチェーンと関連業者を確認できる。データはブロックチェーンで管理されているため、透明性が確保され消費者の安心感を醸成する
  3. 消費者のリサイクル行動の変容を促す仕組みづくり:リサイクル行動に特典を付すことで、消費者の行動変容を促す。実証実験や社会実装を通じてさらに効果的な仕組みづくりに努め、新たなリサイクル文化の創造を目指す

旭化成は今後もプラスチックリサイクルに対し、3R(Reduce・Reuse・Recycle)とRenewable(再生可能)を柱とした取り組みを追求していく意向だ。上流・下流のリサイクル関連企業を含め、同様の問題認識を持つ企業・業界団体・官公庁との協業も視野に入れて取り組んでいくとしている。日本IBMと旭化成は、同プロジェクトを通じてリサイクル率・リサイクルチェーンの可視化と消費者行動の変容を促すデジタルプラットフォームを確立し、プラスチック資源循環を推進していく構えだ。

【プレスリリース】旭化成、プラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」を日本IBMと開始〜資源循環社会の実現に向け、企業と消費者が活用可能なデジタルプラットフォームを構築〜
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※冒頭の画像は「BLUE Plastics」プロジェクトにおけるプラスチック資源循環のイメージ(出典:旭化成株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社)