気候変動対策に取り組む世界97都市(※)で構成されるC40(世界大都市気候先導グループ)はこのほど、2億人以上が住む54都市の気候行動計画を分析し、これらの都市の計画が気候危機に対処しており、パリ協定の1.5℃目標を達成する軌道上にあると発表した。
分析では、以下の14都市の包括的な新計画についても評価が行われた。
ブエノスアイレス(アルゼンチン)、クリチバ・リオデジャネイロ・サルヴァドール・サンパウロ(ブラジル)、ダカール(セネガル)、グアダラハラとメキシコシティ(メキシコ)、ヨハネスブルグ(南アフリカ)、メデジン(コロンビア)、ミラノ(イタリア)、モントリオール・バンクーバー(カナダ)、リスボン(ポルトガル)
これらの都市の気候行動計画を完全に実施した場合、居住者の保護・雇用の創出・不平等への対処・世界の気候危機への取り組みにつながることがデータから確認された。また、世界を牽引するこれらの都市の努力により、2020年から2030年の間に最低19億トンの温室効果ガス排出を回避できることが示された。これは、EU加盟27カ国の年間排出量の半分に相当する。
同分析は、2020年12月11日にパリのアンヌ・イダルゴ市長が主催したパリ協定採択5周年を記念するイベントで、C40の事務局長であるマーク・ワッツ氏が発表した。C40が評価した気候行動計画の詳細は、以下のとおりだ。
- メキシコ・メキシコシティ:2024年までに100km以上の公共交通機関と4つの新しいケーブルカーの路線を開通させ、低所得地域に不可欠なサービスへのより良いアクセスを提供する
- セネガル・ダカール:都市計画に気候リスクを含めることで、洪水対策を改善して市民と生活を保護する
- ブラジル・サンパウロ:地元食材と有機食品の生産にインセンティブを付与して優先的に扱い、居住者が手頃な価格で高品質な食品を入手できるようにする
- 南アフリカ・ヨハネスブルグ:2030年までに、すべての新しい公共および民間の建築物をCO2排出実質ゼロで稼働させ、何百もの雇用を創出する
- アルゼンチン・ブエノスアイレス:2025年までに10万本を植林し、空気浄化に役立てる
- イタリア・ミラノ:2021年末までに自転車および歩行者用に100kmの街路空間を再配分し、コロナ禍からのグリーンで公正な復興を実現する
- ポルトガル・リスボン:2030年までに太陽エネルギーの生産量を50倍にして、エネルギー移行がエネルギー貧困を終わらせ、全市民に利益をもたらすことを保証する
C40は2016年にDeadline2020プログラムを開始し、世界中の都市と協力して、パリ協定の目標と一致した行動を実現する気候計画を開発および実施している。これは、気候変動の影響に適応し、社会環境的および経済的利益をもたらす統合的・包括的な計画だ。この取り組みは、英政府と独連邦環境・自然保護・原子力安全省、デンマーク外務省、子ども投資基金財団の支援により実現した。
なお、同プログラムでレビューされた以下32都市が、パリ協定の目標と一致する科学的根拠に基づく気候行動計画を策定しているとした。
- アルゼンチン:ブエノスアイレス
- オーストラリア:メルボルン
- ブラジル:クリチバ、リオデジャネイロ、サルヴァドール、サンパウロ
- カナダ:モントリオール、バンクーバー
- コロンビア:メデジン
- デンマーク:コペンハーゲン
- フランス:パリ
- ガーナ:アクラ
- イタリア:ミラノ
- メキシコ:グアダラハラ、メキシコシティ
- オランダ:アムステルダム、ロッテルダム
- ノルウェー:オスロ
- ポルトガル:リスボン
- セネガル:ダカール
- 南アフリカ:ダーバン、ヨハネスブルグ
- スペイン:バルセロナ
- スウェーデン:ストックホルム
- イギリス:ロンドン
- アメリカ:ボストン、ヒューストン、ロサンゼルス、ニューヨーク、ポートランド、シアトル、ワシントンD.C.
C40議長でロサンゼルス市長であるエリック・ガーセッティ氏は、「当分析は、私たちが長い間知っていたことが真実であることを裏付けています。都市は、パリ協定の目標を達成し、科学的根拠に基づいた戦略を立て、最も脆弱な住民を保護し、すべての人に役立つグリーン経済を実現するために、役割を果たし続けます」と述べている。
※:C40より(2020年12月28日現在)
【プレスリリース】New Analysis Shows World’s Major Cities on Track to Keep Global Heating to 1.5°C
【参照サイト】C40 CITIES