ドイツのプラスチック企業DOMO ChemicalsCovestroは、オランダのスタートアップCirculariseと共同で、ブロックチェーン技術を活用してプラスチックを追跡し、サーキュラーエコノミーを押し進めるプラットフォームのパイロット版の運用を開始した。3社は2019年10月に初めて協業を開始し、アメリカ・ラスベガスで年に一回開催される世界最大のデジタル技術見本市「CES 2020」で一般に公開した。

このプラットフォームはプラスチック資源に紐づく情報を電子化し、エンドツーエンドで追跡と証明を可能にする。プラスチックの生産から成形業者、OEM、ブランドオーナーに届くまでの追跡を目的とする。

まず初めに、プラスチック樹脂の証明書と監査報告書がブロックチェーンによって記録される。製品が成形される次の段階では、どのような添加剤が使用されているかを追跡し、「材料リスト」が追加される。そして最後に、ブランドの所有者は製品に使用されている製造プラスチックがどこから来てどのような経路を辿ってきたかを証明することができるようになる。QR・RFID・NFC・化学トレーサー・DNA などの識別子を使用することで、サプライチェーン全体を通してプラスチックの追跡を可能にした。

DOMO Chemicalsはナイロン(ポリアミド)サプライヤー企業で、Convestro Polycarbonatesは年間146億ユーロ(約1兆7,000万円)の売上を上げる世界最大規模のポリマー資源の製造メーカーだ。この2社がオランダのデン・ハーグに本社を構えるスタートアップ企業Circulariseとコンソーシアムを作り、Circularise PLASTICS Initiativeを発足した。

Circulariseはブロックチェーン技術を活用し、サーキュラーエコノミーを実現するためプラスチック業界を含むパートナーと透明性・コミュニケーション機能を高めることを目指す。同社の提供するブロックチェーン技術はZero Knowledge Proofsという機能を用いており、サプライチェーンにおける立ち位置やデータ、身元情報を明かすことなく必要な情報だけをやり取りすることを可能にする。例えば、特定の製品に水銀が含まれている可能性があるかどうかをサプライチェーンのすべてのサプライヤーに開示させることなく知らせることができる。

Covestro Polycarbonatesの戦略・サステナビリティ・デジタル部門責任者のBurkhard Zimmermann氏は次のように述べる。「OEMやブランドオーナーは、製品の出所を明らかにし、環境への影響を透明化することで、サステナビリティ目標を達成し、ブランドポジションを強化することができるでしょう」

Circulariseは、これまでにドイツ本社の化学メーカー大手BASFとアメリカ本社のホームセンター大手のスタンレー・ブラック&デッカーが公募したCircular Challengeというアクセラレータ・プログラムに100社の競合の中から選ばれ、ブロックチェーンによるプラスチック追跡ソリューションを提供してきた。2020年初頭には、BASFがこのブロックチェーン技術を活用したサーキュラー・プラスチック・プロジェクト「reciChain」の試験運用を開始している。

プラスチック製造に関わる1社だけでなく、業界最大手企業らが連携し、新たな基準を作っていくことは非常に大きな躍進力を持つ。業界全体の連携と有用なテクノロジーの活用がプラスチックのサーキュラー化を迅速に押し進めていくだろう。

【参考記事】Circularise, Covestro and Domo showcasing plastics traceability solution at CES 2020