地球環境が許容できる範囲の中でバランスを保ちながら、人々の社会や経済ニーズを満たすことを求めるドーナツ経済学。このドーナツ経済学を提唱する英国の経済学者ケイト・ラワース氏らが主導するThriving Cities Initiativeがこのほど、ドーナツ経済学モデルを都市で実践するための手引きとしてCreating City Portraitsを公開した。

ドーナツ経済学を都市で実現するための4つの問い

Thriving Cities Initiativeはラワース氏のほか、気候変動対策に取り組む世界の都市で構成するC40(世界大都市気候先導グループ)、サーキュラーエコノミーを軸とした都市づくりを進めるオランダ・アムステルダムのCircle Economyが主導するイニシアチブで、ドーナツ経済学モデルの都市政策への適用に取り組んできた。2019年には米フィラデルフィア市とポートランド市、オランダ・アムステルダム市でパイロットプログラムを実施。このうちアムステルダム市は2020年4月、Amsterdam City Doughnutを公表し、今後の都市政策をドーナツ経済型モデルに基づいて進めると明言した。

Creating City Portraitsの公開に際してラワース氏は自身のウェブサイトの中で、すべての都市は以下の4つの問いかけを自らにしてほしいと呼びかける。

  • そこに住む市民にとって、都市が繁栄することはどのような意味を持つか?
    (地域と社会に関する問い)
  • 都市にとって、生態系の中で繁栄することはどのような意味を持つか?
    (地域と環境に関する問い)
  • 都市にとって、世界の人々の幸福を尊重することはどのような意味を持つか?
    (世界と社会に対する問い)
  • 都市にとって、地球の健康を尊重することはどのような意味を持つか?
    (世界と環境に関する問い)

 

Creating City Portraits P7. Figure3 より

今回公開された第一版は、北半球の都市のために開発されたものだ。これは、都市の社会・環境面での負荷を先頭に立って軽減する責任が北半球の都市にはあるからだとしている。今後はさらに、南半球の都市に適用できるものも開発するという。

手引きの紹介動画:約12分

ラワース氏は、ドーナツ経済学を都市で実践することを目指す過渡期の行動として、以下9つのMを行うよう呼びかけている。

  1. Mirror(映し出す鏡)
    この手引きを都市の現状と世界の環境負荷を映し出す鏡とする
  2. Mission(ミッション)
    都市が繁栄することの意味を問い、どのような都市になるかを盛り込んだミッションをつくる
  3. Mobilize(結集させる)
    この手引きをきっかけに、変革を担うステークホルダーを巻き込む
  4. Map(地図)
    既存の政策やイニシアチブのうち、目指す方向に合致するものをマッピングする
  5. Mindset(マインドセット)
    ドーナツ経済学の都市での実践を実現するために必要な方法や価値観に基づいたマインドを持つ
  6. Methods(メソッド)
    すでに使っている他のメソッドとも関連づけながら、変化を実現する
  7. Momentum(勢い)
    実践と振り返りを繰り返しながら勢いをもたらす
  8. Monitor(モニタリング)
    ドーナツ経済学の実現に向けて、どこでどのような進展があるか、あるいはないかをモニターする
  9. MMM!
    たまらなく、創造的に進めよう!

ラワース氏率いるDoughnut Economics Action Labは、ドーナツ経済学の実践を目指してコミュニティ、都市(場所)、教育(研究)、企業(ビジネス)、政府(政策)という5つの主な領域で活動しているチェンジメーカーたちをつなげることを目的に、9月にもオンラインプラットフォームを立ち上げる予定。10月からは実践地域(アムステルダム・コロンビア・コスタリカ)をはじめ、ドーナツ経済学の実践者を招いたウェビナーも行うとしている。

 

【参照記事】Creating City Portraits
【関連記事】新型コロナからの再生はグリーンリカバリーで。ヒントはオランダ・アムステルダム採用の「ドーナツ経済学」に
【関連記事】アムステルダム市、ポストコロナ経済を回復させる「ドーナツモデル」を採用
【関連記事】ドーナツ経済学でつくるサーキュラーシティ。アムステルダム「Circle Economy」前編
【関連記事】ドーナツ経済学でつくるサーキュラーシティ。アムステルダム「Circle Economy」後編