エレン・マッカーサー財団はこのほど、政府・都市・企業がイノベーションを促進して枯渇性資源の消費や環境破壊を経済成長から分離し、サーキュラーエコノミーへの移行を推進する「世界共通のサーキュラーエコノミー政策目標」を発表した。同目標は、エレン・マッカーサー財団が世界の企業と政策立案者とともに作成し、サーキュラーエコノミーへのより迅速な移行に向けた政策策定における共通方針の確立を目的としたレポート「Universal circular economy policy goals : enabling the transition to scale」で提示された。

同目標により、気候変動・生物多様性の喪失・汚染などの主要なグローバル課題に取り組むことで、政府と企業が恩恵を受けられるとしている。今回発表された5つの目標は、以下のとおりだ。

目標1:サーキュラーエコノミーを奨励する設計

日用品から固定資産まで、全製品を廃棄物と汚染を排除する方法で設計・アクセス・使用ができるようにする。

政策例
  • 耐久性・再利用性・修理可能性と再製造性のための設計。リサイクル性・堆肥化可能性に着目した商品と容器包装の高品質な設計の奨励
  • 製品表示・タグ・デジタルパスポートを活用した情報共有と追跡
  • 製品設計・調達・農業と土地利用の政策を通じた環境再生型生産の奨励

目標2:価値維持のための資源管理

製品と原材料をできる限り高価値に保つビジネスモデルと資源管理システムの開発を促進する。同目標は、目標1の設計原則とアプローチにより実現できる。

政策例
  • 修理・共有・再販・再製造を促す税・調達方針の施行による、資源利用と投資したエネルギーの回収の最大化
  • 廃棄物関連の法令における資源の分類・定義の再検討と統一
  • 拡大生産者責任(EPR※1)政策とデポジット・リターン・スキーム(DRS※2)を通じた資源循環強化による、再利用からリサイクルまでの循環機会創出の支援

目標3:経済を機能させる

サーキュラーエコノミーソリューションを例外でなく標準にする経済的インセンティブや規制を策定して、大きな利益を生み出す。

政策例
  • サーキュラーエコノミーの成果に沿ったEPRなどの税・報酬インセンティブの調整
  • 補助金改革と必要に応じた拠出
  • 貿易政策へのサーキュラーエコノミーの原則の導入

目標4:イノベーション・インフラ・技術への投資

公的資金の投資によって民間部門を刺激し、サーキュラーエコノミーの機会創出に必要な技術を開発する。これにより包括的な移行やイノベーションの支援に必要なインフラ開発が保証される。

政策例
  • 学際的研究資金の提供
  • 物理的あるいはデジタルインフラとイノベーションのための公的・民間・NPOの資本を組み合わせた金融支援
  • 学校や高等教育プログラムへのサーキュラーエコノミーの導入

目標5:システム変更に向けた連携

バリューチェーン全体で迅速な官民連携を促進し、障壁を取り除いて新たな政策を策定し、既存政策を調整する。政府内の各省を横断し、かつ国内外で取り組み、政策の整合性と永続的な変化を構築する。部門を超えたサーキュラーエコノミーアプローチ導入のための進捗状況を測定する。

政策例
  • 複数の利害関係者とクロスバリューチェーン、および包括的で迅速なメカニズムの確立と導入による、システムソリューション開発と官民の能力強化
  • 国内・国際的政策におけるサーキュラーエコノミーの原則の主流化と、国境を越えた政策の整合性構築
  • データの測定と利用を通じた移行の加速

今回発表された政策例は相互に関連性があると同財団はみている。同目標を効果的なものにするには官民が連携しなくてはならず、国内外で連携できれば国家間の摩擦を減らしてコストを削減できるとしている。さらに、緊密な連携により、個々の政策措置が「take(資源採掘)-make(製造)-waste(廃棄)」というリニア型経済システムのままになる可能性も最小限に抑えられる。

※1:製造者に製品の引き取り・リサイクル・最終処分の段階を含む、製品に関わるライフサイクルに対する責任を拡大して課すことで、製品により生じる総合的な環境負荷の低減を目指す手段
※2:消費者が製品購入時にデポジットを支払い、使用後に製品を定められた収集場所に返却するとデポジットが返金される仕組み

【プレスリリース】New policy goals offer an opportunity for circular economy transition at scale
【参照サイト】Universal circular economy policy goals