伊電力大手エネル(ティッカーシンボル:ENEL)は1月19日、世界初となるサーキュラリティ(循環性)指数「Economic CirculAbility」を導入すると発表した(*1)。2030年までに同指数を倍増させ、循環型ビジネスモデルへの移行を推進する。

Economic CirculAbilityを新たな重要業績評価指標(KPI)とし、経済的パフォーマンスと資源消費量を比較してグループ全体のサーキュラリティを測定する。エネルギー・トランジション(#1)の分野におけるリーダー企業を目指すなか、同指数を30年までに20年比で2倍にする野心的な目標も発表した。

Economic CirculAbilityは、エネルグループ全体のEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益、#2)と、バリューチェーン全体の燃料や原材料などの資源消費量を比較する。30年までにEBITDAに対する資源消費量を半減させる。

エネルはサーキュラーエコノミー(循環型経済)が戦略ドライバーになり得るとの認識を持つ。そこで、サーキュラリティを測定することは、15年以来のサーキュラー戦略を実行していくうえで重要になる。

サーキュラリティ指数の導入および目標達成に向けて、原材料を消費しないだけでなく、未来の製品ライフサイクルとして消費後に再び利用できるような取り組みを推進する。これにより、エネルと同社が事業展開する国々において、供給面の制約および地政学的不確実性の解消につなげられると見ている。また、サプライヤーと協働して循環型調達や、エネル傘下にてディマンドリスポンス(#3)事業などを手がけるエネルエックスの取り組みなどを通じ、循環型ビジネスモデルへの移行を推進する。

世界が50年ネットゼロ達成を目標として掲げるなか、民間レベルでも多くの企業がサーキュラーエコノミーへの移行を支援する取り組みを強化している。ドイツ自動車大手メルセデス・ベンツグループ(MBG)2022年8月、化学大手BASF(BAS)および熱分解スタートアップ企業ピュルム・イノベーションズ(PYR)と共同で、ケミカルリサイクルにより製造段階のサーキュラーエコノミーを推進する(*2)。英通信大手ボーダフォン(VOD)は2022年11月、世界自然保護基金(WWF)と提携し、「one million phones for the planet(地球のための100万台の携帯電話)」プログラムを開始すると発表した(*3)。携帯電話のサーキュラーエコノミー推進を図る。

(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#2)EBITDA…利払い・税引き・減価償却前利益。国・地域によって金利、税制、減価償却方法などが異なるため、国際的な企業比較において、それらの違いを最小限に抑えて利益の額を示せる。
(#3)ディマンドリスポンス…猛暑日や極寒日に電力需給がピークになった時、停電リスクなどの非常事態に対して、需要側から系統安定化を図るプログラム。

【参照記事】*1 エネル「Enel, the world’s first company to launch a circularity index with the aim of doubling it by 2030
【関連記事】*2 メルセデス・ベンツ、廃タイヤから車両部品生産へサーキュラーエコノミー推進。米リヴィアンとも提携し商用EV共同生産も
【参照記事】*3 ボーダフォン「Vodafone and WWF announce global partnership
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する金融投資メディア「HEDGE GUIDE」の「伊電力エネル、世界初のサーキュラリティ指数導入。循環型ビジネスモデルへの移行推進」より転載された記事です