環境省は5月27日、「環境スタートアップの振興に関する勉強会」の結果を踏まえ、今後の政策の方向性を取りまとめたと発表した。この勉強会は、環境スタートアップによるイノベーションの創出・拡大を目指し、令和7年2月から4月にかけて計5回開催され、有識者、関係府省、スタートアップ企業、地方公共団体が参加した。
同省は、環境・経済・社会に関わる複合的な危機や課題に対処し、持続可能な社会を実現するためには、経済・社会の基盤である環境を軸に据え、気候変動対策、循環経済、ネイチャーポジティブといった個別分野の環境政策を統合的に実施し、相乗効果を発揮させることが不可欠だと指摘。この実現には、従来の汎用的なソリューションでは十分な対応が困難であり、スタートアップの自由な発想と技術革新が鍵となるとの認識を示した。
今回取りまとめられた政策の方向性では、まず政策スコープの見直し・拡大を掲げた。現行の支援策がエネルギー起源CO2削減に偏りがちであるとし、非エネルギー起源CO2やメタン等の削減、循環経済、ネイチャーポジティブといった他の環境分野、さらには気候変動への適応策についても、緩和策と同様に喫緊の課題として統合的に取り組む必要性を強調した。
その上で、環境スタートアップを支援する3つの政策の方向性として「①需要をつくる」「②産業をつくる」「③人材・基盤をつくる」を提示した。
「①需要をつくる」では、スタートアップの参入・拡大が期待される分野を特定し、技術シーズや地域課題、収益化、実装場所などを総合的に捉えて需要を形成することが重要だとした。具体的な施策として、地方公共団体・企業によるニーズ主導のリバースピッチの推進、国の公共調達におけるスタートアップ等の入札参加資格要件の緩和、グリーン購入法を活用した先端的な環境製品・サービスの導入拡大などを挙げた。
「②産業をつくる」では、優れた環境技術シーズを持つスタートアップ等の研究開発・社会実装支援を抜本的に強化するため、SBIR(中小企業技術革新制度)等に基づく事業構想から事業化までの切れ目のない資金的・技術的支援の実現を目指す。特に、民間がリスクを取りにくい技術開発の社会実装フェーズや「死の谷を越える」ための政府投資の拡大が必要だとした。米国のARPA-E(エネルギー高等研究計画局)の取り組みも参考に、テーマ設定型の研究ファンディングや事業化を推進する。また、JICN(株式会社脱炭素化支援機構)との連携によるシード段階や量産前段階への投資促進策の検討も盛り込まれた。
「③人材・基盤をつくる」では、環境スタートアップ企業と金融機関等をつなぐ専門家やチームビルディングのサポートの重要性を指摘。国・地方公共団体がスタートアップ企業をリーディングカンパニーとして育成することの重要性も示した。具体的な施策としては、計画実現に必要な人材(グリーンジョブ)の特定、企業が利用しやすい環境データ基盤の整備、地方大学発スタートアップの技術を事業化するための経営・技術専門家のマッチング支援、現地企業など地域主体によるスタートアップへのインフラやフィールド提供、資金的支援などを挙げている。
環境省は、これらの政策の方向性に基づき、環境スタートアップが持つポテンシャルを最大限に引き出し、環境問題の解決と経済社会の構造的課題の解決に貢献するイノベーションの創出を加速させることを目指す。
【プレスリリース】「環境スタートアップの振興に関する勉強会」を踏まえた今後の政策の方向性について」
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