教育・学習支援業の株式会社GEN Japanは5月1日、地球環境および生態系の回復に取り組む日本・ドイツ・イタリアの企業が参画するコンソーシアム「JINOWA」を設立した。「土をよくすること」を目指した新たな産業や社会全体の転換を推進し、あらゆる生態系を回復するソリューションとして土の肥沃化を提供するとともに、先端的な取り組みを進める企業とのパートナーシップを広げていくとしている。
世界で脱炭素化への取り組みが進むなか、空気中のCO2を吸収する土の力は地球環境改善においても注目されており、フランス政府は2015年に開催されたCOP21で国際的な取り組みである「4パーミルイニシアチブ」を提唱した。同イニシアチブは、土壌に存在する炭素量を毎年0.4%増やすと人間が排出するCO2をほぼ相殺できるという考えに基づいており、現在日本をはじめ多くの国や組織が署名している。
同コンソーシアムは、2021年から2030年まで国連が進めている「国連生態系回復の10年」に参加する。あらゆる産業を循環型へ移行することを目的とし、地域コミュニティレベルでの生態系回復に向けた具体的な活動を実施していく予定だ。JINOWAが最も注力して研究するのは土の力で、健全な農作物を育てる土壌の大切さと生態系全体における土の役割を実証していきたいとしている。土壌は人の手によって育まれるべき資源だという共通認識を広げ、日本の土壌界有識者の指導による優れた堆肥技術や多様性の高い微生物とともに、豊かな土を全産業の基盤として守っていかなくてはならないとみている。土壌づくりのアドバイザーとして堆肥・育土研究者の橋本力男氏と農学博士・土壌微生物・土壌生態系研究者の横山和成氏がJINOWAに参画する。
JINOWAに参画する欧州の企業・団体は以下のとおりだ(下記以外の欧州・日本からの参画企業は今後発表予定)
- DYCLE(ドイツ、堆肥になるオムツ)
- MatteoBrioni SRL(イタリア、土のインテリア・建材)
- CibOfficina di Carlo Nesler(イタリア、食品生産)
- Mondo Internazionale(イタリア、35歳以下の社会起業家ハブ)
JINOWAが提唱する「TOKOWAKA(常若)」社会
大量生産・大量消費のリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行は世界的な課題となっており、資本主義社会を拡大させてきた「大量に・便利に・早く・手軽に・一気に」という価値観からの脱却が必要だとJINOWAは考える。JINOWAが提唱する「TOKOWAKA(常若)」社会の新しい指標は下記である。
- 適(Appropriate):大量生産・大量消費から脱却し、地域や自然環境に適しているか、無駄や無理のない適切な量か、その人や土地の能力に適し(適職・適地)、負荷が少ない状態にあるか
- 繋(Connection):効率化を重んじ、無人化・機械化していくよりも、創造的な手仕事によって、どれだけ人とのつながりや交流を生み出しているか
- 継(Succeed):急激な拡大成長を目指すのではなく、時代に合わせ常に刷新しながら、手間暇をかけ長く継続・継承されているか
こうした新たな価値を目指して地域を再設計し、土地・自然環境・人間にもっとも負担の少ない産業、ものづくりやサービス、製品を生み出す人間の創造力・技術力・創造的な手仕事こそが地域文化継承や自然環境回復につながる具体策だとJINOWAはみている。
【プレスリリース】全ての産業が土をよくする社会を目指して、イタリア発の国際企業コンソーシアムJINOWAを発足
【参照サイト】JINOWA
*記事中の画像の出典:株式会社GEN Japan