グッチはこのほど、「ネイチャーポジティブ環境戦略」を発表した。新たな「環境戦略ポートフォリオ」では、2018年以降達成してきたカーボンニュートラルに加え、森林やマングローブ林を保護および再生するとともに、同社のサプライチェーンにおける環境再生型農業に投資し、より広範囲に自然環境に良い変化をもたらすことを目指す。
環境戦略ポートフォリオの概要は、以下のとおりだ。
重要な森林の保全
同社は、2019年の温室効果ガス総排出量を前年比で18%削減した(※1)。GHGプロトコル(※2)のスコープ1・2・3(※3)におけるカーボンニュートラルへの取り組みを継続するため、同社は2019年の残存する温室効果ガス排出量(CO2換算136.9万トン)を、約119.5万ヘクタールの森と生物多様性の保全によって相殺した。具体的な取り組みには、米国に本拠を置く国際環境NGOのコンサベーション・インターナショナル(以下、CI)によるケニアのチユル丘陵でのREDD+(※4)プロジェクトと、スイスに本拠を置く炭素金融コンサルタントのサウスポールによるジンバブエのカリバでのREDD+プロジェクトへの資金提供がある。
マングローブ林の再生・保全
2019年の排出量相殺に加え、同社はサウスポールによるホンジュラスのモスキティアでのブルーカーボンREDD+プロジェクトに資金提供した。同プロジェクトは、約5,000ヘクタールのマングローブ林と28.5万ヘクタール以上の森林伐採を防ぐ。
(出典:グッチ)
環境再生型農業を通じた土地管理の向上
同社は、CIとサウスポール、および企業の持続可能性を支援するベネフィットコーポレーションの米ネイティブと共同で、環境再生型農業プロジェクトの実行可能地域の特定と規模拡大を目的とした調査を実施し、同社製品への再生可能原材料の導入を目指す。サプライチェーンだけでなく、生産者に対しても「カーボンファーミング」を通じて環境再生型農業への切り替えを奨励している。その一環として、同社はまず、ネイティブの最新再生型プロジェクトに直接資金提供して、今後5年間で世界各地の3,075ヘクタールに及ぶ綿と皮革の生産地で約2.5万トンのCO2排出抑制を目指す。同プロジェクトでは、最終的に合計3.2万ヘクタール以上の土地を再生型に転換するよう促し、20万トンのCO2排出を抑えられるとしている。これにより、同社は化学物質に依存する農業から、自然を再生して強化する農業システムへの移行を提唱していく。
なお、同社は2019年、持続可能な製品の設計・製造方法を採用することで、温室効果ガス排出量をCO2換算26.6万トン削減(過去2年間でCO2換算約70.6万トン削減)するとともに、同社のサプライチェーンに大きな影響を与える分野において、以下の改善が見られたとしている。
再生可能エネルギーへの切り替え
グリーンエネルギーへの切り替えにより、CO2換算5.9万トンを削減した。店舗・ オフィス・倉庫・工場のグリーンエネルギー使用を2022年に100%にする目標に対して、83%まで到達している。同社のサプライヤーがグリーンエネルギーに切り替えるための設備資金も援助している。
製造効率
皮革のメタルまたはクロムフリーのなめし加工、グッチ・スクラップレスプログラム、およびグッチ・アッププログラムなどを導入して、製造工程における持続可能性や効率の向上、発生する廃棄物の削減により、CO2換算3,000トンの排出を回避した。
持続可能な原料調達
持続可能な方法で調達したリサイクル素材やオーガニック繊維の使用をコレクションに増やすことで、CO2換算17.9万トンを削減した。2025年までに持続可能な原料調達100%を目標としている。
循環性
ナイロン・綿・カシミヤ・ポリエステル・貴金属・プラスチック・容器包装について、リサイクルおよび再生素材の使用を拡大して、CO2換算1.3万トンの排出を削減するとともに、循環型経済を支援している。また、循環型生産のビジョンに基づくイニシアチブ「グッチ・サーキュラーラインズ」からの初コレクション「グッチ・オフザグリッド」を開始した。さらに、オンライン委託販売大手の米ザ・リアルリアルと提携し、持ち主の手を離れたグッチ製品をオンラインショップで販売する新たな循環型ビジネスモデルを創造している。
同社の社長兼最高経営責任者(CEO)であるマルコ・ビッザーリ氏は、「当社は気候変動への戦略を、一連の明確な行動を組み合わせて発展させます。引き続きサプライチェーン全体でCO2排出を抑えて温室効果ガスを低減し、カーボンニュートラルを維持します。同時に、もう一つの重要な柱として環境再生型農業に投資します。当社の新たな『環境戦略ポートフォリオ』は科学に基づいており、気候変動を緩和する重要な生態系を保護および再生することで、生物多様性と気候を将来にわたって持続可能にします。自然を気候変動の犠牲者から、気候に変化をもたらす原動力に変えるための具体的な活動とシステムを広めることが、地球温暖化へのソリューションの一つになると私たちは考えています。この方法は、最終的に地球の未来を救うことになるでしょう」と述べている。
※1:環境損益計算書(EP&L)の年次会計による
※2:GHGプロトコルイニシアチブが作成した、温室効果ガス排出量の算定と報告の基準
※3:スコープ1は、事業者⾃らによる温室効果ガスの直接排出。スコープ2は、他社から供給された電気・熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出。スコープ3は、スコープ1・2以外の間接排出
※4:途上国が森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、森林保全により炭素蓄積量を維持・増加させた場合に、先進国が途上国に経済的支援を実施するメカニズム
【プレスリリース】グッチは新たに「ネイチャー ポジティブ」な環境戦略を発表
【プレスリリース】GUCCI UNVEILS NATURE-POSITIVE CLIMATE STRATEGY
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