hap株式会社は2月10日、同社が手掛ける「カバロスランドリー」による衣類のリユースプロセスに対し、株式会社aiESG(アイエスジー)のAI技術を活用してESG(環境、社会、ガバナンス)評価を行ったところ、衣類の寿命が延びることでESG指標全体の改善に貢献している結果になったと発表した。

hap社は2006年創業のアパレルベンチャー企業。同社が開発した技術「COVEROSS®(カバロス)」は、第11回技術経営・イノベーション大賞内閣総理大臣賞を受賞している。2013年には、同技術を活用し、使用済みのアパレル製品の長寿命化を図るリユース・アップサイクルサービス「カバロスランドリー」の提供を開始した。製品の品質・耐久性と環境に配慮しながら、衣類の長寿命化をはじめとする循環移行を目指している。

aiESG社は、製品およびサービスレベルのESG分析を通して、持続可能な社会の実現を目指す九州大学発のスタートアップ企業。国際的・学術的な長年のESG研究成果を元に、サプライチェーンを遡ったESG評価プラットフォーム「aiESG」を提供しており、サプライチェーン全体の最適化を支援している。

両社は、AI技術を活用し、カバロスランドリーによる製品のリユースプロセスを、ESGの観点から分析。「一般的なTシャツ1枚を製造するサプライチェーン全体のESG評価」と、「廃棄予定を含む古着などTシャツ1枚を『カバロスランドリー』でアップサイクルし再利用する場合のESG評価」の2つの評価を行った。

「一般的なTシャツ1枚を製造するサプライチェーン全体のESG評価」では、原材料調達から縫製、製品輸入までの全工程における人権、環境、経済などが評価対象。また、「『カバロスランドリー』でアップサイクルし再利用する場合のESG評価」では、回収、再加工、配達までの全工程をESGの観点から評価している。

結果として、カバロスランドリーが製品の寿命を延ばすことで、二酸化炭素の排出削減、水の使用量削減、温室効果ガスの排出量削減などの環境指標に加え、児童労働や強制労働の削減といった人権指標や、付加価値の創出などの経済指標においても改善が見られたという。

評価結果について同社は、「アパレル業界における持続可能性への意識を高め、社会全体に対して責任あるビジネス実践の重要性を訴えるもの」だと説明する。持続可能で責任ある方法で運営されていることをステークホルダーおよび社会全体に対して示すことで、アパレル業界の変革をけん引していく考えだ。

両社は協業の第二弾として、「二次流通」に焦点を当てたカバロスランドリーサービスを通じて、アップサイクルを含む循環型経済の促進に挑戦する。

ESGの世界的な潮流の中、ファッション産業には構造的な課題が指摘されている。製品価格の低下と供給過多による過剰生産、さらに製造過程における人権侵害や環境への負荷など、無視できない問題だ。アパレル業界の持続可能性を目指し、データに裏打ちされたESG評価に取り組むスタートアップ2社の協業の成果が注目される。

【プレスリリース】世界初のAIを活用したアパレル二次流通のESG評価
【参照記事】COVEROSS LAUNDRY
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(※画像の出典:hap株式会社)