フィンランドの首都ヘルシンキ市では5月、サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミーを推進するロードマップ「The City of Helsinki’s Roadmap for Circular and Sharing Economy」が承認された。

ロードマップ策定は、「Carbon Neutral Helsinki 2035 programme」に示された147のアクションの一部でもある。ヘルシンキ市では、実業界、市民との協同のもとでサーキュラーエコノミー・プロジェクトが発足している。

今回のロードマップでは「建設」「調達」「植物性廃棄物」「シェアリングエコノミー」の4分野に焦点が当てられている。ロードマップにおける分野ごとの主な取り組みは次の通りだ。

建設

土地の利用計画や都市開発の建設準備、インフラ、建築物の建設、メンテナンスおよび解体といった建設工程の全てにおいてサーキュラーエコノミーに関する視点が取り入れられる。

調達

ヘルシンキ市は毎年20億ユーロ以上に相当する調達を行っている。これは市の歳出のおよそ40%を占める。この調達にサーキュラーエコノミーを促進する基準が適用されれば、資源の消費、廃棄物の発生、輸送の際に発生する排出が大きく削減できる。市におけるすべての調達にサーキュラーエコノミーの基準が段階的に適用されることが、今回のロードマップの目標となっている。

植物性廃棄物

ヘルシンキ市では、葉や雑草、枝といった植物性廃棄物と養分について、循環のループを閉じる運営へ移行していくことを目標に掲げている。資源の価値を可能な限り保ち、栄養分を効果的に再利用するために、公園や緑地で発生する植物性廃棄物の処理過程に開発と改善が加えられる。また、これにより廃棄物の処理と輸送によって発生する排出を減らすとしている。

シェアリングエコノミー

サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミーに関するビジネスの持続的な成長と雇用の拡大には、イノベーションや関係者間の連携が必要とされ、ヘルシンキ市は、そのために重要となるプラットフォームや機会を提供していく構えだ。

1つの目標として掲げられているのは、さまざまなビジネスやグループがサーキュラーエコノミーによってお互いに付加価値を生み出すパートナーシップの実現だ。お互いの余剰な物資を利用したり、技術をシェアし合うような取り組みがこれにあたる。

ヘルシンキ市は、市民がオンラインで予約し、さまざまな業務やミーティングに利用できる空き部屋を提供するサービスを既に行っている。市のサービス施設についての計画においても、建物の有効活用をさらに進め、不必要な建設工事を回避する方策が追求される。スペースの効率的な利用とシェアリングエコノミーによる課題解決を、都市開発の不可欠な要素とすることを目指す。

シェアリングエコノミーの重点は、モノを購入するのではなく、共用または賃借・賃貸することであるため、排出量や廃棄物を減らすことができる。


こうした注力分野のほかに、ヘルシンキ市はさらに食料廃棄の削減や廃棄物の分別、リサイクルといったサーキュラーエコノミーに密接に関連する対策も推進していくとしている。

商品が新たな原料から生産され、ただ消費されて捨てられるのではなく、原料が効率よく循環し、減りつつある天然資源が節約される未来を形成することを目指すヘルシンキ市。バージン素材の使用量が減少すればCO2排出量も減少することから、サーキュラーエコノミーは気候変動を抑制するための有効な手段でもあると考えられている。

フィンランドでは、2016年に国単位では世界で初めてのサーキュラーエコノミーに関するロードマップが発表された。ヘルシンキ市によるロードマップには、注力分野ごとの段階的かつ具体的なアクションやアプローチが落とし込まれている。今後、各地の自治体がサーキュラーエコノミーを推進する上での模範となってくれるだろう。

【参照記事】Circular and sharing economy to help solve sustainability challenges in Helsinki
【参考文書】The City of Helsinki’s Roadmap for Circular and Sharing Economy, The city of Helsinki´s Urban Environment Publications
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