環境省「選択と集中」実行本部は8月3日、第4回会合のなかで、予算の組み替えを含む改革案を示した。同案を受け、9月末に取りまとめられる令和3年度重点、概算要求等で具体的な施策を示す予定だ。

同実行本部は、環境省のあるべき姿を明らかにし、今後の施策の選択と集中を行う環境大臣直属の組織として1月に発足した。気候危機や生物多様性の喪失、循環型社会に向けた課題などに対し、『「社会変革」のための「環境省改革」』を実行し、施策の選択と集中を図る。

今回の「選択と集中」のカギは「経済社会のリデザイン(再設計)」であるとし、持続可能で分散型・レジリエントな社会を目指すことが示された。そのためには、3つの移行、すなわち「脱炭素社会への移行」「循環経済への移行」「分散型社会への移行」を「統合的に」進めていくとした。さらに、移行に向けた政策を迅速に打ち出すことのできる組織づくりに向け、省内改革にも取り組む。これらのキーワードをもとに、同実行本部は下記の方向性を明らかにした。

  1. リーマンショックの轍を踏まない:脱炭素社会への移行の加速化
  2. 国土・地域のリデザイン:自立・分散・ネットワーク型の地域づくり
  3. 巨大リスクへの備え:気候変動×防災
  4. ESG金融やナッジを活用した社会変革
  5. 環境外交の強化

それぞれの3つの移行は密接に関連しているが、特に循環型経済への移行に関連する「新たなアクションの方向性」の例は下記の通りだ。

  • 「分散型社会」の実現には、「地下資源の依存から脱却」し、「地上資源の活用」を活かすことによる地域の自立が不可欠。元来同省が打ち出している「地域循環共生圏」の実現に向けた取り組みの強化
  • 「里山未来拠点」を活用した地産地消の推進
  • 老朽化した社会資本の解体などを通じた地域再生
  • 廃棄物処理施設を地域のエネルギーセンターとして活用。脱炭素の拠点とするとともに災害時に地域にエネルギー供給を実施する
  • 海洋プラスチックごみ削減を通じた地域の新規ビジネス支援
  • ASEAN諸国を中心とした海洋プラスチックごみについての行動政策策定支援

さらに、3つの移行を実現するため、「選択と集中」を「①予算の合理化・効率化」「②業務の合理化・効率化」「③リソース創出のための仕組みづくり」を通じて実施。そのなかでも具体的なアクションとして、5年以上継続している事業を令和2年度限りで廃止・見直しを行う。これによって、1,700億円のうち約450億円については廃止・見直しを検討、一般会計予算事業の20の事業の廃止・見直しを検討することになる。廃止・見直しされた予算は、同実行本部の取りまとめや、「経済財政運営と改革の基本方針2020」、ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えた新たな視点で予算の組み替えを行う予定だ。

各国が、「グリーンリカバリー」や「より良い復興(Build Back Better)」に関する方向性と予算組みを含めた具体的な施策を打ち出している。呼び名は違うが、これらの海外の復興動向は同省が示した3つの「移行」に集約されているといえる。

ウィズコロナ・ポストコロナの時代には、環境・社会・経済の3つの軸を総合的に見据えながら、迅速な政策を遂行する必要性が増す。同実行本部が打ち出した、いわゆる環境省内の働き方改革も今後の政策に影響していくと見られる。日本型の新しい経済社会の構築ができるかどうか、今後の政策動向が注目される。

【参照】環境省「選択と集中」実行本部第4回会合