株式会社日立ハイテクは11月20日、使用中および使用済みのリチウムイオン電池の性能劣化や余寿命を瞬時に評価する電池劣化高速診断手法を開発したことを発表した。この手法を軸に、同社はリチウムイオン電池の残価分析や管理に関わる包括的なマネジメント・サービス提供に向けた事業開発にも着手し、早期の市場投入を目指す。

昨今、自動車業界で電気自動車(以下、EV)の需要が今後加速することが予想される一方で、EV用として性能を発揮できなくなったリチウムイオン電池はフォークリフトやゴルフカート用の電源、および店舗や家庭用の蓄電池として再利用・再製品化される動きが広がっている。リチウムイオン電池の適切な再利用・再製品化にあたって重要な課題となるのが、電池の残存性能の正しい測定・選別と、サーキュラーエコノミー実現に向けたプラットフォーム作りである。

この課題の解決策の一つとして、日立ハイテクは株式会社日立製作所研究開発グループとともに、同グループが考案したアルゴリズムを用いて同手法を開発した。これまで、リチウムイオン電池の性能劣化や余寿命の評価には2~4時間かかったが、同手法を用いると数秒~2分程度で評価が完了する。また、同手法は個々の充放電機器の機器特性に最適なアルゴリズムで分析することから、あらゆる充放電機器に対応するのが特徴で、導入済みの機器を使って計測システムを容易に構築できる。

さらに、同手法のシステムはフリート事業(※)などでEV用のリチウムイオン電池として利用される段階から導入し、電池の使用状況をモニタリングすることで、電池劣化をリアルタイムで把握できる。そして、同手法を電池の再生工場ラインに組み込むと、電池残存性能選別作業の半自動化もしくは自動化を実現でき、リチウムイオン電池の再利用・再製品化のさらなる効率向上が期待できる。このように同手法は、リチウムイオン電池関連のサーキュラーエコノミー実現を推進する新たなプラットフォーム作りに貢献する手法として、将来的な活用が見込まれる。

同社は、リチウムイオン電池劣化の分析・可視化を軸にしたデータマネジメント・プラットフォームの創出を通して、EV用リチウムイオン電池の長寿命化と関連事業者の事業化推進を支援するソリューション事業の展開を目指す。今後も、顧客が抱える課題の解決策提案を起点として高付加価値事業を確立し、資源の有効活用や環境負荷低減につながる持続可能な社会の実現に貢献していく意向だ。

※フリート事業:運送会社やバス、タクシーやレンタカー会社など、人や物の移動を目的に保有・管理している多くの車両をもとに運用する、あるいはレンタルやシェアリングなどで供給する事業のこと

【プレスリリース】リチウムイオン電池の性能劣化や余寿命を瞬時に評価する電池劣化高速診断手法を開発
【参照サイト】リチウムイオン電池向けライフサイクル マネジメントソリューション
(冒頭の画像は日立ハイテクより引用)