出光興産株式会社はこのほど、環境エネルギー株式会社と実証検討を進めていた出光興産株式会社の千葉事業所(所在地:千葉県市原市)エリアにおける使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル装置の基本設計を実施することに合意し、2025年度の商業運転開始を目指すと発表した。
原料となる使用済みプラスチックの調達については、株式会社市川環境ホールディングスおよび前田産業株式会社との業務提携の検討も開始し、年間2万トンの使用済みプラスチックの再資源化を目指す。
同事業は、千葉事業所エリアに新たに建設する環境エネルギー株式会社のプラスチック油化装置(HiCOP技術※)を用い、使用済みプラスチックから得られた生成油を同所内の石油精製・石油化学設備で精製・分解・再合成し、再生化学品を生産する。
出光興産株式会社と環境エネルギー株式会社は、環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」事業として、廃プラスチックの油化リサイクル技術開発に2019年度から共同で取り組み、2021年からは実証検討を実施してきた。商業設備建設に必要な技術開発の目途が立ったことから、2025年度の商業運転開始に向けた基本設計を実施することを決定した。同事業化により、出光興産株式会社の既存設備を有効活用したケミカルリサイクルシステムの構築を目指すとともに、全国各地のグループ製油所での事業展開も検討する。
近年、海洋プラスチックごみ問題や気候変動、バーゼル条約をはじめとする諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応が推進されていることに加え、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されるなど、プラスチックの資源循環促進の重要性や社会的需要が高まっていると出光興産株式会社はみている。
一方、国内では年間約820万トン排出される使用済みプラスチックのうち再生品への利用は約2割にとどまっており、5割以上の使用済みプラスチックは再生利用が困難なため、サーマルリサイクルとして燃料化されているのが現状であるとしている。こうしたなか、リサイクルプラスチックの拡大需要に応えるため、革新的なリサイクル技術が求められていると同社は考える。
出光興産株式会社は同事業において、プラスチックの資源循環拠点として製油所・事業所の設備を有効活用することにより、既存製造拠点の新たな低炭素・資源循環エネルギーハブへの転換に取り組み、カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアル移行を目指す構えだ。
事業概要
- 場所:出光興産株式会社 千葉事業所エリア
- 処理能力:年間2万トン(使用済みプラスチック重量)
- 生産開始時期:2025年度(予定)
各社の役割
- 出光興産株式会社・環境エネルギー株式会社:油化装置の技術確立・基本設計
- 出光興産株式会社:生成油の引取・再精製
- 株式会社市川環境ホールディングス・前田産業株式会社:使用済みプラスチックの調達
※ HiCOP(ハイコップ)技術:HiBD研究所の藤元所長(東京大学名誉教授・北九州市立大学名誉教授)が発明した特許技術である「触媒による接触分解方式」
【プレスリリース】使用済みプラスチックリサイクル事業化に向けた基本設計を開始 -原料調達に向けた業務提携の検討開始、ケミカルリサイクル・システム構築へ-
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*冒頭の画像の出典:出光興産株式会社