スウェーデン発祥の家具量販店大手IKEA(イケア、本社:オランダ)は2日、英サーキュラーエコノミー推進機関エレン・マッカーサー財団と戦略的パートナーシップを締結したと発表した。
イケアは、もともと2030年までにサーキュラー型ビジネスを展開するという目標を掲げていたが、エレン・マッカーサー財団の戦略的パートナーとして家具業界のサーキュラーエコノミーへの移行をさらに加速させる。今回の提携により、世界的規模でインパクトを生み出すことが両者間で共有された。
エレン・マッカーサー財団は、以前よりイケアのフランチャイジーであるIngka Groupと協業しており、今回のInter IKEA Groupとの戦略的パートナーシップは、協業レベルを高め、イケアのフランチャイズとそのバリューチェーンに変革をもたらすものとなる。
イケアは、循環型設計原則を用いて、2030年までにすべての製品ラインナップを再生可能または再生原材料のみで製造する目標を2018年6月に公表している。
これまでの主な進捗状況は以下のとおりだ。
- 木材や綿などの製品ラインナップの60%以上が再生可能な原材料、10%以上が再生原材料で作られている。
- 2019年度にポリエステル製テキスタイル製品の59%に再生ポリエステルが用いられた。
- 絨毯・カーテン・巻き上げ式ブラインド・ベッド・枕・キルト・ソファカバー・収納ボックス・バッグなどの製品に再生プラスチック(rPET)がすでに利用されている。
- ソファに関しては、2019年に最初の改修テストを実施し、このモデルを拡大する機会をうかがっていた。顧客に対する販売やメンテナンスに関連した循環型サービスの展開を検討中だ。
このようにサーキュラーエコノミー移行への歩みを進めてきたが、今回のパートナーシップにより下記の協働プロジェクトが開始される。
- 世界共通のサーキュラーエコノミーの定義を開発し、事実に基づいて透明性を確保し、サーキュラーエコノミーの概念を理解・追求しやすくする
- 循環型設計を提唱し、次世代のデザイナーを巻き込む
- 政策立案者と共同でサーキュラーエコノミー移行を加速させる法律の立案に影響を与える
- 循環型サービスを発展させ、顧客に新しい行動様式を提案する
今回の提携に関して、Inter IKEA GroupのCSO(最高サステナビリティ責任者)であるLena Pripp-Kovac氏は次の声明を発表した。
「サーキュラーエコノミーへの移行を達成することは、当社にとって念願の目標です。それは、当社の製品やサービス展開、原材料の調達方法、サプライチェーンとの協働、そしてお客様の要望を満たす方法の転換を意味します。当社の目標は、4つの循環を通じて製品や原材料を長持ちさせることです。4つの循環とは、再利用、改修、再製造、そして最終手段としてのリサイクルを指します。目標達成には、革新的思考・リーダーシップ・協働が必要になります。当社の移行を加速させ、さらに業界内でもサーキュラーエコノミーを浸透させるため、エレン・マッカーサー財団との協働を楽しみにしております」
エレン・マッカーサー財団CEOのAndrew Morlet氏も今回の提携の意義をこう強調する。
「気候変動問題・廃棄物問題・汚染問題など、直面するさまざまな課題がありますが、企業がサーキュラーエコノミーを通じて重要な役割を果たすという考えを共有するイケア社とのパートナーシップを歓迎します。サーキュラーエコノミーは、企業が環境・社会・経済に利益をもたらす形で価値を創造するために役割を果たします。今回の提携は、世界経済にとって重要なだけではなく、世界中の個人やコミュニティとの強固な関係を築くという意味でも、業界を動かす素晴らしい機会になると考えております」
イケア全体で38カ国に300店舗以上を展開する世界的大手であるイケア。これまで家具のリサイクル品販売やリースモデルのテストなど先進的なサービスを展開してきた。サステナビリティに積極的な企業として認知され始め、業界を先導してきたともいえる。今回のサーキュラーエコノミーへの移行に関する提携は、業界のスタンダードを作ろうという動きにほかならない。イケア内にとどまらず業界内外に大きなインパクトをもたらすだろう。
【参照記事】IKEA and Ellen MacArthur Foundation enter strategic partnership to accelerate the circular economy transition
【参照記事】Foundation welcomes IKEA as Strategic Partner
【イケアサステナビリティレポート】IKEA SUSTAINABILITY STRATEGY:People & Planet Positive