一般財団法人 生産技術研究奨励会は、このほど、東京大学 先端科学技術研究センターの醍醐市朗准教授が代表幹事を務める2025年度特別研究会「鉄スクラップの高度循環利用」の参加者募集を開始した。同研究会は、鉄スクラップの品質のばらつきという課題を克服し、高級鋼材へのリサイクルを促進するため、産官学の連携による包括的な議論の場を提供することを目的としている。

鉄鋼業は、カーボンニュートラル達成に向け、CO2排出量の多い高炉法から、鉄スクラップを原料とする電炉法への転換が求められている。しかし、電炉法では原料となる鉄スクラップに銅などの不純物元素(トランプエレメント)が混入しやすく、高品質な鋼材の生産が難しいという課題があった。

同研究会は、鉄スクラップが持つ特徴を「不測の不純物元素の存在」と「その濃度のばらつき」の2点にあると指摘。特に後者の「濃度のばらつき」は、これまで十分に検討されてこなかった新たな技術的課題であり、品質の安定化に向けた解決が不可欠だとしている。

この背景から、研究会では鉄スクラップの発生源である解体現場から、リサイクラー、製鋼、圧延に至るまで、サプライチェーン全体を横断した議論が必要だと考えている。各プロセスにおける異なる技術や商慣行が全体最適化の障壁となっている現状を踏まえ、産官学の関係者が一堂に会し、幅広い技術や学術的知見、生産技術、取引システム、法制度などを包括的に学ぶネットワーキングの場を構築する。

研究会のテーマには、鉄スクラップ、資源循環、サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル、トランプエレメント、高級鋼材などが掲げられている。運営は2025年度中に3〜4回程度の開催を予定しており、講演会や参加企業を交えたディスカッション、懇談会などを通じて、日本の鉄鋼業における高度循環利用に資する仕組みのデザインと、各主体の取り組み支援を目指す。

【プレスリリース】鉄スクラップのばらつきを制し、高級鋼材の生産に向けた鉄リサイクルに向けて[PDF]
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