伊藤忠商事株式会社、株式会社ファミリーマート、三甲株式会社、国立大学法人京都大学生存圏研究所の4者は7月18日、木材由来の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を配合した樹脂で作る物流資材の実用化に向けた実証事業を開始したと発表した。この取り組みは静岡県の「令和7年度 セルロース循環経済ビジネス実証事業」に採択されており、2025年8月から約半年間、静岡県内のファミリーマート約80店舗で効果を検証する。
この実証事業では、店舗への商品輸送で使われる「バット(番重)」と呼ばれる薄型の運搬容器を開発対象とする。CNFは、植物の主成分であるセルロースをナノメートルサイズまで細かく解きほぐした繊維状の素材だ。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度を持つといった特性から、プラスチックや金属の代替材料として注目されている。このCNFを樹脂に配合することで、物流資材の強度を保ちながら薄肉化・軽量化できる可能性がある。小売店舗の物流網でCNFを用いた資材が実装されるのは、世界で初めての試みだ。
今回の連携では、国内最大手のプラスチック物流資材メーカーである三甲がCNFを配合したバットを製造し、ファミリーマートが静岡県内の店舗と倉庫で実際に使用する。伊藤忠商事はプロジェクト全体の管理と原材料調達を担い、CNF研究の第一人者である京都大学の矢野浩之特任教授が製品の性能評価や環境影響評価を行う。商社、小売、メーカー、大学がそれぞれの専門性を持ち寄る産学連携の体制で、新素材の社会実装を目指す。
木材という再生可能資源から作られるCNFは、持続可能な社会の実現に貢献する素材として期待されている。しかし、伊藤忠商事の発表によると、2024年の世界市場規模は推定60億円に留まる。製造コストの高さなどが課題となり、産業用途での本格的な普及には至っていないのが現状だ。今回の実証は、コンビニエンスストアの物流現場が抱える作業員の負担軽減や、トラックの積載効率改善といった具体的な課題解決を通じて、CNFの実用化と普及を加速させることを狙う。
このコンソーシアムは、将来的にはバットを15%以上薄肉化・軽量化することを目標に掲げている。また、バット以外の物流資材への展開も検討していく方針だ。
【プレスリリース】セルロースナノファイバーを使用した物流資材の活用に関する実証開始について
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