JX金属は8月8日、丸紅と共同で、独自に開発した低品位銅鉱石活用技術「JXヨウ素法」の営業活動を開始したと発表した。丸紅が持つ国際的なネットワークを活用し、銅の最大生産国であるチリをはじめとする各国の鉱山会社に対し、同技術のライセンス供与や導入サポートを進める。
脱炭素化の進展に伴い、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連インフラに不可欠な銅の需要は世界的に拡大が見込まれている。しかし、既存の銅鉱山では鉱石に含まれる銅の品位が低下しており、新規鉱山の開発も環境保全や地域社会との共生の観点から長期化する傾向にあるなど、供給面での課題が顕在化している。こうした背景から、従来は経済的に回収が難しかった未利用資源の有効活用が求められている。
今回、両社が普及を目指す「JXヨウ素法」は、従来技術では活用が困難だった低品位の初生硫化鉱から銅を回収できる技術だ。初生硫化鉱は、鉱床の下部に存在が確認されながらも、従来の技術では経済的に銅の回収が難しいとされてきた鉱石である。同技術は、破砕した鉱石に希硫酸を散布して銅を浸出させる「ヒープリーチング」と呼ばれる湿式製錬方式に、触媒としてヨウ素を添加する。これにより、比較的簡便な追加設備のみで、未利用だった鉱石から銅を効率的に回収することが可能になる。
この取り組みは、銅の安定供給に貢献するだけでなく、既存鉱山の寿命(山命)を延長し、より効率的で長期的な事業運営を実現することにもつながる。JX金属は、同技術の特許および操業ノウハウを保有しており、2020年には世界知的所有権機関(WIPO)が運営する環境技術のマッチングプラットフォーム「WIPO GREEN」にも登録している。
今回の協業では、JX金属が技術とノウハウを提供し、丸紅が持つ広範な海外ネットワークを活かして、共同で鉱山会社への導入提案を行う。JX金属は今後も、こうしたライセンス供与などのアセットライトなビジネスを推進し、資源循環と持続可能な社会の実現に貢献していく方針だ。
【プレスリリース】低品位銅鉱石活用技術「JXヨウ素法」の適用拡大に向けた丸紅株式会社との共同営業活動について
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