経済産業省は3月27日、「成長志向型の資源自律経済戦略」案を取りまとめた。

同省は、2020年5月に策定した循環経済ビジョン2020を踏まえ、国内の資源循環システムの自律化・強靱化と国際競争力獲得に向けて、技術と規則のイノベーション促進を目指している。同政策を具体化するべく、経済産業省は2022年10月、成長志向型の資源自律経済デザイン研究会と資源自律経済戦略企画室を立ち上げた。

2023年2月、経済産業省は「資源自律経済戦略」骨子案を公開。3月27日に7回目となる同デザイン研究会が西村康稔経済産業相出席のもと開催され、同案が発表された。4章から成る同案の概要は、以下のとおり。

1章 リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの非連続なトランジション

  • 世界が直面する課題と目指すべき方向性
  • サーキュラーエコノミーの目的:デカップリングの実現とウェルビーイングの向上
  • 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた問題意識

2章 国際動向

3章 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた今後の方向性

  • サーキュラーエコノミーを通じた「新しい成長」
  • 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた政策対応のフレームワーク

4章 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた総合パッケージ

  • 成長志向型の資源自律経済の確立のトランスミッション:3つのギア

最終章では、日本におけるサーキュラーエコノミーの市場化を加速し、国際競争力を獲得するべく、3つのギアを示した。

ギアⅠの競争環境整備(規制・規則)では、4R(Reduce、Reuse、Recycle、Renewable)政策の深掘りとして業界ごとのライフサイクルアプローチを提示。二次市場の製品安全強化や、クリティカルミネラルの確保など海外との連携強化も挙げた。ギアⅡのサーキュラーエコノミーツールキット(政策支援)では、サーキュラーエコノミー投資支援、DX化支援、標準化支援、スタートアップ・ベンチャー支援を提示した。ギアⅢのサーキュラーエコノミーパートナーシップ(産官学連携)では、産(野心的な自主的目標の設定と取り組み・進捗管理)、官(競争環境整備と目標の野心度に応じたサーキュラーエコノミーツールキットの傾斜的配分)、協調領域の課題解決、国民運動・教育・経営方針などサーキュラーエコノミーのブランディングを挙げている。

経済産業省は、循環経済ビジョン2020の方向性に加え、世界情勢による物資・資源の供給リスクを抑制して、持続的かつ着実な成長につなげる成長志向型の資源自律経済を確立するべく同案を作成した。同案は、日本の今後のサーキュラーエコノミーの取り組みの方向性を提示する。

世界では、廃棄物問題や気候変動問題などの環境制約に加え、世界的な資源需要と地政学的なリスクの高まりといった資源制約の観点から、サーキュラーエコノミー移行が喫緊の課題となっていると経済産業省はみている。

EUは2015年に「サーキュラーエコノミーパッケージ」を打ち出し、サーキュラーエコノミーを産業政策として位置付けている。欧州委員会は先日、サプライチェーンリスクを軽減し、経済のレジリエンスを高め、欧州グリーンディールとデジタル化目標を達成することを目指し、重要原材料法案を採択した。

日米政府は3月28日、「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」に署名し、同協定が発効した。日米、および同志国との連携によるレジリエントなサプライチェーン構築を目指す。

成長志向型の資源自律経済戦略案は法的拘束力は持たないものの、政府によるこうした指針の提示により、日本の組織が信頼できるパートナーと協働し、サーキュラーエコノミー移行が加速していくことが期待される。

【参照サイト】成長志向型の資源自律経済戦略 (案)
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